「命をかけて世のため人のため……」。警視庁警察博物館の3階。鎮魂の言葉に続き、殉職警察官の古びた制服が並ぶ。包丁で血に染まり、魔法瓶爆弾が袖を奪った。添えられた警察手帳の写真は、どれも実直なまなざしで正面を見据えていた。

警视厅警察博物馆3楼。“牺牲生命,为了社会,为了人民……”。慰祭英灵的一段话,随后摆放着殉职警官发旧的制服。菜刀逞凶,制服上浸透了鲜血,保温瓶炸弹夺去了衣袖。添附的警察证上的照片,他们都是目光坚毅耿直地注视着前方。

愛知県長久手町の立てこもり事件で、県警機動隊の特殊部隊(SAT)に所属する林一歩(かずほ)さんが殉職した。暗闇を裂いて、近隣へと放たれた凶弾を止めたのは、防弾衣ではなく23歳の体だった。

在爱知县长久手町的扣押人质据守抵抗事件中,隶属县警机动部队的特种部队(SAT)警官林一步殉职。挡住撕裂黑夜,射向近邻的罪恶子弹的不是防弹衣,而是23岁的年轻身体。

最初に撃たれた警察官の救出時、林さんは10メートルほど離れた路上で支援中だったという。防弾衣をつけ、仲間が盾をかざしていたが、弾丸は肩口から左胸に飛び込んだ。最前線の厳しさを思う。

据说第一个中枪警官被救出时,林警官正在相距10米的路上支援。虽然穿着防弹衣,同事举着盾牌挡着,子弹还是从肩头射入左胸。令人意识到工作在最前线警察的危险境地。

愛称「いっぽ君」は警察官になって5年。結婚し、生後10カ月の長女がいる。「小さな一歩」を見ないままの最期ではなかったか。上司は「物静かで落ち着きがあり、身体能力が非常に高かった」という。同期124人のトップで警察学校を卒業していた。

爱称“一步君”,当警察已5年。已婚,有个10个月大的长女。他临终前也没见过“小一步”吧。上司说:“他文静、稳重,身体条件相当好”。在同期124人中以第一名成绩从警察学校毕业。

逮捕された元暴力団組員は、人質にした元妻らにからんでいたらしい。そんな「私的な発砲」が前途ある命を奪ったかと思うと、どうにも怒りが収まらない。10メートルの弾道の両端に、とんでもない身勝手と、若い使命感がある。その落差が悔しい。

好象被捕的原暴力团成员纠缠前妻一家,并把她们作为人质。一想到那样“个人的开枪行为”夺去了拥有光明前途的生命,就不禁怒不可遏。在相距10米的弹道两端,一端是毫无道理的任性,一端是年轻人的使命感。这种落差真令人心不甘。

職に殉じた警察官は、03年以降で27人。それぞれの後ろには、体を張って守ろうとした市民生活と、本人の暮らしがあった。殉職は一度に二つの命を奪う。今回は有望な機動隊員と、若い父親である。銃と、それをもてあそぶ者を改めて憎む。
 
殉职警官03年以来已有27人。在他们的身后是他们不惜生命想要保护的市民生活和自己的生活。殉职一次夺去两条生命。此次是年轻有为的机动部队队员和年轻的父亲。再次憎恨枪和耍弄枪的人。

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