关键词:日光(にっこう) 寂光寺(じゃっこうじ) 覚源上人(かくげんしょうにん) 山門(さんもん) 地獄門(じごくもん)
地獄巡り むかしむかし、日光の寂光寺というお寺に、覚源上人というお坊さんがいました。  ある日の事、上人は横になって休んだままの姿で、死んでしまったのです。  しかし上人の体はまるで生きているように温かく、肌も普通の色です。  確かに息もしていませんし、心臓も止まっているのですが、普通の死人とは違います。 「どうすれば、いいだろう?」  人々は困ってしまい、どうしたものかと考えているうちに十七日が過ぎてしまいました。  すると突然、上人がパッチリと目を開けたのです。 「おおっ! 開いたぞ、目が開いた。生き返ったぞ!」  上人は心配そうに集まっていた人々を見回して、今の状況を理解しました。 「どうやら、わしは今まで死んでいたようだな。  みなさん、ご心配をおかけしてすまなかった。  実はわしは、たった今、めいどの旅から帰って来たところなのじゃ。  ちょうどよい、みなさんにぜひ話しを聞かせたい」  そう言って、上人は不思議な話しを始めました。 「ふと気がついたわしは、雲に乗ってまっ暗闇の中を、どこまでもどこまでも進んで行ったんじゃ。  すると炎につつまれた山門があってな、そこには鬼が立っておった。  これが有名な地獄門だと、わしは思った。