优秀奖

「会えない仲間」

郭嘉玉(黄岡師範学院)

それは、まさに盛夏にあたる夏休みのことだった。まだ小学生の私は親について北京へ旅行に行った。真っ赤な太陽の下で、頑張って少しずつ万里の長城を登っていたのだが、終点が意外に遠く、なかなか着けなかった。「もういや!」と私は母に不平をこぼしてしまった。その時、突然澄んだ話し声が私の耳に入ってきた。耳を澄ましてじっと聞いてみたが、その会話の内容はまったく意味がわからなかった。「外国人かな」と思って、声の主を探してみると、目の前に二人の若い女性が笑いながら何か話し合っていた。好奇心に駆られたわたしはこの二人のそばに近づいてこっそり観察してみた。彼女たちは顔も体つきも皮膚も中国人と同様であり、口を開かなければ絶対外国人とは思われないだろう。そう考えているうちに、一方の女性がふっとつまずいて倒れそうになった。「ごめんなさい」と、彼女は振り返って後ろにいる私に申し訳なさそうに言った。「え?何か話したみたい、どうしよう、意味がわからない、って言うか、これって日本語?もしかして謝っているのかも」。当時日本語がまったくできなかった私はいきなり話しかけられたので緊張してたまらなかった。「はい」、しばらくして私が唯一知っていた日本語が口から出てきた。すると、二人の女性はぷっと吹き出して、笑顔で私の頭をなでた。そのことがきっかけで、私たちはこの二人と一緒に上に向かって登り続け、旅を楽しんだ。

なんと不思議なことだろう。いくら言葉が通じなくても心は通じ合えるのだ。一緒に旅をすれば、お互いに見たもの、聞いたこと、体験したこと、そして感じたことを共有できるのだ。普段めったに「会えない」人を目にすると、この人はいったいどんな人なのか、私はこの人と仲良くなれるのかと、いろいろ心配や不安が出てくるものだ。ところが、いったん会って、一緒に何かをしてみると、すぐに相手のいいところや共通点を発見し、仲良くなるということは意外と多い。まして、中国人と日本人は皮膚も髪の毛も色が同じであり、同じアジアに所属し、両国文化にも共通点がある。よって、お互いに共感を覚えるのはごく自然なことだ。

やがて大学生になった私は日本語科を選んだ。そのことを周りの祖父や祖母などの年配者に話すと、疑問を持つ人がかなりいる。さらに、ある人から「日本人が嫌いだから、日本人とは友達にならない」と言われたこともある。そのたびに、私はいつでも真剣に相手に説明してあげた。例を挙げて、学校で日本語を教える日本人の先生たち、ネットで知り合った日本人の友達がいかにやさしくて親切な人かを教えてきた。私の話を聞いた後、彼らもだんだん落ち着いて日本のことをもっと理解できるようになった。例えば、テレビで日本に関するニュースが出たとき、祖父は以前とは違った新しい目で両国の協力と共栄を評価できるようになった。こうした変化を見て、私は心からうれしく思っている。日本語科の学生である私は授業などで日本人と会うチャンスがあるので他の人よりもっと日本を知っている。しかし、中国人の大部分は現実生活で日本人に会ったことはない。そのために、戦争ドラマの影響だけを受けて、日本を一方的に嫌いになってしまうのだ。

ところで、近年中国人と日本人との接触は次第に頻繁になってきた。実際、旅行や買い物などが両国経済の発展のために大きな力となっている。旅行を通じて、これまで会えなかった日本人に会えるようになった。中国のいろんなウェブサイトでも、日本人の利用者がますます増えてきた。彼らはウェブサイト上の映像で日本の流行文化を紹介し、中国の人々の興味をそそることに一役買っている。つまり、インターネットの普及によって、今のありのままの日本を見ることができるようになったのだ。こうして、中国国内の人々の日本人に対する激しい偏見は徐々に少なくなっていくだろう。

「会えない」から知らない、付き合ったことがないから信じないという不条理な理屈は、人間関係だけでなく、国際関係においても大きな問題となってきた。この問題を解決するには、相手の国へ旅行、勉強、仕事などの目的で実際に行って、現地の人と交流することが大切だと思う。一人の人間が実際に知り合うことのできる相手の数には限りがある。でも、もしみんながそうやって一人一人の手を繋いで力を合わせるなら、きっと国と国の間の架け橋となれるはずだ。私は小さいころに初めてあの二人の日本人に会った時から、もっとたくさんの日本人と交流して中国の美しさを伝えたいと思うようになった。そして、私だけでなく、他の中国人にもちゃんと自分の目で日本人を見て判断してほしいと思っている。これからも、自分なりの方法で異文化の交流のために努力していきたい。中日両国がお互いにちゃんと「会える仲間」になるすばらしい未来が、きっともうすぐ到来すると私は深く信じている。   

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