作家であり、詩人であり、教育者でもあった宮沢賢治。明治、大正、昭和の激動の時代を生きた
彼は多くの作品を残し、38歳の若さでこの世を去りました。このサイトでは、初稿が書かれてから
80年近く経った今もいまだに多くの人に愛され、読み続けてられている童話「銀河鉄道の夜」に
スポットを当て、賢治の内面を探りながら読み解いていきます。どうぞお楽しみ下さい。

その火がだんだんうしろの方になるにつれてみんなは何とも云えずにぎやかなさまざまの楽の音(ね)や草花の匂(におい)のようなもの口笛や人々のざわざわ云う声やらを聞きました。それはもうじきちかくに町か何かがあってそこにお祭でもあるというような気がするのでした。

随着那团火焰渐渐远去,人们甚至可以听到一阵极其喧闹的交响乐曲声,闻到一股百花盛开的芳香,并夹杂着口哨声和嘈杂的讲话声。使人感到附近好像有个什么镇子,人们正在那里欢庆节日。

「ケンタウル露(つゆ)をふらせ。」いきなりいままで睡(ねむ)っていたジョバンニのとなりの男の子が向うの窓を見ながら叫んでいました。

“半人马星座,快降露水哟!”一直睡在焦班尼身旁的小男孩突然望着对面的车窗叫喊起来。

ああそこにはクリスマストリイのようにまっ青な唐檜(とうひ)かもみの木がたってその中にはたくさんのたくさんの豆電燈(まめでんとう)がまるで千の蛍(ほたる)でも集ったようについていました。「ああ、そうだ、今夜ケンタウル祭だねえ。」

只见那里有一棵像圣诞树一样翠绿的桧树,树上闪烁着无数只小灯泡,宛如成千上万只萤火虫聚集在一起,一片晶莹。“对了,今晚是半人马星座节呀!”

「ああ、ここはケンタウルの村だよ。」カムパネルラがすぐ云いました。

“这里是半人马星座村。”柯贝内拉脱口说道。

「もうじきサウザンクロスです。おりる支度(したく)をして下さい。」青年がみんなに云いました。

“南十字星站就要到了。准备下车吧。”青年人对姐弟俩说。

「僕も少し汽車へ乗ってるんだよ。」男の子が云いました。カムパネルラのとなりの女の子はそわそわ立って支度をはじめましたけれどもやっぱりジョバンニたちとわかれたくないようなようすでした。

“我还想坐一会儿。”小男孩说。柯贝内拉身旁的小女孩心神不定地站起身来准备下车,可心里似乎仍不愿与焦班尼他们分手。

「ここでおりなけぁいけないのです。」青年はきちっと口を結んで男の子を見おろしながら云いました。

“我们非在这儿下车不可。”青年人紧板着脸对小男孩说。

「厭(いや)だい。僕もう少し汽車へ乗ってから行くんだい。」ジョバンニがこらえ兼ねて云いました。

“不。我要再坐一程火车,然后再去。”

「僕たちと一緒(いっしょ)に乗って行こう。僕たちどこまでだって行ける切符(きっぷ)持ってるんだ。」

焦班尼实在看不下去,说:“跟我们走吧。我们的车票,可以到任何地方。”

「だけどあたしたちもうここで降りなきゃいけないのよ。ここ天上へ行くとこなんだから。」女の子がさびしそうに云いました。

“可我们必须在这儿下车,从这里可以上天。”女孩一脸落寞地说道。

「天上へなんか行かなくたっていいじゃないか。ぼくたちここで天上よりももっといいとこをこさえなけぁいけないって僕の先生が云ったよ。」

“干嘛非要上天呢?老师说过,我们要在这里创造出比天上更幸福的世界。”

「だっておっ母さんも行ってらっしゃるしそれに神さまが仰(お)っしゃるんだわ。」

“可我妈妈已经去了。这一切都是上帝的旨意。”

「そんな神さまうその神さまだい。」

“你信奉的上帝是假上帝。”

「あなたの神さまうその神さまよ。」

“你的上帝才是假上帝呢!”

