3月末まで放映していたTBSドラマ『妻、小学生になる』(TBS系)の最終回を、筆者はオンエアの時間に間に合うように急いで帰宅した。駅から走った。そんなことをしたのは実に10年以上ぶりのことである。今はHDDも全録機能だし、配信サービスで後日ゆっくり視聴することも出来る。

为了看播到3月底的TBS电视剧《妻子是小学生》大结局,笔者赶着播出时间赶快回家,从车站就开始跑,有十多年没做这样的事情了。如今硬盘有完整的录制功能,之后也能通过配信服务慢慢看。

にもかかわらず、筆者が絶滅危惧種みたいなことをしたのは一刻も早く“つましょー”を見たかったからだ。それくらい面白いドラマだった。

但我还是像老古董似得这样赶回去,就为了早点看剧,这部剧就是如此的有趣。

極めてハートフルな内容で、スピリチュアル描写も興味深かった。その最終回を「後日ゆっくり」とはいかなかった。20~30代前半の人たちには、この行為も感情も理解し難いかもしれないが、50歳の筆者にとってはこれが当たり前だった時代がある。

内容直击人心,精神描写也很有趣,这样的大结局不能“以后慢慢看”。二三十岁出头的人可能很难理解这种行为和感情,但对于50岁的笔者来说这是常态。

90年代に10代後半から20代を過ごした筆者も、人並みに女性とデートをしたものだが、月曜の夜だけは滅多に誘わなかった気がする。誘ったところで断られる確率が高かった。もちろん、週の最初で遊びに行く気分にはならなかったのもあったろうが、この時代のOLや女子大生、フリーターにとって早々と帰宅をする理由があった。“月9”(げつく)があったからだ。

90年代当时我正处于十几岁快二十岁的时期,也正常与女性约会,但周一晚上很少发出邀请,因为邀请的话也很可能被拒绝。当然也可能是因为一周的开始没有心情出去玩,但对于这个时代的白领、女大学生、兼职打工的人来说早点回家是有原因的,那就是因为“月九”。

月曜夜9時のフジテレビのドラマ、通称“月9”が見たくて帰宅を急ぐ女性が多かったのは作り話ではない。「ビデオで予約録画すればいいのに」と筆者が言うと、「一刻も早く見たい」と返された。「同僚や友達と、翌朝はドラマの話で盛り上がりたい」とも言う。中には「ビデオで録画しながら見て、録画を後で見直す」という筋金入りの女性もいた。それくらい月9は若者に支持され、必要とされてもいた。月9が当時の若者の生活を変えたのは、間違いはないのかもしれない。ではそもそも、月9とは一体何だったのだろう。

周一晚9点富士电视台的电视剧俗称“月九”,很多女性因为想看“月九”着急回家,这并不是假话。当我说“如果能预约视频录像就好了”,对方会回答“一刻都等不了,我要早点看”,也可能说“想第二天早上和同事朋友们一起聊电视剧的内容”。也有意志坚定的女性观众“看的时候录下来,之后再重看一遍视频”。月九就是如此受年轻人欢迎,成为大家不可或缺的一部分。毫无疑问,月九改变了当时年轻人的生活。那么,月九到底是什么呢?

1971年生まれの筆者にとって、月曜夜9時のフジテレビと言えば『欽ドン!』である。その後も『おまけの子』や『マイルド欽ドン』などが続くも斜陽を迎え、1987年3月末をもって終了。4月からドラマ枠が始まった。

对于1971年出生的我来说,说到周一晚9点的富士电视台,那就是《欽ドン!(小钦先生)》。随后《おまけの子》和《マイルド欽ドン(温和的小钦)》等相继没落,1987年3月末终结,4月开始形成电视剧时间段。

最初はアナウンサーの仕事とプライベートを描いた『アナウンサーぷっつん物語』(主演・神田正輝・岸本加世子・田代まさし)に始まり、ラジオの営業マンの奮闘を描いた『ラジオびんびん物語』(主演・田原俊彦・野村宏伸)、新人歌手の売り込みに躍起となるレコード会社を舞台とした『ギョーカイ君が行く!』(主演・とんねるず・浅野温子)、番組企画に奔走するテレビマンを描いた『荒野のテレビマン』(主演・東山紀之・坂口良子・植木等)などの「業界ドラマシリーズ」がラインナップされた。

从描述广播员工作和生活的《アナウンサーぷっつん物語(直播也疯狂)》(主演神田正辉、岸本加世子、田代政)开始,描绘广播之声营业员的奋斗生活的《ラジオびんびん物語(广播之声也疯狂)》(主演田原俊彦、野村宏伸)、以努力推销新人歌手的唱片公司为舞台的《ギョーカイ君が行く!》(主演TUNNELS隧道二人组、浅野温子)到描绘忙着节目企画的电视台工作人员的《荒野のテレビマン(荒野中的电视人)》(主演东山纪之、坂口良子、植木等),这些“行业电视剧系列”成为月九阵容。

