むかしむかし、向川原(むこうがわら)というところに、千亀女(せんかめじょ)という名の美人がいました。

很久很久以前,在一个叫做向川原的地方,有个叫千龟女的美女。

町を歩くと、千亀女の方を振り返らない者はいないくらいの美人です。

千龟女美到走在路上,没有人不回头看她的。

母は千亀女が何よりの自慢で、日に一度は用もないのに千亀女を連れて町をひと回りするのです。「千亀女は、志布志(しぶし)一の美人じゃ」と、もてはやされる日が何年も続きました。

对母亲来说千龟女是她最引以为傲的,就算一天什么事情都没有,也要带着千龟女去镇上走一圈。「千龟女是志布志第一美人啊」这种受欢迎的日子持续了好几年。

さて、ある年の事、宝満寺(ほうまんじ)という寺に観音さまが迎え入れられました。

话说,有一年,宝满寺里请来了观音菩萨。

何でも東大寺の仁王像を造った事で有名な運慶(うんけい)の作という事で、とても美しい観音さまです。

由于是制造东大寺仁王像而出名的运庆之作,所以是个美女观音。

志布志の町は、その観音さまの評判で持ちきりになりました。

在志布志镇上,这观音一下子变得很有人气。

「観音さまとはいえ、これは放ってはおけぬわ」対抗心を燃やした母は千亀女に念入りに化粧をさせて、観音さまを拝みに行きました。

「就算是观音,也不可原谅」燃起对抗心的母亲精心为千龟女化好妆,去参拜观音。

その帰り道、二人は山門の所で一休みするふりをしながら、人々の噂に耳を傾けるのです。

回来路上,两人假装坐在寺院大门前休息,倾听人们的谈论。

「今日の千亀女は、特別に美しかったのう」(ふん。当たり前じゃ)「じゃが、観音さまのあの美しさには、ちょっとかなわんじゃろう」(なんですって!)「そうじゃのう。やっぱり観音さまが上で、その次が千亀女ということになるのう」

「今天的千龟女特别漂亮啊」(恩。那是当然)「不过,还是比不上观音的美啊」(那是当然啦!)「那是啊,还是观音第一,千龟女次之啊」

(きぃーーっ!くやしいーーー!)これを聞いた母は、地団駄を踏んでくやしがりました。千亀女は、声をあげて泣き出します。

(切!太不甘心了!)听到这些话的母亲跺着脚很是不甘。千龟女嚎啕大哭。

「これは、どうにかせねば」二人は相談を始めて、夜明け近くになって良い考えが浮かんだのか、二人はこっそり家を抜け出しました。

「必须做点什么了」两个人开始商量,在快天亮的时候,终于想出了个好主意,两人悄悄地出了门。

そして二人は宝満寺(ほうまんじ)に忍び込むと、観音さまを裏庭に引きずり出しました。

两个人潜入宝满寺,把观音像拖到了后院。

そして松の青葉を積み上げる、火をつけて観音さまの顔をいぶし始めたのです。

然后堆起松树绿叶,点上火开始用烟熏观音的脸。

黒い煙がもくもくと立ち上り、やがて観音さまの顔は真っ黒になってしまいました。

黑烟滚滚,终于把观音的脸熏得漆黑黑的了。

「よしよし、うまくいったよ」二人は顔を見合わせてにっこり笑うと、何事もなかったかの様に家へ帰り、安心してぐっすりと眠りました。

「好了好了,干的不错」两人相视一笑,好像什么事都没发生一样,回家安心地睡觉了。

やがて昼近くになってやっと目を覚ました母は、側で寝ている千亀女を見て、「ぎゃぁぁーーーーっ!」と、叫び声をあげました。

睡到将近中午才醒的母亲看到睡在旁边的千龟女,尖叫起来「呀——!」

その悲鳴に、千亀女も目を覚ましました。「あわわわ、あわわわ」母が自分の顔を指差して口をパクパクさせているので、何事かと鏡をのぞいたとたん、「きゃぁぁーーーーっ!」と、千亀女も声をあげました。

千龟女被尖叫声吵醒了。「啊啊啊」看到母亲指着自己的脸,嘴巴一张一合的,以为发生什么事了,一照镜子也尖叫起来「呀——!」

なんと美しい千亀女の顔に、黒いあばたがいっぱい出来ているのです。

那么美丽的千龟女的脸上长满了黑色的麻子。

そればかりではなく、左足がズキズキすると思ったら、左足が胴体と同じくらいに膨れあがっているのです。

而且不只如此,感觉左脚疼,才发现左脚肿的和身子一样胖了。

きっと、観音さまのばちが当たったのでしょう。

这一定是观音菩萨的惩罚吧。

それから後、千亀女は脚の醜さだけでも隠そうと、地面にひきずるような長い着物を着る様になったという事です。

从那之后,千龟女光是为了遮住丑陋的脚,也要穿着拖到地面的衣服了。

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