無責任な経済学者や経営学者がいるのは事実です。現場の知恵のほうが役立つこともあるでしょう。とりわけ理論から機械的に出された結論は、単純なケースほど穴だらけで使えません。東大卒業後に起業を目指す人は数多くいますし、アメリカやイギリスの二大政党制は日本の状況とは異なります。理論は全体の傾向を示すだけで、個々の事例で完全な答えを導いてはくれません。

有的经济学家和经营学家没责任感,这是事实。有的时候实践中所获得的知识更有用。尤其是机械的从理论得出的结论,越是单纯的情况漏洞越多,没有作用。当然东大毕业后准备自己创业的人也很多,而且英美的两党制也跟日本的情况不同。理论只表示了整体的倾向,不会就单独的事例得出完整的答案。

しかし経済理論の知見を活かせば、100点満点のうち75点ぐらいなら安定してとれるのです。日本企業は伝統的に「コスト優位戦略」を重んじてきました。コストダウンと品質向上で成長を目指す手法です。一方、欧米企業は1990年代以降、「差別化戦略」に力を入れてきました。コスト競争の無間地獄を避けるため、絶えず新市場の形成を図る。日本の高い技術力がなかなか利益に結びつかないのは、経済学の蓄積が活かされていないからだと思えます。

可只要能灵活运用经济理论的知识,满分100分至少能保证75分左右。日本企业的传统是重视“成本优势战略”,就是说通过降低成本和提高品质来保证增长。另一方面,欧美企业在1990年之后就致力于“差异化战略”,为躲开成本竞争的无间地狱,而不断谋求开拓新市场。日本的高科技总是无法转化为利益,我认为这是由于没有活用经济学的结果。

私の本業は経済学者です。今年、「水指丈夫」という筆名で、小説『東大を出ると社長になれない』を書きました。匿名にすることで、学術的にはやや不正確でも、経済学や経営学の大枠をつかめるものを書くことができました。

我的本行是经济学家。今年我以“水指丈夫”为笔名写了小说《东大毕业当不了老板》。虽然是匿名的,即便在学术上有些错误,但还是勾勒出了经济学和经营学的大致框架。

わかりやすさと正確さは反比例することがあります。たとえば小学校の算数では「2」から「3」は「引けない」と習います。もちろん数学では誤りで、正しくは「マイナス1」。しかし「負の整数」というややこしい説明よりも、ひとまず「引けない」としたほうが理解は早い。経済学者はこれまで、このようなわかりやすい書き方を避けてきました。しかしそれでは興味をもってもらえません。

易懂性和正确性有时成反比。比如,在小学的算术学过2不能减3.,这在数学上当然是错的,正确答案是“—1”。可跟“负整数”这种麻烦的说明相比,还是先教“不能减”学生更容易理解。经济学家一直以来就回避了这种易懂的做法。可这样就无法激发人们的兴趣了。

この小説では、野放図な計画で喫茶店開業を志す主人公が、「目的は金儲けなのか、個性ある店作りなのか」と年長者にたしなめられ、経済学の基礎を学びながら事業計画をあらためていきます。目標設定を明確にし、その手順を導き出すうえで、経済学は大変有効な道具です。大学時代の授業などで苦手意識をもつ人もいるようですが、ぜひ便利な道具として使ってもらえればと思います。

本小说中,打算开咖啡馆却漫无计划的主人翁受到长辈告诫“你的目的是要赚钱呢还是开一家有个性的店呢”,于是他一边学习经济学的基础,一边重新制定事业计划。订立明确目标,然后按部就班进行,经济学是相当有效的工具。在大学的课堂上,经济学让有的人苦恼,不过还是希望大家能将其作为便利的工具来运用。

作者 :水指丈夫(Takeo Mizusashi),经济学家,东大经济系毕业,东大研究生。在某大学执教,同时担任政府智库研究员等