英国寓言
むかしむかし、あるところに、一羽のメンドリがいました。 「ごちそうだよ。みんなおいで」  メンドリはいつも庭をつっついて、エサを見つけてはヒヨコたちに食べさせていました。  ある日、メンドリは小麦粒が落ちているのを見つけました。 「これをまくと、たくさん小麦ができるのよ。ふやしてから食べましょう」  メンドリは、大きな声で言いました。 「小麦のタネをまくの。誰か、手伝ってちょうだい」  でも、池で遊んでいたアヒルは、 「ごめんよ、わたしはいそがしいんだから」 と、ことわりました。  ブタは、眠そうに目を開けましたが、 「あー、あー、あー」  あくびをしただけで、知らぬ顔です。  ひなたぼっこのネコも、首を振って。 「いま、用があるのよ」  誰も手伝ってくれないので、メンドリは一人で小麦のタネをまきました。  やがて小麦が、たくさん実りました。  そこでメンドリは、みんなを呼びました。 「小麦を、かり取るの。誰か、手伝ってちょうだい」  するとアヒルは、 「いま、泳ぎをならっているところ」 と、言いました。  ブタは、 「ぼく、今はごちそうを食べているので、いけないの」  ネコは、 「わたし、毛皮をみがいているの。だめよ」  しかたなくメンドリは、1人でせっせと小麦をかり取り、粉屋さんに持って行きました。