日语文学作品赏析《樹木とその葉 枯野の旅》
乾きたる
落葉のなかに栗の實を
濕りたる
とりどりに
拾ふともなく拾ひもちて
今日の山路を越えて來ぬ
長かりしけふの山路
樂しかりしけふの山路
殘りたる紅葉は照りて
餌に餓うる鷹もぞ啼きし
名も寂し暮坂峠
○
朝ごとに
つまみとりて
いただきつ
ひとつづつ食ふ
くれなゐの
酸ぱき梅干
これ食へば
水にあたらず
濃き露に卷かれずといふ
朝ごとの
ひとつ梅干
ひとつ梅干
○
草鞋よ
お前もいよいよ切れるか
今日
昨日
これで三日履いて來た
出來のいいお前と
二人して越えて來た
山川のあとをしのぶに
捨てられぬおもひもぞする
なつかしきこれの草鞋よ
○
枯草に腰をおろして
取り出す參謀本部
五萬分の一の地圖
見るかぎり續く枯野に
ところどころ立てる枯木の
立枯の
路は一つ
間違へる事は無き筈
磁石さへよき方をさす
地圖をたたみ
元氣よくマツチ擦るとて
大きなる
○
頼み來し
その酒なしと
この宿の
破れたる紙幣とりいで
お頼み申す隣村まで
一走り
その酒の來る待ちがてに
いまいちど入るよ
壁もなき吹きさらしの湯に
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