ヒント:


暗に

待ち伏せ

たとい

騙し打ち

構う

お前

私語く(ささや・く)

我(われ)

おそらく

窘める

余りに

付け込む


书写方式参考:【听写规范】日语听写酷听写规范(2013年5月版)

あらすじ

鎌倉で出会った私と先生。先生は仕事をするでもなく、時々誰かの墓参りに行く以外は美しい奥さんとひっそり暮らしている。ある日、先生からの遺書が届く。先生は学生時代、自分の下宿(げしゅく)に親友のKを同居させる。まもなくKから、下宿先のお嬢さんへの恋心を打ち明けられる。恋に気をとられるKを責める一方で、Kを出し抜いてお嬢さんとの婚約を決めてしまう。それを知ったKは恨み言の一つもなく自殺。先生は妻に真実を打ち明けられずに、自分を責めながら「死んだように」生きてきたのだった。

解説

当時の社会では書生が多く、「師と仰ぐ人物を見つけて自分を高めたい」といった、向上心を軸(じく)とする風潮があった。それが前提になっているので、朗読部分の先生の言葉はKに深く刺さったに違いない。そしてもうひとつ、武士道の精神がまだ残っているこの時代、裏切りや卑怯な行いは現代と比べ物にならないくらい「恥ずべきこと」とされた。向上心がKを、裏切りが先生を死へ追い詰めた。そんな「こころ」は、人間の弱さを見つめ直すという意味でも、日本人になじみの深い作品。また、友人の名前をイニシャルの「K」で表したことは当時では斬新な手法。独特な響きがあり、読者の脳裏に深く刻まれる。これが「近藤」や「木村」だったら雰囲気がぶち壊しになってしまっただろう。

私はKと並んで足を運ばせながら、彼の口を出る次の言葉を腹の中で暗に待ち受けました。あるいは待ち伏せと言ったほうがまだ適当かもしれません。その時の私はたといKを騙し打ちにしても構わないくらいに思っていたのです。しかし私にも教育相当の良心はありますから、もし誰か私の傍へ来て、お前は卑怯だと一言私語いてくれるものがあったなら、私はその瞬間に、はっと我に立ち帰ったかもしれません。もしKがその人であったなら、私はおそらく彼の前に赤面したでしょう。ただKは私を窘めるには余りに正直でした。余りに単純でした。余りに人格が善良だったのです。目のくらんだ私は、そこに敬意を払うことを忘れて、かえってそこに付け込んだのです。そこを利用して彼を打ち倒そうとしたのです。

林少华 译
我一边和K并肩行走,一边暗暗等待——也许说伏击更为恰当——他下一句话出口。当时的我,即或说谋害K也不为过分。但我也有与所受教育相应的良心,假如有人来我身旁骂我一句“卑鄙”,我很可能幡然醒悟。倘若其人即是K,我恐怕在他面前满脸通红。问题是K不会责怪我,因为他太正直了,太单纯了,太善良了。而鬼迷心窍的我根本顾不上对此致以敬意,反而落井下石,急于趁机击败对方。

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