<昨年11月、東京都中野区で中国人の大学院生が友人の身代わりになって刺殺された。日本ではあまり報じられていないが、中国では連日トップニュース。母子家庭の1人娘を失った母親は容疑者の死刑を求めている>

去年11月,在东京都中野区一名中国研究生为了保护友人被刺身亡。这个事件在日本并没有被大幅度报道,但是在中国却连日登上了新闻头条。在仅有母女两人的家庭中,失去唯一女儿的母亲,请求判处犯罪嫌疑人死刑。

連日トップニュース、200万の署名を集める「江歌事件」とは何か

连日登上新闻头条,受害者母亲收集200万人署名的“江歌事件”到底是?

2016年11月3日未明、東京都中野区で中国人の大学院生、江歌さんが刺殺された。容疑者は中国人留学生の陳世峰。江さんのルームメイトの元交際相手で、事件の2カ月前に別れた後、追跡したり脅迫したりとの嫌がらせを続けていた。事件当日、江さんとルームメイトの女性2人は一緒に部屋に戻った。ルームメイトが先に部屋に入ったところで陳が現れた。そして、江さんと言い争いになり、凶行に及んだのだった。

2016年11月3日凌晨,东京都中野区一名中国研究生江歌被刺杀身亡。犯罪嫌疑人为中国留学生陈世峰。陈世峰是江歌室友的前男友,在事件发生两个月前两人分手,之后男方持续对女方进行跟踪、威胁等骚扰。事件当日,江歌与室友两人一起回到住处,在室友先迈进房间的时候,陈世峰突然出现。于是江歌与其产生了争执,最终发展到行凶的程度。

この1年余りというもの、「江歌事件」は中国で注目を集めてきた。特に12月11日の日本での裁判を前に報道は過熱し、連日のようにトップニュースとなっているほどだ。なぜ中国の人々はこれほど事件に注目しているのか。それには3つの理由がある。

尽管事件已经过去了1年多,“江歌事件”在中国仍然备受瞩目。特别是12月11日在日本审判前夕的报道白热化,连续多日登上新闻头条。为什么中国人对此事件的关注度如此之高。有以下三个理由。

第一に善良な女性が友人の身代わりになって殺されたこと。江さんが母子家庭出身で、たった1人の娘を失った母親の悲痛な思いに胸を打たれたという同情だ。

第一,此事件是一位善良的女性为保护友人挺身而出被杀害。江歌出自母女的单亲家庭,母亲失去了唯一女儿的悲痛使人们倍感心痛,令人同情万分。

そして第二に事件に多くの不可解な謎が残されている点だ。謎の多くはルームメイトにまつわるものだ。別れてから2カ月間も陳の嫌がらせを受けおびえてきたのに、江さんが警察に通報するよう進めても同意しなかったこと。事件の直後、警察の調べに犯人の見当がつかないと答えていたこと。犯行時に家に閉じこもって江さんを助けようとしなかったらしいことなどだ。これらの疑問にルームメイトは答えていない。

其次,此事件残留着很多不可解的疑点。多数疑点都与江歌室友有着很大关系。尽管她与前男友分手后两个月期间都遭受着威胁与担惊受怕,却反对江歌报警寻求保护的建议。在事件发生后接受警方调查时,也声称关于凶手毫无头绪。在犯罪发生时躲在家中的她没有对江歌进行任何援助。关于这些疑问,室友没有给出任何解释。

それどころか自らを救った江さんの遺族にも会おうとしなかった。事件から9カ月が過ぎた今年8月になって、中国世論の批判にさらされてようやく江さんの母親と面会したが、新たな事実は明らかとなっていない

不仅如此,事件发生后她连救下自己的江歌的遗属见都不见。事件过去9个月,直至今年的8月,受到中国人民舆论的批判,她才终于同意与江歌母亲见面,不过并没有讲述有关事件新的事实。

第三の、そして最大の要因は江歌さんの母、江秋蓮さんの行動だ。「娘は私の人生の全てだった」と語る江秋蓮さんは今年8月から「陳世峰の死刑を求める署名活動」を中国で行っている。

第三,这也是关注度之高最大的因素,江歌母亲的行动。“女儿是我的全部”诉说这这些的江秋莲在今年8月发动了“请求判处陈世峰死刑的署名活动”。

この活動が中国社会で大きな反響を呼んだ。一人娘を失った辛さはよく分かると賛同する人が多く、200万人を超えるネット署名を集めているほか、支援の寄付を行った者も少なくない。その一方で「娘の死を口実に金儲けしている」「日本に留学するなど売国奴だ」といった心ない批判も寄せられている。実際には江秋蓮さんは心労の余り仕事ができなくなり、自宅まで処分して活動資金を捻出しているのだが。

这一活动为中国社会带来了巨大的反响。很多人都能理解失去唯一女儿的沉痛,投了赞同票。该活动除了召集了超过200万人的网络署名之外,还有不少热心人进行了支援捐赠。另一方面,也有一些冷漠的批判的声音:“以去世的女儿为名赚钱”“去日本留学的卖国贼”等。实际上,江秋莲因为此事件操劳,根本没有工作的精力。她甚至卖掉自己的房产筹措活动资金。

死刑を求める中国世論に対し、丁寧な説明が必要になるかもしれない

对于请求陈世峰死刑的中国舆论,有必要进行详细的说明。

実は私は当初からこの事件に関わってきた。事件の3日後、江秋蓮さんが来日したが、その日のうちに会い、日本での滞在をサポートしてきた。歌舞伎町で培ったネットワークを駆使し、事件の内情、捜査の現状について調べてきた。

