DEARS 花言葉物語 青の季節
その昔、豐臣秀吉(とよとみ ひでよし)が朝鮮に出兵した際、秀吉は一人の美しい少女を連れ帰りました。「おたき」と名づけられた少女は秀吉の死後、徳川家康(とくがわ いえやす)に引き取られたのですが、敬虔なキリシタンだったため、大島に島流しにされてしまったのです。この時、おたきには岡田せいべいという恋人がいたのですが、大島に流されてしまっては、もう会うこともできません。おたきが毎日泣き暮らしていると、大島の天候も荒れ狂いました。そんなある日のこと、田間邊に一艘の船が打ち上げられました。そして、その船に乗っていたのはおたきの恋人、おかだせいべいだったのです。「おたき、やっと会えたね。」「あ、せいべい様、(お会いしどうございました。」それから、せいべいは野生の椿の実を掻き集め、椿油を作って、獄中のおたきに送りました。「ありがとうございます。」おたきはせいべいからもらった椿油で髪を梳き、身だしなみを整えました。おたきは獄中にいましたが、それでも、二人は時折逢瀬を重ねることができ、幸せでした。しかし、しばらくすると、せいべいは駿府の国に送り帰されることになったのです。悲しみに暮れたおたきは船の見える岩場に向かい、せいべいの船を見送りました。そして、船が見えなくなると、おたきはその場で息絶えたのです。おたきの悲恋を哀れんだ島民は島中に椿を植えて、おたきの霊を慰めたのだそうです。  さて、ご案内してまいりました秋の花の物語、いかがでしたか。秋の夜長と申します。そのお供に、すこしでもなりましたら、幸いでございます。ご案内は私、秋の妖精竜胆が担当されていただきました。