「おもしろい話が転がり込んできましたね」ふたりを乗せたエレベーターのドアが閉まり、階数を表示するランプが下りはじめるのを見届けた諸田は、興奮した口調でいった。「さすが平山社長、大胆不敵とでもいいますか」

“真是天上掉馅饼呢。”当载着两位客户的电梯门关上,诸田看着显示楼层的指示灯开始下降时兴奋地说道,“不愧是平山社长,该说他是大胆无畏还是什么好呢?”

「しかし、買収事案としてはかなり難しいだろう」半沢は慎重にいった。東京セントラル証券は、東京中央銀行の証券子会社で資本のスジはいいが、いかんせん業歴は浅く企業買収の実績があまりない。大型案件ともなればなおさらで、アドバイザーとして高額の手数料を徴収できるほどのノウハウがあるかといえば、正直、心許なかった。

“不过,收购本身会非常困难吧。”半泽审慎地说,东京中央证券是东京中央银行的证券子公司,资本情况倒是良好,无奈公司履历尚浅,并无多少企业收购方面的成绩。尤其是涉及大型收购,作为顾问机构去收取高额手续费,要问其是否有胜任的能力?说实话,令人担心。

「これはやるべきですよ、部長」諸田は力強くいった。「やらなきゃいけない。そう思います」

“部长,这个项目该接。”诸田强力说道,“我觉得我们必须接。”

このアドバイザー業務が巨額の収益をもたらすからだ。ここのところ業績が低迷している会社にとっては、願ってもないビッグビジネスである。

本项顾问业务能带来巨额收益,对于最近业绩低迷的公司来说,正是求之不得的大买卖。

「東京スパイラルがおいそれと買収に応じると思うか」半沢はきいた。「おそらく、敵対的買収になるぞ。ノウハウはあるか」

“你觉得东京SPIRAL会随随便便就回应收购吗?”半泽问,“这可能会成为敌意收购,你有经验吗?”

「なんとかなりますよ、そんなものは」諸田はいったが、その発言に根拠があるとは思えない。いままで扱ってきた大口の案件は全て親会社の銀行から回されたものばかりだ。恵まれているが故に市場の厳しさを知らない銀行の証券子会社にとって、敵対的買収のアドバイザー業務はいかにも荷が重いのではないか。諸田は楽観し過ぎている。

“车到山前必有路。”诸田说,不过看不出他的话里有任何依据。此前接手的大项目全是从母公司银行转过来的,对于先天优势充足而不知市场残酷的银行证券子公司来说,实在难以担负收购敌对企业的顾问重任。诸田乐观过头了。

企業買収、M&Aといった言葉が徐々に浸透してきてはいるものの、まだ身近に感じるほどにはなっていない。そんな時代に、企業規模の違いこそあれ、ライバル企業を買収して傘下に収めようという平山の戦略は、まさに誰もがあっと驚く奇襲であるだけに、失敗する可能性も高い。

企业收购、M&A……这些词汇尽管在渐渐普及,但仍未达到能切身体会的地步。在这一环境中,平山不顾企业规模差距,试图收购敌对企业置之旗下的战略不仅让听者吃惊,失败的可能性也高。

「そんなにうまくいきますかね」森山が、疑問を口にした。「東京スパイラルの社員にしてみれば、いままでライバルだと思っていた相手に征服されるようなものだし。必死で抵抗してきますよ、彼ら」

“事情会这么顺利吗?”森山发出了疑问,“对东京SPIRAL的员工来说,这就跟被一直的对手征服一样,他们肯定会拼死抵制的。”

「だからなんなんだ」諸田はふいに不機嫌な目になって、森山を見た。「電脳はお前の担当だろう。収益を上げようと思わないのか。ぼうっとしてたって、食い扶持を稼げるわけじゃないんだぞ。今月の目標、まったくいってないだろう」

“那又怎么样?”诸田突然变了脸色,看着森山,“你是电脑的负责人吧,你不想提高收益吗?你以为坐着不动就能赚钱吗?这个月的目标完全没谱嘛!”