「月9=王道ラブストーリー」の公式が崩れつつある。1月期の「ミステリと言う勿れ」を皮切りに7月期には公正取引委員会を舞台にした「競争の番人」がスタートするなど、3クール続けてミステリーものが放送される。令和の月9枠は、どんな変化を見せようとしているのか?

“月9=王道爱情故事”的公式逐渐不成立。从1月档的《勿言推理》开始,到7月档以公平交易委员为舞台的《竞争的守护者》,连续三季播放了推理题材电视剧。令和的月9档,将会有怎样的变化呢?

王道系ラブストーリーの代名詞ともいえる「ドラマ月9枠」。歴代の月9ドラマを振り返ってみると、織田裕二主演「東京ラブストーリー」(1991)や石田ひかり主演「あすなろ白書」(1993)、そして木村拓哉主演「ロングバケーション」(1996)など、そのほぼすべてがラブストーリーだった。

“电视剧月9档”可以说是王道爱情故事的代名词。回顾历代月九剧,织田裕二主演的《东京爱情故事》(1991)、石田光主演的《爱情白皮书》(1993)以及木村拓哉主演的《悠长假期》(1996)等,基本都是爱情故事。

しかし、月9における王道系ラブストーリーは「突然ですが、明日結婚します」(2017)が最後。それ以降は、山下智久・新垣結衣主演「コード・ブルー」(2008-2017)シリーズや、窪田正孝主演「ラジエーションハウス」シリーズ(2019-2021)などをはじめとする医療ものが目立つほか、相葉雅紀主演「貴族探偵」(2017)やディーン・フジオカ主演「シャーロック」(2019)など推理ものも多い。

月9档的最后一部王道爱情故事是《也许很突然,明天我要结婚了》(2017)。自此之后,以山下智久·新垣结衣主演的《Code Blue》系列(2008-2017)、洼田正孝主演的《放射治疗室》系列(2019-2021)为代表的医疗题材电视剧尤为显眼,此外,像相叶雅纪主演的《贵族侦探》(2017)以及藤冈靛主演的《夏洛克》这类推理类电视剧也多次被搬上荧屏。

月9といえば王道ラブストーリー、ともいえるセオリーが通じなくなってきているのだ。令和において、月9枠はどのように変化しようとしているのだろうか。その歴史を振り返る。

月九不再等同于王道爱情故事。令和时代,月九档将会有怎样的变化呢。一起来回顾一下。

月9=王道ラブストーリーの礎

月九=王道爱情故事的开端

先に挙げた「東京ラブストーリー」や「ロングバケーション」のように、月9といえば王道ラブストーリーの印象が強いだろう。

像上文提到的《东京爱情故事》和《悠长假期》,月九剧带给观众们的印象就是王道爱情故事。

元々は、1987年に放送されていた「アナウンサーぷっつん物語」(1987)「ギョーカイ君が行く」(1987)などの、いわゆる業界ドラマから月9の歴史は始まっている。テレビ局の裏側を描いたドキュメンタリータッチのドラマシリーズは、現職のアナウンサーが本人役で出演したり、実際に放送中の他番組(「笑っていいとも!」など)とコラボレーションしたりなど、さまざまな試みをしていた。

1987年播出的《主播也疯狂》《业界者去吧》等所谓的行业剧是月九档的雏形。剧作以纪录片式的写实手法进行拍摄,讲述电视台内部的故事,现役主播在剧中本色出演,并与真实存在的其他电视节目(《笑笑也无妨》等)联动,做了很多新的尝试。

その後、1988年~1990年にかけて、青春ラブコメやトレンディドラマの波がやってくる。「君の瞳をタイホする!」(1988)「同・級・生」(1989)「キモチいい恋したい!」(1990)などが代表例だ。

随后,1988年~1990年,青春爱情喜剧以及偶像剧成为潮流前线。《爱上你的眼睛!》(1988)《同·级·生》(1989)《好想谈恋爱》(1990)都是那个年代的经典佳作。

この流れを受け、1991年に放送された「東京ラブストーリー」や「101回目のプロポーズ」などが、磐石な「月9=王道ラブストーリー」のイメージを形作った。放送から約30年経つ現在でも語り継がれる名作揃いである。「月9ドラマといえば?」と問われて思い浮かぶ定番ドラマは、1990年代を中心に放送されていたことがわかる。

