男と女がいるかぎり、恋があり、失恋がある。何とかあきらめをつけるものがあれば、おさまらないものもある。そして恋があるかぎり、恋敵や三角関係もなくならない。切なくも、やっかいなものだ。

只要有男女,就有恋爱与失恋。有人死心,也有人无法忘记。而且只要有恋爱,就少不了情敌和三角关系。恋爱的痛苦真是很麻烦。

米国で、宇宙飛行士の女性が、恋敵と思いこんだ相手を誘拐しようとしたなどの容疑で逮捕され、第1級殺人未遂罪などで起訴された。昨年スペースシャトルで宇宙を飛んだ有名人だったこともあって、日本にまでニュースが届いた。

美国一位女宇航员因绑架其认为是情敌的女性嫌疑被捕,并被起诉为一级谋杀未遂罪。她去年乘坐航天飞机在太空飞行,是个名人,因此连日本也报道了这件事。

恋敵になりそうな友を出し抜いて女性と結ばれた男の、自責の苦悩を描いた夏目漱石の「こゝろ」に、嫉妬(しっと)についての一節がある。「傍(はた)のものから見ると、殆(ほとん)ど取るに足りない瑣事(さじ)に、此(この)感情が屹度(きつと)首を持ち上げたがるのでしたから……かういふ嫉妬は愛の半面ぢやないでせうか」

夏目漱石的小说《心》,描写一位男人利用情敌朋友的疏忽抢先与他们倾心的女孩结婚,并因此愧疚、烦恼。书中描写嫉妒的一段是这样写的:“因为对于旁人看来微不足道的琐事,这种感情一定会冒出头来……。这种嫉妒就是爱的另一半吧”。

愛情と裏腹にあるともみえるこの感情を制御するのは、なかなかむずかしい。シェークスピアに、有名なせりふがある。ベネチアの貴族オセローに、彼の旗手イアーゴーが吹き込む。「閣下、嫉妬に御用心なさいまし。嫉妬は緑色の目をした怪物で、人の心を餌食(えじき)にしてもてあそびます」(『オセロウ』岩波文庫・菅泰男訳)。

要控制这种被认为与爱情相背的感情非常困难。莎士比亚有一句有名的台词。威尼斯贵族奥赛罗的旗官伊阿古对奥赛罗说的:“阁下,您要当心嫉妒。它是长着绿眼睛的怪物,以吃人心为乐”(《奥赛罗》岩波文库·菅泰男译)。

嫉妬心をあおられて妻の不貞を疑ったオセローは、ついには無実の妻デズデモーナを絞め殺し、自分も死ぬ。米国の事件が未遂に終わったのは、不幸中の幸いだった。

受嫉妒心驱使而怀疑妻子不贞的奥赛罗最后杀死了无辜的妻子苔丝狄蒙娜,自己也自杀身亡。美国的这个事件最后未遂真是不幸中的万幸。

被告は、所在の確認のため全地球測位システム(GPS)受信機の装着を命じられた。目には見えない電波のヒモを付けられて、緑の目の怪物はおとなしくなっただろうか。

被告为确定其情人所在方位,曾命其装上全球定位系统(GPS)接收装置。绿眼怪物被看不见的电波绳索捆住,就会变老实吗?


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