先日、筆者が上海市内の日本料理屋で昼食を取っていたところ、店内のテレビで日本のグルメレポート番組が放映されていました。何の気なしに見ていると、ゲストが訪れた老舗中華料理屋に「酸辣湯麺」というメニューがありました。筆者は思わず店の店員と顔を見合わせ、「こんなメニュー、中国にはないよねぇ」と呟き合ってしまいました。

前几天,笔者在上海市内的日本料理店吃午饭时,店内的电视上正在播放日本的美食节目。碰巧看到节目中嘉宾到访的老字号中华料理店中有一种名为“酸辣汤面”的料理。笔者不禁与店员面面相觑,小声嘟哝道:“这个在中国是没有的。”

少し解説をすると、中国で「酸辣湯(スアンラータン)」というスープは非常にオーソドックスでポピュラーなメニューです。しかし酸辣湯に麺を入れる食べ方は、少なくとも筆者のこれまでの中国生活で一度も見たことがありません。もしかしたらどこかの店が出しているのかもしれませんが、一般的な中華料理メニューでないことは確かです。

这里稍作解释,在中国“酸辣汤”是很传统而受欢迎的料理。但是,在酸辣汤里加入面的吃法,至少笔者在中国生活这么多年还从未见过。或许有的店会这么做,不过一般的中餐确实少有这样的做法。

この酸辣湯麺に限らず、中国にはほとんど存在しないのに、日本では当たり前のように中華料理として信じられているメニューがたくさんあります。そこでは今回は、日本人が中華料理と信じているけれど実は中国にはないメニュー、そして、そうした日本の「中華料理」メニューに対する中国人の反応を紹介したいと思います。

其实不止是酸辣汤面,在日本被理所当然地认为是中华料理,但在中国却几乎不存在的菜有很多。这次,就给大家介绍一下那些虽然日本人深信是中华料理,但其实在中国并没有的菜品以及中国人对于这些日本“中华料理”的看法。

日本の「三大中華料理」、中国との違いは?

日本的“三大中华料理”与中国不同?

日本でポピュラーな中華料理といえば「ラーメン」「餃子」「チャーハン」ではないでしょうか。しかし、この3本柱の中で、日本で食べられている形態のまま中国でも食べられているものは1つもありません。

说到日本最流行的中华料理,无非就是“拉面”“饺子”“炒饭”。但是,在日本这3种料理的吃法没有一个与中国相同。

まずラーメンは日本と中国で完全に系統が分かれており、中国では日本のラーメンを「日式拉麺」と表記して区別しています。

首先,拉面在日本和中国是完全不同的两个系统。在中国,把日本的拉面称作“日式拉面”以作区分。

中国のラーメンは、あっさり目のスープに牛肉や薬味をトッピングした「蘭州拉麺」が一般的です。トッピングや味付けによって種類が多少分かれますが、それほど多様性はありません。むしろ、味噌、塩味、豚骨など様々なスープがある日本の方がバラエティに富んでいます。また日本のラーメンの方がスープが濃厚で、油も多く、味が強いと言えるでしょう。

中国的拉面,是在清汤里加上牛肉和配料的“兰州拉面”比较普遍。虽然配料和调味有不同,但并没有很大的区别。倒不如说,味噌、咸味、猪骨等各种汤底的日本拉面种类更丰富。另外,日本的拉面汤更浓厚,而且有不少油,味道很浓厚。

餃子も日本と中国では異なります。ご存じの方も多いと思いますが、日本では「焼き餃子」が一般的なのに対し、中国では茹でて食べる「水餃子」が一般的です。焼き餃子も全くないわけではないのですが、中国人が食べる頻度でいえば圧倒的に水餃子が主流です。また中国の餃子は具材も日本とは異なっています、種類非常に豊富です。

日本和中国的饺子也不一样。众所周知,日本比较常见的是“煎饺”,而中国则是煮的“水饺”更常见。中国也不是完全没有煎饺,只是中国人吃的最多的还是水饺。另外,中国的饺子馅也和日本不同,食材种类非常丰富。

最後のチャーハン(焼き飯)は見た目こそ確かに共通していますが、中国のチャーハンは日本のチャーハンよりもやや油っぽく、日本のように“パラパラ”した食感はありません。また具材や味付けは地方によってかなり異なっており、筆者が昔好きだったのはトマトチャーハンでした。

最后的炒饭看起来虽然相同,但中国的炒饭比日本的炒饭要油腻一些,不像日本炒饭吃起来有“脆脆”的口感。另外,不同的地方使用的材料和调料也不同,笔者以前喜欢的是番茄炒饭。