受此影响,1991年首播的《东京爱情故事》以及《101次求婚》等剧,进一步证实了“月九=王道爱情故事”。30年过去了,这些电视剧依旧是观众津津乐道的佳作。当被问到“提到月九剧的话?”,大家脑海中浮现的代表作品基本都是在上个世纪90年代左右播出的。

2000年代の月9

20世纪初的月九

1990年代に形成された王道ラブストーリーの流れに、待ったをかけたドラマがある。その1つは、2001年に放送された「HERO」だろう。木村拓哉、松たか子主演のいわゆる”リーガルもの”として人気を呼びシリーズ化、後に映画にもなった名ドラマである。

90年代在大批王道爱情故事的潮流中,有一部剧正在等待突出重围。它就是2001年首播的《HERO》。由木村拓哉、松隆子主演,被称为“法律剧”,播出后因大受欢迎被策划为系列剧,后又推出同名电影。

 

「HERO」に関しては恋愛要素がゼロではなく、検事・久利生公平(木村拓哉)と担当事務官・雨宮舞子(松たか子)との関係性を描く場面もある。しかし、基本的には起こる事件に向き合い解決へと導く、リーガルものの原型を体現したドラマだ。

不过《HERO》倒不是一点恋爱元素都不涉及,剧中也适当展现了检察官·久利生公平(木村拓哉)与事务官·雨宫舞子间的感情变化。但剧作以解决案件为主线,本质上还是法律题材电视剧。

このドラマを皮切りに、2002年放送の「人にやさしく」や2003年放送の「ビギナー」など、恋愛要素を主軸に置かないホームドラマや青春群像劇が目立つようになる。

从这部剧开始,家庭剧、青春群像剧此类不以恋爱为主要元素的电视剧开始活跃,像2002年播出的《超级奶爸》和2003年的《司法研习八人组》等。

そうは言いつつ、2003年放送の「東京ラブ・シネマ」や「愛し君へ」(2004)「プロポーズ大作戦」(2007)などのラブストーリーが多く生まれたのもこの頃だ。コメディ要素が強めになったり、病気や障がいなどのテーマが絡んだり、在日外国人との関係性を描いたりなど、純粋なラブストーリーとは若干違ったものを目指す工夫も感じられる。

话虽如此,但这期间还是有大批爱情电视剧播出,如2003年的《东京爱情电影》、2004年的《让爱看得见》以及2007年的《求婚大作战》。但这些电视剧与传统纯爱剧有些差别,有的放大了喜剧要素,有的与疾病残障主题相结合,有的侧重描写与在日外国人的情感等等。

2000年代は、1990年代からの流れを受けたラブストーリー路線と、リーガルものを始めとする異ジャンル路線が入り混じった年代と言えるかもしれない。

20世纪初,月九剧大体分为两种路线,一是延承90年代的纯爱路线,一是以法律剧为首的另类题材路线。

ラブストーリーに取って代わる新たな鉄板ジャンル

新的铁定题材取代纯爱题材

さて、そんな2000年代を受けて、現在の月9はというと、医療ものや推理・ミステリーものが増えてきている。

上述是20世纪初的月九剧,时至今日,医疗、推理·悬疑电视剧正在增加。

医療ものについては「コード・ブルー」や「ラジエーションハウス」などの人気シリーズのほか、上野樹里主演「監察医 朝顔」(2019~2021)や波瑠主演「ナイト・ドクター」(2021)など、新たなブームを予感させるドラマも現れた。

医疗剧方面,除了《Code Blue》和《放射治疗室》这类人气系列外,由上野树里主演的《法医朝颜》(2019~2021)、波瑠主演的《夜间医师》(2021)等剧也预示着新潮流的涌现。

そのほか、新月9のジャンルとして確立しそうなのが推理・ミステリーものである。「貴族探偵」や「シャーロック」(2019)を始め、竹野内豊主演の「イチケイのカラス」(2021)、そしてなんと2022年は「ミステリと言う勿れ」「元彼の遺言状」に続き、7月期には公正取引委員会を舞台にした「競争の番人」がスタート。3クール連続でミステリーものが続くのだ。

