作家であり、詩人であり、教育者でもあった宮沢賢治。明治、大正、昭和の激動の時代を生きた
彼は多くの作品を残し、38歳の若さでこの世を去りました。このサイトでは、初稿が書かれてから
80年近く経った今もいまだに多くの人に愛され、読み続けてられている童話「銀河鉄道の夜」に
スポットを当て、賢治の内面を探りながら読み解いていきます。どうぞお楽しみ下さい。

 

どんどんどんどん汽車は降りて行きました。崖のはじに鉄道がかかるときは川が明るく下にのぞけたのです。ジョバンニはだんだんこころもちが明るくなって来ました。汽車が小さな小屋の前を通ってその前にしょんぼりひとりの子供が立ってこっちを見ているときなどは思わずほうと叫びました。

列车轰隆隆地开了下去。开上悬崖边的铁路时可以看到下面清澈的河流。焦班尼的心情渐渐变得明朗。列车经过一间小房子时,孤零零站在房前的一个孩子看着这边禁不住叫了一声。

どんどんどんどん汽車は走って行きました。室中(へやじゅう)のひとたちは半分うしろの方へ倒れるようになりながら腰掛(こしかけ)にしっかりしがみついていました。ジョバンニは思わずカムパネルラとわらいました。もうそして天の川は汽車のすぐ横手をいままでよほど激(はげ)しく流れて来たらしくときどきちらちら光ってながれているのでした。うすあかい河原(かわら)なでしこの花があちこち咲いていました。汽車はようやく落ち着いたようにゆっくりと走っていました。

列车勇往直前。车厢里的人们,几乎全部向后倾倒,一个个紧紧抓住车座。焦班尼忍不住与柯贝内拉一起笑了起来。银河犹如就在车旁汹涌地奔流,不时有道道光波闪耀。河滩上红瞿麦山花遍野盛开。列车终于平稳下来,速度也缓慢下来。

向うとこっちの岸に星のかたちとつるはしを書いた旗がたっていました。

对面与岸边,插着画有五角星和鹤嘴镐的旗帜。

「あれ何の旗だろうね。」ジョバンニがやっとものを云いました。

“那是什么旗?”焦班尼终于说话了。

「さあ、わからないねえ、地図にもないんだもの。鉄の舟がおいてあるねえ。」

“我也不知道。地图上没有标明。还有铁船呢。”

「ああ。」

“啊!”

「橋を架(か)けるとこじゃないんでしょうか。」女の子が云いました。

“大概是在修桥吧。”小女孩插嘴。

「あああれ工兵の旗だねえ。架橋(かきょう)演習をしてるんだ。けれど兵隊のかたちが見えないねえ。」

“啊,我知道了。那是工兵的旗帜,是在搞架桥演习。可是怎么不见部队呀?”

その時向う岸ちかくの少し下流の方で見えない天の川の水がぎらっと光って柱のように高くはねあがりどぉと烈(はげ)しい音がしました。

这时,河对岸下游处,那片遥远的银河水猛然一闪,水柱高涨,随即传来“轰”地一声巨响。

「発破(はっぱ)だよ、発破だよ。」カムパネルラはこおどりしました。

“啊,是爆破。爆破啦!”柯贝内拉跳了起来。

その柱のようになった水は見えなくなり大きな鮭(さけ)や鱒(ます)がきらっきらっと白く腹を光らせて空中に抛(ほう)り出されて円い輪を描いてまた水に落ちました。ジョバンニはもうはねあがりたいくらい気持が軽くなって云いました。

待那高高腾起的水柱下落后,巨大的鲑鱼和鳟鱼忽闪忽闪地翻着白肚被抛向空中,划了一个圆圈后又落入水里。看到这情景,焦班尼也激动得快要跳起来。

「空の工兵大隊だ。どうだ、鱒やなんかがまるでこんなになってはねあげられたねえ。僕こんな愉快な旅はしたことない。いいねえ。」

“是天上的工兵大队!怎么样,鳟鱼竟被抛起这么高。我还是第一次品味这么愉快的旅行,真是妙极啦!”

「あの鱒なら近くで見たらこれくらいあるねえ、たくさんさかな居るんだな、この水の中に。」

“那些鳟鱼如果在近处看,一定很大很大吧。没想到这儿的水里有这么多鱼呢!”

「小さなお魚もいるんでしょうか。」女の子が談(はなし)につり込(こ)まれて云いました。

‘也有小鱼吧?“小女孩也凑过来插嘴。

「居るんでしょう。大きなのが居るんだから小さいのもいるんでしょう。けれど遠くだからいま小さいの見えなかったねえ。」ジョバンニはもうすっかり機嫌(きげん)が直って面白(おもしろ)そうにわらって女の子に答えました。

“会有的。有大的,就会有小的。但离这儿太远,所以看不见小鱼儿。”焦班尼情绪已完全好转,他兴致勃勃地笑着回答小女孩的问话

「あれきっと双子(ふたご)のお星さまのお宮だよ。」男の子がいきなり窓の外をさして叫(さけ)びました。

“那准是双子星公子的宫殿。”男孩突然指着窗外大声喊。

右手の低い丘(おか)の上に小さな水晶(すいしょう)ででもこさえたような二つのお宮がならんで立っていました。

右前方低矮的小山上方,两座如水晶块垒造的宫殿并排耸立。

「双子のお星さまのお宮って何だい。」

“双子星公子的宫殿是怎么回事?”

「あたし前になんべんもお母さんから聴(き)いたわ。ちゃんと小さな水晶のお宮で二つならんでいるからきっとそうだわ。」

“我以前听妈妈讲过好多次,说有两座小巧玲珑的水晶宫并排耸立。肯定就是这里。”

「はなしてごらん。双子のお星さまが何したっての。」

“说呀,双子星公子怎么了?”

「ぼくも知ってらい。双子のお星さまが野原へ遊びにでてからすと喧嘩(けんか)したんだろう。」

“我也知道。双子星公子来到田野玩耍,跟乌鸦吵起嘴来,对吧?姐姐。”

「そうじゃないわよ。あのね、天の川の岸にね、おっかさんお話なすったわ、……」

“才不是呢。是妈妈在天河岸边讲的那个故事……。”

「それから彗星(ほうきぼし)がギーギーフーギーギーフーて云って来たねえ。」

“后来慧星咿呀咿呀地赶来了。”

「いやだわたあちゃんそうじゃないわよ。それはべつの方だわ。」

“你别捣乱!净瞎说,那是另一个故事。”

「するとあすこにいま笛(ふえ)を吹(ふ)いて居るんだろうか。」

“所以才在那儿吹笛子吧?”

「いま海へ行ってらあ。」

“已经下海了。”

「いけないわよ。もう海からあがっていらっしゃったのよ。」

“不对不对。他们已经从海里上岸了。”

「そうそう。ぼく知ってらあ、ぼくおはなししよう。」

“对对,我想起来了,我来讲。”  

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