山田洋次監督が描く家族劇、震災を経た現代日本で求められる理由

导演山田洋次描绘的家族剧,在灾后的现代日本社会受欢迎的原因

熊本地震が起きてすでに4週間ほど経つ。亡くなられた方々の無念を思うと同時に、いまだ多くの被災者が困難を強いられていることに胸が痛む。東日本大震災から、5年の時点でこれほど大きな地震が起きたことに、衝撃を受けている人も多いだろう。いつ何時、わが身に災害が起きても不思議ではない。その切迫感は、日本の今に何をもたらすのか。あるいは何をもたらそうとしているのか。

熊本地震发生后,经过了4周左右时间。我们对受难者表示遗憾的同时,想到还有很多人被困于灾难之中,就莫名心痛。东日本大地震以来,时隔五年的时间,再次发生类似强度的地震,想必受到冲击的人们一定很多吧。也许某个瞬间,灾害就发生在我自己身上也不是不可能的。这种迫切感,给如今的日本带来了什么呢?或者说将要给日本带来什么呢?

多くの人たちが切実な思いを抱いて接しようとしている

与很多人怀抱着的真实想法相通

今年に入り、山田洋次監督の2本の作品、『母と暮せば』と『家族はつらいよ』がヒットした。興収では、前者が19億円、後者が14億円(ともに最終見込み)。山田監督の今も衰えない執念の結晶とも言うべき家族劇が、多くの人々の気持ちをつかんだ結果である。山田監督の家族を描く作品に今、多くの人たちが切実な思いを抱いて、接しようとしている。

今年,山田洋次导演的两部作品《如果和母亲一起生活》、《家族之苦》大获成功。前者票房为19亿日元,后者票房为14亿日元(均为最终估算)。山田导演如今对家族剧的执念丝毫未减,原因在于剧情题材抓住了大多数人的心。山田导演描绘的家族剧,与当今很多人怀抱的切实想法相通。

『母と暮せば』は、長崎への原爆投下により、息子を失った母と“幽霊”として母の前に現れる息子との話である。『家族はつらいよ』は、東京のある家族の日常を、コミカルなタッチで描く。中身は全く違うが、ともに家族への深い愛しみの念が濃厚だと言える。

《如果和母亲一起生活》这部电影,是以遭受原子弹爆炸的长崎为背景,在爆炸中失去儿子的母亲见到了儿子的亡灵,并由此展开的故事。《家族之苦》这部电影,是以东京某个家族的日常生活为背景,展开的幽默喜剧。虽然故事内容完全不一样,但都表达了家人之间深厚的情感羁绊。

『家族はつらいよ』では、熟年夫婦の離婚危機を引き金にした騒動が起こる。コミカルに描かれているから、いさかいや葛藤などの意味が弱まることもあって、そのドタバタ劇は近い将来から眺めると、ファンタジーにも見えるような瞬間があって驚いた。将来的には消滅していく可能性さえある家族という形の“残像”を、未来的な視点で懐かしく描いた作品のようにも感じられたのである。

在《家族之苦》这部电影是以中年夫妇离婚危机为契机发生的骚动。由于采用了幽默的描绘手法,因此弱化了家人间的争论和矛盾,从不远的将来的角度来看这场闹剧,某一瞬间感觉像在看幻想剧而吃惊不已。甚至有可能在将来会消失的家族的“残影”,感觉像是用未来的视角来怀念描绘的作品。

3.11以降、家族や友人、恋人のかけがいのなさが浮き彫りになった。私は震災後、そのとき刻まれた多くの強烈な事実がすでに風化しつつあるなかでも、とくに家族の絆の大切さが、日本の人々の心の奥深くに染み込んでいる印象をもつ。家族とともに、平穏な生活を送ることへの強い渇望が、かつてとは比較にならないくらい湧き上がってきたように思える。

自3.11大地震以后,日本家人朋友及恋人之间的牵绊更加突显。我在灾后发现,虽然人们已经渐渐淡忘了那个特殊时刻所记载的多数强烈事实,但是在日本人内心深处,时刻铭记着家人之间的牵绊。感觉和以前相比,日本人更加渴望和家人在一起过着安稳的生活。

一方で、この国は高齢化の時代を迎え、多くの家族が大変な問題をかかえている。高齢者のみならず、育児や子どもの教育の問題など、かけがえのない家族が大きな悩みの種になっている場合もある。国に頼ることはできるのか。家族という形への強い渇望とはまた別に、厳しい日常の現状が、多くの日本の人々の生活をおおっている。

另一方面,日本社会迎来了老龄化时代,很多家庭面临着严峻的问题。不仅是老龄化问题,还有抚养孩子、教育下一代等问题,为不可替代的家庭埋下了烦恼的种子。解决这些问题能否依靠国家呢?除了强烈渴望和家人一起面对之外,还有其他的选择吗?目前严峻的日常现状,覆盖了多数日本人的生活。

山田監督は、この時代だから家族を描き始めたのではない。周知のように、『男はつらいよ』シリーズは、昭和の東京・下町の家族劇であった。ズバリ、『家族』(1970年)という名作もある。この50年、たゆまず家族を描いてきた先に、いまや家族の形の存続そのものが問われる時代がやって来たのである。

山田导演并不是因为现在的时代环境而开始创作家庭剧的。众所周知,《寅次郎的故事》系列电影描绘了昭和时代的东京下町等地的家族故事。另一部直截了当的家族剧《家族》(1970),也非常有名。在这50年来,山田导演一直坚持不懈创作家庭剧,但是如今社会开始对原始的家族形式产生质疑。

作家の長部日出雄氏は、自著『日本を支えた12人』の小津安二郎監督の項で、彼の代表作にして日本映画の金字塔である『東京物語』について、以下のように書いた。「平凡な日常の生活が実は掛替えのないいとおしさに満ちた貴重なものであることを、まざまざと感じさせる小津映画の最高傑作だ」。

作家长部日出雄的作品《支撑日本的12个人》,由小津安二郎执导拍成电影。他对于小津的巅峰代表作《东京物语》这样写道“小津导演电影的成功之处在于,能够清晰地让人感受到,平凡的日常生活实际上是不可替代充满爱意的重要之物。”

山田監督の作品群もまた、その境地に入りつつあると言えるのではないだろうか。家族を連綿と、日本人の原基的な精神と行動の拠りどころとして描き続けてきた山田監督だからこそ、そのとてつもない境地への道筋が可能になったのである。それを、映画の観客が固唾を呑んで観ている気がしてならない。

山田导演的作品群,可以说也进入了这样的境界中。正因为山田导演一直在描绘家族牵绊,并以日本人固有的精神和行为作为依据,才为他通往不可思议的创作道路提供了可能。这就是吸引电影观众一直屏住呼吸聚精会神观看电影的原因。

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