除此之外,推理·悬疑也正逐步成为新月九的题材。从《贵族侦探》《夏洛克》(2019)开始,到竹野内丰主演的《1刑的乌鸦》(2021),再到2022年的《勿言推理》《前男友的遗书》,7月夏季档以公平交易委员为舞台的《竞争的守护者》也如期开播。连续3季月九都是以悬疑为题材。

ドラマにおいて恋愛要素は不可欠と言えるほど、いわば鉄板のネタでもあった。それが、医療ものやミステリーものに取って代わられようとしている。月9枠において、いったい何が起こっているのか。

恋爱要素可以说是电视剧不可或缺的一部分,也是板上钉钉的环节。但是,医疗剧和推理剧正在逐渐取代它的固有地位。月九剧究竟经历了什么?

考えられる点として「時代の変化」と「ミステリーもののヒット」の2点を挙げたい。

“时代的变化”“推理题材大热”是两大原因。

時代の変化

时代的变化

若者の恋愛離れが進んでいる。「若者の恋愛離れに関する一考察:恋人探しにみる先送り行動」(西村智 2016)を見てみると、人生における最優先事項は恋愛に限らないと考える若者たちの生態が、実によくわかる。

年轻人离恋爱越来越远了。从西村智2016年发表的论文《年轻人正逐步远离恋爱:寻找恋人的拖延行为》来看,当下年轻人不再把恋爱视为人生最重要的事。

王道のラブストーリーが世間に受けた1990年代は、男女ともに「早く結婚して家庭を築く」が普遍的なゴールとみなされる向きもあった。人生における恋愛の優先順位が高かったからこそ、時代を反映したラブストーリーが世間に受け入れられていたのかもしれない。

王道爱情故事风靡盛行的90年代,“早结婚组建家庭”是男男女女们的普遍目标。正是因为恋爱在人生中占据着最高地位,反映时代面貌的爱情故事才会被民众追捧。

そう考えると、令和の時代にラブストーリーが受けにくいのも、推して知るべしといったところか。

这样分析一看,爱情故事在令和时代不被看好就不足为奇了。

ミステリーもののヒット

推理题材大热

上記に挙げた時代の変化と合わせ、もう1点考えられるのが「ミステリーもののヒット」である。

上文说的是时代大环境的变化,还有一方面,那就是“推理题材的大热”。

月9枠とは異なるが、TBSドラマ「最愛」(2021)は記憶に新しい。岐阜県の白川郷を舞台のひとつとしたサスペンスドラマで、放送されるごとにSNS上で考察合戦が繰り広げられた。ロケ地をめぐる、いわゆる”聖地巡礼ツアー”まで企画されたほどの人気ぶりだった。

虽然不是月九档电视剧,TBS电视剧《最爱》(2021)仍令人难忘。这是一部以岐阜县白川乡为舞台之一的悬疑剧,每次播出都会在网络上引起热议。甚至以外景地为中心,策划了所谓“圣地巡礼之旅”的活动,人气十足。
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また、同じ月9としては、菅田将暉主演で同名漫画を原作とする「ミステリと言う勿れ」のヒットにも触れておきたい。主人公・久能整の冷静な洞察力と、淡々としながらも人の心を温かくする名言の数々に、同じくSNSでは好評の意見が目立った。

另一方面,作为月九剧,由菅田将晖主演改编自同名漫画的《勿言推理》也极具人气。主人公·久能整冷静的洞察力、平淡却能温暖人心的名言,同样在SNS上好评如潮。

ラブストーリーにおいて感情の機微を追うのと同等、いやそれ以上に、ドラマを見ながら謎解きをし、SNSで考察をシェアする一体感が重視される時代なのかもしれない。

也许在这个时代的年轻人更喜爱一边追剧一边解谜,然后到SNS分享见解,就如同90年代的人们喜好捕捉纯爱故事中朦胧爱意一样,甚至更为狂热。

これからの月9に寄せる期待

对今后月九剧的展望

今後も月9におけるミステリーものの流れは続くと思われる。医療もののヒット作が出れば風向きは変わってくるかもしれないが、どちらにしろ、改めて純愛ラブストーリーが受ける時代が来るのは、もう少し先になりそうだ。

预计接下来推理剧还会常驻月九档。如果出现了医疗题材爆剧,风向可能会改变,但不管怎么说,想要纯爱电视剧重现往日盛况,还需要一段时间。

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