优秀奖

「わたしと日本」

洪斌锐(惠州学院)

日本と中国の関係は、ずっと昔から、多くの人の手によって撚り合わされてきた巨大な赤い糸のようなものだと思います。両国と関係のある人々、一人一人がその太い糸を構成する一本の細い糸で、私もその糸の一つです。

私は今年日本のホテルで三ヶ月のインターンシップに参加しました。三ヶ月間、毎日毎日下手くそな日本語で自分の考えを伝えましたが、常に気持ちが空回りし相手に届かなくてがっかりしてしまいました。上司から指導してもらう時、よく怖い顔で叱られました。会社に入ったばかりの時、何をするのか全然わからなかったので、手元の仕事が終わったら止まってしまっていました。すると、他のスタッフが「ねぇ、洪君に何かをやらせて。時間がもったいないから。給料分はちゃんと働いてもらって。」と言っているのが聞こえました。それからは、その言葉を胸に刻んで、「暇になっちゃ駄目なんだ。」と自覚しました。レストラン部門でのインターンシップでしたので、御膳立てが終わったら、拭いてないお皿を拭き、たとえ宴会場に配置された日でも、暇になったら戻ってお皿を拭く作業をしていました。そのやり方が正しいと思って二ヶ月頑張り続けました。

ある日、料理を全部出し終えたので、お皿を拭く作業に戻りました。戻る前に宴会場担当スタッフには許可をもらいました。ところが、お皿を拭き始めたばかりなのに、事務所へ呼び出されました。そこにはホテルの支配人と宴会場担当のスタッフがいて、私に、「洪君はいつも精一杯頑張ってる、感心したよ。だけど、今日君は宴会場の配置だから、全ての仕事が終わったら、戻れます。」と言いました。私は「お皿を拭きに戻ったのは、やることがなくて、手持ち無沙汰に見られたくないし、サボっているって思われたくないからです。だから、今まで、手を休めずに頑張ってきました。」と説明しましたが、「だれでもそんな風に思ってないよ、洪君がちゃんと働いているのはみんな知ってるから。待つのも仕事の一環だから、自分の役割を最後まで貫いてください!」と言われました。サボっていると思われたくない一心だった私は空き時間を利用して他の仕事までやっていたのに、何が違っていたのでしょう。階段で気持ちを整理して、やはり戻ってお皿を拭き続けました。しかし、先ほどの言葉が頭から離れなくて、二ヶ月でたまった辛さが溢れ出して、我慢できなくて涙が出てきました。ちょうど韓国人のスタッフに見られてしまい、一緒に帰ることになりました。彼は私を慰め、「日本人は曖昧だからね。基本的に他人のお願いを断りはしないよ。だから宴会場の担当者も洪君が、持ち場を離れて他の仕事をしてもいいかって聞いた時、疑問に思いながらも、断らなかったんだと思うよ。だから、空気を読めるようにならないと。相手が本当は何を望んでいるのか見抜かないと。それはここで生きるためもっとも大切な技だよ。」とアドバイスをくれました。

それからは、どうやれば空気を読めるようになるのかということを繰り返し考えました。けれども理屈がわからない私は担当者の指示に従うのが精一杯でした。担当者が何を指示しているのか、どうしてその指示を出すのか、徐々に、いつ何をすべきなのか、頭では理解できていなくても、体が覚えていきました。三週後、再び事務所へ呼ばれました。「最近うまくやっているね!」支配人がそう言いました。「私はただ指示通りにやるべきことをやっているだけなんです。」と言うと、「それでいいんだよ。充分だ。空気を読むこと、いまの君なら、もう覚えただろう。」と言われました。

空気を読むことができるようになるためには、まず、自分の仕事をきっちりと最後までやり通す、責任の果たせる人にならなければいけません。他人の表情とか言葉の裏を自分の解釈で読むことが、空気を読むことではありません。今、どんな場面で他人は自分に何を望み、自分が何をすべきなのか、俯瞰的に見ることが空気を読むということなのではないかと思います。他人の言葉は、所詮導きです。その真意を見つけることができるかどうかは自分自身にかかっています。答えは自分で考え続けなければなりません。

この三か月の経験は、今後の仕事だけでなく、日常生活にも生かすことができると思います。自分の主観で物事を判断するのではなく、相手が何を望み、自分は何ができるか、これは、きっとこれからの人生にも役立つでしょう。日本でのインターンシップは楽しいだけの経験ではありませんでした。文化の違いや言葉の壁を実感した日々でした。それでも、私は中国と日本をつなぐ一本の糸でありたいと思います。わたしの細い糸も、他の多くの糸と撚り合わせていけば、もっと太い確かな糸になるでしょう。

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