さらに『ラジオびんびん物語』で好評を博した田原俊彦と野村宏伸のコンビによる『教師びんびん物語』が大当たり、月曜夜9時のドラマ路線は完全に定着した。

因《ラジオびんびん物語(广播之声也疯狂)》广受好评的田原俊彦和野村宏伸的组合又出演《教師びんびん物語(老师也疯狂)》,大获成功。自此,月九电视剧路线完全固定。

一連の「業界ドラマシリーズ」が伏線となって開花したのが「トレンディドラマ」だった。時代はバブル、トレンディドラマはその副次的な意味合いを持つものだった。トレンディドラマと言うと、86年放映のTBSドラマ『男女7人夏物語』(主演・明石家さんま・大竹しのぶ)を嚆矢と見る向きもあるが、筆者はその説は採らない。バブル真っ只中のフジテレビの体裁と色彩が背景にあって誕生したと見ているからだ。

一连串的“行业电视剧系列”埋下伏笔最终开花的是“趋势剧”。泡沫经济时代,趋势剧有着次要产物的含义。有人说趋势剧是以86年播出的TBS电视台《男女7人夏物語》(主演明石家秋刀鱼、大竹忍)为开端的,我没有采用这种说法。正因为泡沫经济中富士电视台的体裁和特色,这是此背景下才诞生的产物。

「ウチだからやれた」

“只有我们才能做”

バブル期のフジテレビと言うと、視聴率絶好調で正真正銘の絶対王者、その空気感は番組はもちろん、作り手や社員全員に浸透していた。そこから生み出されたのがトレンディドラマだったと筆者は解釈している。そのことを踏まえた上で言うなら、トレンディドラマ第一号は、月曜夜9時枠の『君の瞳をタイホする!』(主演・陣内孝則・浅野ゆう子・三上博史/1988年1月4日~3月21日)になろう。

说到泡沫经济时期的富士电视台,节目组、制作方、全体员工都萦绕着收视率真正王者的氛围,我认为由此诞生的才是趋势剧。这样概念上第一部趋势剧是周一晚9点的《君の瞳をタイホする!(逮捕你的眼)》(主演阵内孝则、浅野优子、三上博史/1988年1月4日~3月21日)。

プロデューサーは後年『東京ラブストーリー』や『101回目のプロポーズ』を手掛ける大多亮(現・フジテレビジョン常務取締役)。大多にとって記念すべき初プロデュース作品でもある。以前、筆者が担当していたJ―WAVEのラジオ番組のゲストに大多を招いたことがある。その際、彼はこの作品について、大まかに次のように述懐した。

制片人是后来制作《东京爱情故事》《101次求婚》的大多亮(如今是富士电视台常务董事)。对大多来说,这也是值得纪念的出道作品。以前我负责的J―WAVE广播节目组邀请大多当嘉宾,那时他是这样阐述他的作品的。

「今までになかった刑事ドラマをやってみたかった。刑事だって恋愛もするだろうし、遊びにも行くだろうし、社内恋愛だってあるだろうし、そんな作品にしてみたかった。そんな刑事ドラマないでしょう。よその局なら企画は通らなかったかもしれない。あの頃のウチだからやれたというのはあったと思う」

“我想做前所未有的刑警电视剧。即使是刑警也能恋爱,也能玩乐,有单位内恋情,我想做这样的作品。现在还没有这样的刑警电视剧吧。如果是其他电视台可能无法通过,那时我就想只有我们才能做出来。”

派手な銃撃戦はおろか、取り調べのシーンが少しあったくらいで、刑事モノのおなじみの場面はさほど印象に残っていない。陣内孝則演じる刑事の恋愛模様が描かれたと記憶する。さらに、こんな驚愕のエピソードも聞いた。

不仅没有华丽的枪战,调查场景也很少,刑警作品常见的场景几乎没有留下印象,只记得阵内孝则饰演的刑警的恋爱模样,而且还听说了下面这种让人惊讶的故事。

「渋谷が舞台だからクリスマスの公園通りで大掛かりなロケをやった。それも許可なくやっちゃった。大勢の人が集まったもんだから、実際の渋谷署からめちゃくちゃ怒られて、分厚い始末書を書かされた」

“因为故事发生在涉谷,在圣诞节的公园街上拍摄了大规模的外景,但没有获得许可。因为很多人聚集,所以被涉谷警察局狠批,写了很厚的悔过书。”

