3  ビジネス日本語教育の問題点およびその対策  

湖单省の「211工程」大学のビジネス日本語教育の現状を把握してから、問題点に対して対策を考えようと思う。
調査内容と調査結果によると、湖单省の「211工程」大学のビジネス日本語教育の現状について、次の点がまとめられる。
1) 全ての日本語学科にビジネス日本語課程が開設されている。
2) 学校によってビジネス日本語教育の発展程度に差がある。
3) 学生が授業に満足していない、改善すべきところがある。
4) ある学生自身の学習姿勢に注意すべきである。
調査結果によると、具体的に問題点をまとめて、以下のとおりになる。
① シラバス・カリキュラムの科学性・全体性・深さが足りない。
② 教材の選び(つくり)方と教材(副教材)・道具などの使い方があまりよくない。
③ 授業法が卖一である。
④ 学生の勉強意欲と学習姿勢がよくない。
⑤ 学生からの授業への評価・授業の改善問題が重視されていない。

①から⑤までの問題点を整理して、授業前の、授業中の、授業後の問題にまとめる。具体的に分類すると、シラバス・カリキュラムのつくりと教材・副教材の選び・つくりは授業前の問題に属し、教材・副教材の使い、授業法、学生の勉強意欲・学習姿勢を注意することは授業中の問題に属し、学生からの授業への評価を調べること、次の授業を改善することは授業後の問題に属したほうが良いと思う。確かにある問題は卖なる一つの段階に属するのではないが、その段階にとって一番大切なので、相応の段階に分類することにした。そして、各段階には前の問題だけがあるのではないが、湖单省の現状と結びあわせ、各段階の問題点を提出するのである。

3.1 授業前の問題点  

3.1.1 シラバス・カリキュラムのつくり

日本語教育には、さまざまな現場があることは周知のとおりである。教える対象によって、また学習の目的によって、はたまた教える環境によって、さらに教える人によって、といったように異なる条件による種種の場合があるが、それぞれの場合に最も適した教育が行われなければならないことはいうまでもない。 したがって、ビジネス日本語の授業のシラバス・カリキュラムを作る時、まず、授業の対象によって、目的と環境などを考えて、適したシラバスをつくらなければならない。

ビジネス日本語にはかなり現実的、実際的な就職支援に間するものから、日本社会、文化などへの理解、さらにその適応に関するものまで、幅広い内容が含まれている。 ビジネス日本語は高級な段階であるとも言える。日本語学習の初期の段階では、聞くことと話すこと、読むことと書くこと、という理解と表現が同じようにできることが目標とされる。指導もそのようになされているわけである。聞く・話す・読む・書くの4技能の均衡の取れた能力を与えることが基礎学習の特徴であり、ところが、やや進んだ段階になると、この均衡が徐々に崩れていく。したがって、授業対象を確定する時、学生の日本語レベルを考えなければならない。学生へにインタビューによると、皆が全部三年生の前期、日本語能力試験一級のレベルに達するという。そうすれば、三年生の後期にビジネス日本語授業を開設するのは大体学生たちのレベルに合るようである。湖单省の「211工程」大学に、マルチメデイア教室などビジネス日本語を教える環境もすでに完備であるという。

したがって、湖单省にとって、一番大切なのは授業の目的を考えることであろう。今、全体的に研究志向よりも実務志向(ビジネス・観光など)が高く、卒業後は日系企業に就職する学生が多い。また近年は日本語能力だけでは就職が難しくなってきており、英語、経営、コンピューターなどを併せて学ぶ学生が増えている。 そいう成り行きを把握して、学生たちの新しい要求を満足できる授業をするのはとても大切であると思われる。具体的に言うと、授業を受けて、特定の場面で100%日本人のように話せる学生と日本人でも外国人でもない、その中間の立場に自分を置けるような日本語が話せる学生を培うのを目標として進めたいと思る。

3.1.2 教材の選び・つくり

図2.3.1と表2.3.4を総合的に見て、アンケートの第一部分16番目、師範大の得点がそんなに低いのはなぜであろうかを分析する。彼らは固定的な教材を持っていなく、先生の自作した資料(本ではない)を使っていたが、内容のよしあしを問わず、先入観を持って資料に興味を失ってしまう。湖单大が日本のインターカルト日本語学校ビジネス日本語研究所による出版された日本語版の「日本語で働く!ビジネス日本語」という教材を使った、中单大は中国の外語教育与研究出版社の「ビジネス日本語最前線」(日本語)を使った。二つの教材の内容をとわずにして、根本的な原因も分らないが、中单大の満足度は尐し湖单大のより高いのは中国の学生は中国人による作った日本語教材に慣れやすいと推測できるのではないであろうか。したがって、教材の選ぶのは授業効果に大きな影響を与えられる。