「そうじゃないよ。」

“不是。”

「あなたの神さまってどんな神さまですか。」青年は笑いながら云いました。

“那么你的上帝是什么样呢?”青年人笑着问道。

「ぼくほんとうはよく知りません、けれどもそんなんでなしにほんとうのたった一人の神さまです。」

“我也不太清楚。不过真正的上帝应该只有一个。”

「ほんとうの神さまはもちろんたった一人です。」

“真正的上帝当然只有一个。”

「ああ、そんなんでなしにたったひとりのほんとうのほんとうの神さまです。」

“我是说,千真万确的上帝只有一个。”

「だからそうじゃありませんか。わたくしはあなた方がいまにそのほんとうの神さまの前にわたくしたちとお会いになることを祈ります。」青年はつつましく両手を組みました。女の子もちょうどその通りにしました。みんなほんとうに別れが惜(お)しそうでその顔いろも少し青ざめて見えました。ジョバンニはあぶなく声をあげて泣き出そうとしました。

“这不就对了。我祈祷,愿上帝保佑我们,在你所说的那位真正的上帝面前,再与二位见面吧。”青年人虔诚地合掌而拜。小女孩也这样做了。大家依依不舍,脸色显得有些苍白。焦班尼几乎失声痛哭。

「さあもう支度はいいんですか。じきサウザンクロスですから。」

“准备好了吧?南十字星站就要到了。”

ああそのときでした。見えない天の川のずうっと川下に青や橙(だいだい)やもうあらゆる光でちりばめられた十字架(じゅうじか)がまるで一本の木という風に川の中から立ってかがやきその上には青じろい雲がまるい環(わ)になって後光のようにかかっているのでした。汽車の中がまるでざわざわしました。みんなあの北の十字のときのようにまっすぐに立ってお祈りをはじめました。あっちにもこっちにも子供が瓜(うり)に飛びついたときのようなよろこびの声や何とも云いようがない深いつつましいためいきの音ばかりきこえました。そしてだんだん十字架は窓の正面になりあの苹果(りんご)の肉のような青じろい環の雲もゆるやかにゆるやかに繞(めぐ)っているのが見えました。

这个时候,遥远的天河下游处出现了光彩夺目、色彩斑斓的十字架。它如同一棵大树,粲然矗立在河流之中,其周围缭绕的青云恰如圆圆的光环悬在空中。车厢里人声鼎沸。人们如同上次见到北十字星时一样,穆然肃立开始祷告。到处可以听到如孩子们扑向食品时的欢呼声和难以形容的深沉的赞叹声。十字架渐渐移行到车窗前,苹果肉般苍白的环状云朵,轻缓地缭绕着。

「ハレルヤ、ハレルヤ。」明るくたのしいみんなの声はひびきみんなはそのそらの遠くからつめたいそらの遠くからすきとおった何とも云えずさわやかなラッパの声をききました。そしてたくさんのシグナルや電燈の灯(あかり)のなかを汽車はだんだんゆるやかになりとうとう十字架のちょうどま向いに行ってすっかりとまりました。

“哈利路亚!哈利路亚!”人们欢乐、明快的呼声震人心弦。人们从天空远方——那凄凉的天空远方,听到一阵极其清脆、响亮的嗽叭声。又有许多信号灯和灯光闪过,火车渐渐减速,终于来到十字架的正前方,停止不动了。

「さあ、下りるんですよ。」青年は男の子の手をひき、姉は互いに襟や肩を直してやって、だんだん向うの出口の方へ歩き出しました。

“好了,我们该下车啦!”青年拉过小男孩的手,姐弟俩互相整理一下衣领,拍了拍对方肩上的灰尘,磨磨蹭蹭地朝车门那边走去。

「じゃさよなら。」女の子がふりかえって二人に云いました。

“再见啦!”小女孩回过头向两人道别。

「さよなら。」ジョバンニはまるで泣き出したいのをこらえて怒(おこ)ったようにぶっきら棒に云いました。

“再见。”焦班尼强忍泪水,生气般硬邦邦地说。
  
女の子はいかにもつらそうに眼(め)を大きくしても一度こっちをふりかえってそれからあとはもうだまって出て行ってしまいました。汽車の中はもう半分以上も空いてしまい俄(にわ)かにがらんとしてさびしくなり風がいっぱいに吹(ふ)き込(こ)みました。
  
小女孩十分难过地睁大眼睛,再次回头一望,然后无言地径直走出了车门。车厢里的乘客下了一大半,空荡荡的车厢显得格外凄清,外面寒风呼啸。

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