つまり、ストーリーも軽ければ、作り手のノリも軽かったということだ。ここからトレンディドラマが始まった意義は大きい。

也就是说,不仅故事轻松,制作方的工作方式也轻松。很大意义上,趋势剧是从此开始的。

90年代に突入してバブルが崩壊しても、意外なことにトレンディドラマは終わらなかった。それどころか、バブル期以上に大量生産されるのである。

即使90年代泡沫经济破裂,但趋势剧意外没有终结,甚至作品比泡沫经济时期还多。

『東京ラブストーリー』と『101回目のプロポーズ』という二作の人気から、もとはフジテレビ編成局内だけの「月9」という呼称が一般にも広まったとする説は信憑性がある。同時に「月9=トレンディドラマ」のイメージも定着したのは疑いようがない。バブル崩壊が顕著となり「トレンディ」なる言葉が死語となっても、月9は終わらなかった。むしろ、テレビ史に残る名作が次々と送り出された。

大概因《东京爱情故事》《101次求婚》这两部作品广受欢迎,原本只存在于富士电视台内部的“月九”称呼开始普及大众,同时“月九等于趋势剧”这种印象也固定下来。即使因泡沫经济破裂“趋势的”这样的词汇已经没人再说,但月九并未终结。倒不如说,能载入电视剧历史的名作纷纷出现。

「では、月9の中で一番夢中になったのは?」

“那么,月九中最爱的是哪部呢?”

そう訊かれたら迷わず答えよう。なぜなら、月9に限った話ではなく、今まで視聴してきた連続ドラマの中で最も夢中になったと言っても過言ではないからだ。

当被问到这个问题我能毫不犹豫地回答。毕竟不仅限于月九,可以说至今为止所有电视连续剧中最爱的就是这部剧。

『ロングバケーション』(主演・木村拓哉・山口智子・松たか子/※平均視聴率29・6%・最高視聴率は最終回の36・7%)である。

那就是《悠长假期》(主演木村拓哉、山口智子、松隆子/*平均收视率29.6%,最高收视率是大结局36.7%)。

結婚相手に逃げられた女と、劣等感丸出しのピアニストの男の奇妙な同居生活を描いたこのドラマは、大袈裟ではなく「ロンバケが見たくて早く帰宅する」OLや女子大生が頻出した。街から女性が消えたのもあながち間違っていない。24歳だった筆者がそうだったように、若い男も夢中になっていた。

这部电视剧描绘了被结婚对象逃婚的女性与自卑的钢琴家男性之间奇妙的同居生活,豪不夸张的说,很多女白领和女大学生“为了看悠长假期早点回家”。街上女性消失这件事不一定是假的,当时24岁的我这种年轻男生也沉迷其中。

そんな「ロンバケ現象」の一端として「年下男性と付き合う女性が急増中」とワイドショーは嬉しそうに報じ、あるカップルは海岸1丁目の老朽化したマンションで同棲を始め、挙句にスーパーボールを競うように買い求めた。

而“悠长假期现象”的另一面,综艺节目高兴地报道“与年下男性交往的女性急剧增加”,一对夫妇在海岸一丁目的某个老旧公寓开始同居,结果大家竞相购买。

おそらくだが、オンエアが木曜か金曜だったら、ここまでのブームにはなっていなかったように思う。「娯楽のない月曜」で「憂鬱な気分の月曜」だったからこそ、視聴者はロンバケを視聴することで、束の間の夢を見たかったのではないか。空前のロンバケブームで、月9は盤石となったのかもしれない。その後もヒット作が相次いだからだ。

如果在周四或周五播出,恐怕无法形成这种盛况。正是因为在“没有娱乐的周一”“忧郁的周一”,观众们才能通过看悠长假期抓住昙花一现的梦。这种空前的悠长假期热,也稳固了月九的地位,随后大热作品纷纷出现。

2022年も4月を迎え『元彼の遺言状』(主演・綾瀬はるか・大泉洋)なるドラマが月9にラインナップされた。「月9は健在」と言いたいところだが、はたしてどうだろう。ただ一つ言えるのは、この時間枠のドラマが世間から「月9」と呼ばれなくなった時点で、使命はもう十二分にはたしたのではないか、ということである。

2022年4月播出的《前男友的遗书》(主演绫濑遥、大泉洋)也定于月九播出。虽然我很想说“月九还在”,但到底会怎样呢?我只能说,在这个人们不再将此时间段电视剧称为“月九”的时代,这部电视剧已经充分完成了自己的使命。

本内容为沪江日语原创翻译,严禁转载。

精华阅读推荐:本季度冬季剧收视成绩太惨烈,原因究竟是什么?