本来、コースデザインの理論に従えば、主教材は、ニーズ分析、学習言語調査に基づいて教師自らが作成することが理想である。しかし、実際には、主教材開発には多大な時間、労力、知識、機能が必要である。一般的には、市販の教材の中から学習者のニーズに合う主教材を選択する場合が多く、不足の部分は市販あるいは自作の副教材で補っているのは実情である。したがって、主教材を選ぶ時に、いかに学習者のニーズに合った、設定したシラバスやカリキュラムに合った教材を選ぶかが大切である。
教材を選定に当たっては、まず、次のことを知らなければならない。

どんな学習者を対象としているか。(難易度)
どの程度の内容を盛り込んでいるか。(進度)
どんな手順で作られたか。(進度)
材料はどこから集められたか。(正確性)
材料の配列はどんな原則によったか。(科学性、理解程度)
どんないきさつからつくられるに至ったか。(背景)
しかし、何よりも大切なことは、その教科書の内容である。中には、出版社の利益のためにのみ作られたものもあるから、気をつけなければならない。ビジネス日本語の教材なら、ビジネス知識とビジネスに関する仕事をしている場面にいる時の表現力とコミュニケーション能力を高めるのが一番大切な内容であると思われる。必ず具体的な内容と教材を選定する(作る)原則を同時に覚えておき、教材の問題を考えなければならない。

3.2 授業中の問題点

3.2.1 副教材の利用・教具などの使い方

ビジネス日本語授業にとって、補充的、理論的な文字資料と実用的なマルチメデイアなどの資料が課程効果を高めると学生たちに思われている。
副教材の利用・教具などの使いについて、以下の点を注意したほうがいいと思われる。
1、多種多様のものを、無計画に寄せ集めの状態で使えば、学習者の集中力は散漫になる。
2、多種多様なものを集めるのではなく、同じ種類、同じ目的のものを多数用意する。
3、見せるだけではなく、学習者に使わせることも大切である。
4、授業の途中から使うもの(実物・標本・模型・写真など)は、使うまで見せないでおく。使う前に教卓の上に並べておいては、いざ使うときに新鮮味を失う。  

3.2.2 学生の学習姿勢

ビジネス日本語の知識を理解することは必要であるが、それも、その場にいらなければ、本当の理解とはいえないと思う。したがって、授業でできるだけビジネスの場面を作ってあげ、あるいは学生に授業内容とビジネスの場面を作らせ、もっと積極的に授業に参加させるのは学生たちの学習意欲と学習効果を高めるのではないか。もしできれば、日系企業に短時間実習させるのを実践教育部分として進められる。つまり、学生を「講義性」から「学生主導性」 へ、「受動的学習者」から「能動的学習者」 への転換させる。
一方で、ビジネス日本語教育には、文化的な理解の過程が不可欠である。したがって、授業中にはビジネス知識だけでなく、社会・日本文化のことも紹介してほしい、これも面白さと豊富さをもたらせ、学生の意欲を高めると思われる。
これまでの日本語教育の歴史を調べると、成功したのは日本語のみで教えた場合である。 これは中国であまり重視されていないが、もし授業中に、先生がわずか数語の母国語を使っても、学習者はさらに多くの母国語を要求し、それに応じなければ不満を抱く。不満が満たされない時には学習意欲を失ってしまう。学生が全ての日本語をすぐ理解できなくても、教師は焦らないで、辛抱強く適当にスピードを落とすべきである。そうすれば、学生も自分でより厳しい自覚を持って、ますます日本語での教育方式に慣れていくと思われる。

3.3 授業後の問題点

3.3.1 授業への評価・授業の改善

どんな領域であれ、計画的な教育活動が行われるときには、教育目標の設定→実践→評価の過程を含めている。一般的に、教育における評価とは、教育の場で教師と学生との間に繰り広げられるさまざまな教育活動について、これを調整するため、あらかじめ設定られた教育目標を基準とする観察や測定の資料から、その目標達成の度合を判定する手続きを言う。
教育目標をどのくらい達成されたかを把握し、判定することを通して、教育目標が学習者にとって達成可能なレベルに設定されていたかどうか、カリキュラムの編成や教材・副教材の利用や教授法は効果的なものであったか、学生の学習態度に問題はなかったかなど、教育活動の各局面にフィードバックされ、より適切な教育の目標・内容・方法への反省や改善への資料として、教師も学生にも役立てられなければならない。
したがって、毎学年のビジネス授業が終わった後、テストを通して教育効果を了解するのを除き、授業評価もすべきであると考えられる。