实际上,笔者对当时的事件有所接触。在事件发生的3日后,江秋莲女士来到日本,那时笔者就见到了这位母亲,并对她在日本滞留期间进行支持。在歌舞伎町使用网络对事件的内情、搜查的现状进行了调查。

中国を騒がすルームメイトの謎についてもいくつかの新事実をつかんでいるが、12月11日から裁判が始まるため、今は明らかにできない。詳細は結審後に公表することになるだろう。

虽然对于在中国引起骚动的室友之谜也挖掘出了几个最新的事实,不过由于12月11日才开始进行审判,所以现在对于结果还不得而知。详细情况只能看审判结束后的官方发表。

ただ、私が危惧するのは日中の温度差だ。日本メディアは事件直後こそ取り上げたものの、今や中国人の一大関心事になっているこの問題をほとんど取り上げていない。安全と思われていた日本でこれほど残虐な殺人事件が起きたことに中国人は驚き、中国ではトップニュースとなっているにもかかわらず、だ。グローバル化の時代にこの鈍感さはいかがなものだろうか。

只不过,令我感到恐惧的是中日对待此事件的温度差。虽然日本媒体在事件发生后立刻进行了报道与申诉,不过对于本事件成为中国媒体第一关心的大事这一问题几乎没有报道。本以为安全有所保障的日本竟然发生了如此残虐的杀人事件,中国人为此感到万分震惊,甚至成为了中国网络的最热话题。在现在全球化的时代中,日本的这一钝感笔者认为是有问题的。

裁判を控えた今、中国で注目を集めているのは日本の司法、殺人事件に関する量刑だ。江秋蓮さんは容疑者の死刑を求めているが、日本では殺人犯といえども、被害者が1人では死刑判決が下りるケースは少ない。これが中国人には不可解なのだ。

在等候判决的现今,中国人民所关注的是日本的司法,关于杀人事件的量刑。江秋莲虽然请求判处犯罪嫌疑人死刑,但是在日本,即便是杀人犯,在受害者1人的情况下,极少会被下达死刑。这便是中国人最不可理解的地方。

たんに中国は死刑が多い国だからというわけではない。中国における「公道」(正義)とは、社会の多くの人々が納得する落としどころを見つけることにある。一人娘を失った母の悲痛な思いがあり、それに多くの人々が共鳴している今、司法がその気持ちに応えることこそが正義なのだ。日本では司法が世論になびくようなことがあれば、批判の対象となるだろうが。

不过中国人有这种想法并不是因为中国允许执行很多死刑。而是因为中国所谓的“公道”(正义),是寻找一个能被社会大多数人所接纳的方式。母亲失去唯一的女儿的伤痛,再加上这份伤痛与很多人产生了共鸣,这个时候,中国社会认为司法回应这份心情才是正义所在。但是在日本,司法如果屈服于民意,反而会成为大众批判的对象。

今回の事件では加害者も被害者も中国人だが、だからといって日本の司法が中国式になるべきだとは私も思わない。ただし日本と中国の違いを正しく認識し、それを丁寧に説明していくことが必要だ。

虽然这次的事件中,加害者与被害者皆为中国人,但笔者并不认为日本的司法应该向中国式发展。只不过,我们需要正确认识日本与中国司法的不同之处,将这些详细解释给社会大众显得十分必要。

2007年に起きた名古屋闇サイト殺人事件では、被害者が1人だったにもかかわらず、残虐な犯行だったこと、反省が見られなかったことなどを理由に実行犯3人のうち2人に死刑判決が下された(残る1人は無期懲役)。もし陳世峰が死刑にならなかったとすれば、何が判断の違いを招いたのか、恣意的ではない日本のルールがあることを説明しなければ、中国人の日本司法に対する怒りを招くことも考えられる。

在2007年发生的名古屋网络杀人事件中,无关受害者1人的事实,基于犯罪者残虐的犯罪以及丝毫不见反省的态度为理由,将实行犯3人中的2人判处了死刑(剩余1人判处无期徒刑)。如果陈世峰没有被判处死刑,可能会招致民间对判决哪里出现偏差的质疑,如果不向世间说明“并不是肆意而为之”的日本司法规则,可能会招来中国人对日本司法的愤怒。

最後に江秋蓮さんの言葉を紹介して本稿を終わりにしたい。

最后,以江秋莲女士的话语作为本稿的结尾。

(私の願いは)陳世峰を死刑にして欲しい。それだけです。娘は私の人生の全てでした。今の望みは「陳を死刑にした」という知らせを持って、あの世で娘と再会することだけです。日本の量刑基準では、死刑判決は出ないだろうという話を聞いたことがあります。ですが殺した人間の数で量刑が決まるのはおかしくないでしょうか。全く罪がない娘を殺した、しかもとても残忍な方法で殺したのです。それで極刑にならないのはおかしいのではないでしょうか。しかも陳が殺したのは娘だけではありません。私も、そして私の母も事件によって殺されたも同じ。一家皆殺しと同じなのです。私は命をかけて、陳の死刑を求めていきます。ご支援をお願いいたします。

(我所期望的是)陈世峰被判处死刑。仅仅如此。女儿是我的全部。我希望带着“陈世峰被判处死刑”的消息,与女儿在那个世界再会。以日本的量刑基准,我知道或许不会出现判处死刑的裁决,不过,以杀人的数量作为量刑的标准难道不奇怪吗。他杀害了毫无罪恶的我的女儿,还用了十分残忍的方式。这样的犯罪都不处以极刑难道不奇怪吗。并且,陈杀掉的不仅仅是我的女儿,还用这个事件杀掉了我、以及我的母亲。这和灭门有何区别。我在此以我的生命,请求判处陈世峰死刑。请大家给予我支援。

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