3.よく間違えた使い方

第二部分では、授受動詞にかかわる日本人の二種類の心理意識を詳しく分析した。「内外意識」はより理解しやすいが、「恩恵意識」はちょっと把握しがたい。その心理意識を把握しないと、誤解を招く恐れもある。下の例文を見てみよう。

(26)先生、お荷物、私が持って差し上げましょうか。

例文(26)では「~差し上げる」という敬意が非常に高い授受動詞を使って、先生に対する好意を表したい。しかし、先生に恩を施す意味になってしまって、失礼な言い方になるのである。もっといい言い方は「先生、お荷物、私がお持ちしましょうか。」なのである。例文(26)と同じ原理で、「助けてあげましょう」と言ったら、他人の気持ちを悪くさせることになる。

それから、中国語に訳して「给•帮」の字がない文に更に注意する必要がある。例えば:

(27)a.先生は私の意見がとても面白いと言ってくれました。

b.先生は私の意見がとても面白いと言いました。

例文(27a)と例文(27b)は中国語に訳したら、意味がまったく同じである。つまり、「老师说我的意见很有意思」である。それなら、二つの文の区別は何であろう。例文(27a)は「先生にそういうふうに言われて、うれしい」という気持ちが伝えられる。例文(27b)はただ客観的な記述である。先生に対する感激な気持ちが表せない。文法から言えば二つの文も正しいが、例文(27b)のほうが日本語らしい日本語であり、日本人の考え方にももっと相応しい。