温雅な句風で知られた後藤夜半(やはん)に〈跼(かが)み見るもののありつつ暖し〉がある。春先、地面に多彩な命がうごめき出す。土を割って出た草花や、這(は)い出してきた虫を、作者は身をかがめ、いつくしむように見つめている。

因温文尔雅的俳风而为世人所知的后藤夜半曾写过一首咏叹春天的俳句,“俯身一下看,所见之物映入眼,暖意随之来”。早春时节,地面上各色各样的生命开始活跃起来。就像找到了自己的亲人一般,俳人俯下身子,用慈祥的目光凝视着那破土而出的小草和爬出地面的小虫。

暖冬を引き継いだこの春、命の蠢動(しゅんどう)はいつになく気ぜわしい。春の虫の代表格モンシロチョウの初見が、松山市では平年より28日も早かったそうだ。初めて見かけるチョウを「初(はつ)蝶(ちょう)」といい、俳句の季語にもなっている。〈初蝶やいのち溢(あふ)れて落ちつかず 春一〉。

暖冬过后的今春,生物的萌动看上去似乎显得格外忙乱。据调查,年初松山市最早发现白粉蝶(春季常见昆虫)的日子,比往年的同期要早28天。一年之中最先被发现的蝴蝶,被称为“初蝶”,后来也成了俳句的季语。例如春一的俳句,“初蝶欢快飞,生命活力尽展露,不急建窝巢”。

冬が暖かかった今年、虫たちはさぞ生命力旺盛と思いきや、そうでもないことを動物学者、日高敏隆さんの随筆に教えられた。日高さんによれば、多くの虫にとって冬の寒さは必要不可欠なのだという。

一般人都会认为,未经历严酷的寒冬就迎来了春天的今年,虫子们的生命力想必会非常旺盛吧。然而,动物学家日高敏隆在他的随笔里告诉我们,这种观点是错误的。日高先生说,对大多数昆虫而言,一个寒冷的冬天反倒是必要的。

休眠する虫たちは、5度以下の低温にさらされることで、春を迎えるための変化が体内で進む。チョウの場合、寒い時期を十分に過ごせなかったサナギは、卵もあまり産めない、ひ弱な成虫になってしまうそうだ(『春の数えかた』新潮文庫)。

日高氏在其随笔《春天的数法》一文中指出“处于休眠状态下的昆虫,正因为置身于摄氏5度以下的低温环境中,身体内才得以进行着迎接春天到来的准备。就蝴蝶来说,如果蝶蛹没有经历充分寒冷的环境的考验,那么从中破茧而出的,只能是繁殖能力低下、孱弱不堪的成虫。

暖冬が続けば、多くの虫は滅びてしまうかも知れない。休眠せずに、寒さにじっと耐えているゴキブリのたぐいばかりが生き残る、と日高さんは案じている。冬は寒く、夏は暑く。季節がきちんと尽くされることが自然界には大切なのだ。

日高氏忧心忡忡地说,如果今后每年的冬天都将在温暖的环境下度过的话,那么许多昆虫恐怕会将因之而绝灭。最终能够存活下来的,就只剩下蟑螂等不需要冬眠就可以平静地抵御严寒侵蚀的虫子了。像冬冷夏热这种极有规律的季节气候,对自然界来说有着无可替代的重要性。

啓蟄(けいちつ)もすぎた日、夜半(やはん)をまねて、春の土に目を留めてみるのも興がある。〈地虫出てはや弱腰と強腰と 祐里〉。押し出しのいいやつ、恐縮しているやつ、黙々たるやつ……。うごめく中に、誰かに似た虫がいるかもしれない。

在这惊蛰刚过的日子里,也有人受了后藤夜半的感染、对观察春天的土壤的行为发生了兴趣。<地虫爬出洞,有的勇敢,有的迟疑  佑里>。其中,有威风凛凛的虫子,有惶恐怯懦的虫子,也有沉默不语的虫子……在这些蠕动着的小生命当中,是否也能依稀找寻得到人的影子呢?

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