冷やし中華も中華丼も中国には存在しない

中华冷面和中华丼在中国都不存在

形態や味付けに差があるとはいえ、以上のラーメン、餃子、チャーハンは中国でも同名のメニューが一応存在しています。一方、日本では中華料理とされているのに、中国ではメニューとしてすら存在しない食べ物があります。「冷やし中華」「中華丼」「天津飯」などがそれにあたります。

虽说形式和调味都有差异,但是拉面、饺子、炒饭这些同名料理在中国都是存在的。而还有一些菜虽然在日本被当做中华料理,但其实在中国根本连名字都不存在。比如“中华冷面”、“中华丼”、“天津饭”等。

冷やし中華と中華丼の発想の元になったと思われるメニュー「冷麺」と「蓋澆飯」は確かに中国に存在します。しかし、天津飯に関しては原形と思しきメニューも浮かんできません。諸説あるものの、そもそもなぜ「天津」という地名が付いたのかもよく分かっていません。

中华冷面和中华丼的想法最初来自“凉面”和“盖浇饭”,这两种料理在中国确实存在。但是,笔者脑中始终无法想象出天津饭的原型是什么。虽然有各种各样的说法,但为什么会用“天津”这个地名命名也无从得知。

なお、中国人の知り合いに天津飯がどんな料理なのか説明するため、中国の検索サービス「百度(バイドゥ)」で「天津飯」と入力して画像検索をかけたところ、漫画の「ドラゴンボール」に出てくる天津飯しかヒットせず、説明するのに非常に困りました。

另外,笔者为了向中国友人解释天津饭是怎样的料理,在中国的搜索引擎“百度”输入了“天津饭”,结果出现的图片只有漫画《龙珠》中出现的角色天津饭,以至于很难跟他们解释清楚到底这是道怎样的料理。

「現地に合わせた工夫は当然必要」

“因地制宜是很必要的”

こういった日本人が勝手に中華料理として追加しているメニューを、中国人たちはどう思っているのでしょうか。

中国人是怎样看待日本人擅自加入中华料理里的菜肴的呢?

知人の中国人たちに話を聞いてみたところ、結論から言うと誰もが「おいしければそれでいいんじゃない?」という具合で、問題視するような声は全く聞かれませんでした。

我向一些中国朋友问了这个问题,结果大家都说“只要好吃不就行了吗?”,完全没有人提出质疑的声音。

質問に答えてくれた1人は、「同じ中国国内でも、地方によって料理の味付けや素材は違う。その土地に応じた工夫は必要だ」と言います。日本人が日本人の舌に合わせて料理の形態を変化させるのはむしろ自然なことだと理解を示しました。

其中回答了这个问题的一个人表示“即使是在中国国内,地方不同,料理的调料和材料也不一样。因地制宜是很有必要的”。日本人根据自己的口味改变料理的形式是很自然的事情,他们对此表示理解。

「枠の限定」は文化の発展を妨げる

“框架的限定”阻碍了文化的发展

そもそも中華料理自体、漢族だけではなく蒙古族、回族、満州族など、多種多様な民族の料理を鷹揚に取り込み続けてバラエティ豊かに発展してきた歴史があります。寛容性という点では、間違いなく世界屈指の料理文化だと言えるでしょう。

中华料理本身有着丰富的发展历史,不仅是汉族,还融入了蒙古族、回族、满族等多种多样民族的料理。在宽容性这一点可以称得上是世界屈指可数的料理文化。

一方、筆者がこうした「料理の寛容性」の点で少し気がかりなのは、ほかならぬ我らが日本の「和食」です。

而笔者在“料理的宽容性”这方面对日本的“和食”有些许担忧。

最近、農林水産省が和食調理技能の認定制度を始めたり、海外における間違った和食を正すといったテレビ番組も放送されたりしています。しかし、知人の中国人が証言した通り、現地に合わせた料理のローカライズは海外での普及にとって必要不可欠です。和食の枠を限定するかのような姿勢は、かえって料理文化の発展、拡大を阻害してしまうのではないでしょうか。

最近,农林水产省开始了对和食调理技能的认定制度,还有很多电视台在播放纠正海外错误的和食的节目。但是,正如中国朋友所说的那样,因地制宜的料理本土化对于在海外的普及来说是不可或缺的。将和食的框架限定,反而会阻碍饮食文化的发展与壮大。

海外で生まれた和食でも、日本人もおいしいと感じるものは逆輸入して和食として取り込んでしまうくらいの寛容さが、食文化の発展には必要なのではないでしょうか。

即使是发端于海外的日本料理,只要日本人也觉得好吃,将其视为返销和食来吸收的宽容,难道不是饮食文化发展所必要的吗?

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