白く、そしてあかく咲き始めた梅の向こうに、青空が広がっている。一筋の飛行機雲が流れてゆく。東京都心での開花は平年より早い。寒気の中で、いつもながらの凜(りん)としたたたずまいを見せている。

初绽的梅花红白相间,与一望无际的蓝天相映成趣。飞机飞过,留下一道白色轨迹,伸向远方。今年东京都中心梅花开放的时间比往年早。在寒风中它向世人展现其一如既往的凛然风姿。

飛行機雲  ひこうぐも     飛行機が高い空を飛んだあとに、長く尾を引いて現われる白い雲。
佇まい    たたずまい    立っているようす。また,そのものからかもし出されている雰囲気。「城下町の落ち着いた―」「庭の―」

作家の藤沢周平さんが亡くなって、今日で10年になる。出身地の山形県鶴岡市では先日、「寒梅忌」が開かれた。没したこの時季と、端正で香り高い梅の花に、人柄や作風を重ねての命名という。

作家藤泽周平去世到今天已有10年。前几天,他的出生地山形县鹤冈市举办了“寒梅忌”来纪念他。据说名称由来一是根据先生去世时正值寒梅绽放,还有就是用正气凛然、香气宜人的梅花来形容先生的人品和作风。

清楚(せいそ)な梅の姿には、人を昔の時代にいざなうような風情がある。時代小説に大きな足跡を残した作家をしのぶにふさわしい名前と言えるだろう。

清白的梅花的风姿中带有一种将人们吸引到过往年代的风情。可以说这个名称很适合于纪念在时代小说领域留下深深足迹的作家。

誘う  いざ-な・う  〔感動詞「いざ」の動詞化〕さそう。さそい連れて行く。「夢の国へ―・う」

多くの読者を江戸の時代へといざない続けた藤沢さんは時々、なぜ時代小説を書くのかと問われたという。「時代小説の可能性」の中では、こう述べている。「時代や状況を超えて、人間が人間であるかぎり不変なものが存在する。この不変なものを、時代小説で慣用的にいう人情という言葉で呼んでもいい」(『藤沢周平全集』文芸春秋)。

据说吸引众多读者回到江户时代的藤泽先生经常被人问及为什么要写时代小说呢?他在《时代小说的可能性》一文中这样写道:“超越时代与现实的、属于人的本性的永恒不变的东西是存在的。这种永恒不变的东西可以用时代小说中惯用的‘人情’一词来解释。”。

不変なもの・人情を見つめ、それを澄明な文章世界の中に描いた。「たそがれ清兵衛」をはじめ、主人公の多くは、時代の主流ではなく傍流の人々だった。それが様々な困難に直面し、悩み、そしてついに足を踏み出す。その姿は時を超えて、人生の哀歓と響き合う。

关注永恒不变的东西——人情,把它描写到清晰可见的文章世界中。从《黄昏清兵卫》开始,他的作品中的大多数主人公不是时代的主流,而是非主流的小人物们。他们面对各种各样的困难,烦恼,最后勇敢地走向新生活。这样的人物超越了时间,与人生的悲欢离合交织在一起。


藤沢さんは死の3年前、東京都文化賞を受賞した。「40年も東京に住んでいながら、顔はまだ山形に向いていて」と、あいさつしている。傍流への思いと傾きは、東京という現代の「主流」に対しても貫かれていたのかも知れない。

藤泽先生去世前3年,被授予了东京都文化奖。在获奖感言中他说,“尽管我在东京居住了40多年,但我的脸仍然朝向山形县。”。也许是对非主流的关心和偏爱已经渗透到他的骨髓里了,即便是对于东京这一现代的“主流”,也会流露出来。