三等奖

「草の根の力を発揮しろ」

鄭璐瑶(北京第二外国語学院)

梅の蕾が次々と咲き始め、暖かくなった風も春のメッセージを届けてきた。春の時期になると、気持ちも軽くなり、体も動きやすくなる。

私はこの間、バイトとして通訳をやった。中国のある教育会社が日本の広島国際大学と福祉や医療分野で業務提携を行いたいとして、私のところに連絡があり、通訳の担当を依頼して来たのだ。

「生半可」な自分でいいのかなと迷っていたが、引き受けた。なぜかというと、人生初の通訳関連の仕事だから、このチャンスを逃したら、二度と来ないと思ったからだ。

「思い立ったが吉日」というようなことだ。自分はきちんと気持ちを引き締めて、準備を万全にした。おかげで、無事に任務を完了したとともに、教育会社のトップリーダーたちに褒められて、ウェーチャットの友達にもなった。その日、日本から来たNPO法人世界の理事長ともいい関係を築くことができた。中国の中央対外連絡部の官僚たちも来たので、名刺をもらった上に、一緒に食事をした。話をしたら、官僚の一人がなんか二外の学生で、私の大先輩だ。私は、「自分も中日の美しい未来を構築するために、精一杯の力を尽くしたいです」と先輩に話し、先輩は「夢を実現させるよう頑張ってください」と励ましてくれた。

なんか「犬も歩けば棒にあたる」という感じがした。その仕事を受けなかったら、自分の世界はこれほど広げられなかったであろう。人と人はかならずなにかの「因縁」によって知り合い、そのうち段々親睦になるものではないか。中日の民間交流も同じだと思う。深く接触した上で、評価を出すのが正しい。偏見や差別は必ず現実に基づいたものではない。しいて言えば、最初にその「現実」を作ったのは故人たちで、きっと今の時代を生きる人々ではないのだ。時代が進むにつれ、賢明な人は「今の現実」を重視し、「今の現実」をよりよくするために絶えず努力していく。その「今の現実」はなにかというと、きっと「友好」「一致団結」「ウィンウィン」「親睦」などといったことであろう。

民間交流はいわば、「草の根の交流」と呼ばれるが、国民の力はまさに草の根のようなもので、冬に静かに命の種を孕み、力を溜めて春になったら、一気にその力を発揮して、元気はつらつと土を破り、成長していく。両国の未来を担うのは、青年たちである。従い、青少年の交流はきわめて重要な立場に位置している。

私はこの間日本舞踊を稽古している日本人の女の子と知り合った。その子は今中国で、半年間の交流生活をしているそうだ。その子は茶道具や習字の筆や踊りの扇子を買いたいと言うので、彼女を連れて「後海」に行った。ある中国風の店で茶器を選んだとき、店主さんがとても親切で、日本から来た客人だと聞いて、取って置きの「茶王」と呼ばれるとてもいい香りのしたお茶を入れてくれた。それに、いろいろなお茶についての豆知識を教えてくれた。「お茶の職人だなあ」と感心した。店主さんはもともと清華大学の学生で、卒業したら、中国の伝統文化を発揚したいとして、店を開いたそうだ。多種多様な茶器があり、鶴や梅の花、竹、ランなどたくさんの模様がある。中には『清明上河図』の描かれた茶器もある。それはとても上手にできていた。店主さんは、できるだけ多くの外国人のお客さんに中国の伝統文化の底力を知ってもらいたいと語り、私たちは感服した。中国の夢を持つ立派な店主さんだね!

その女の子も「私も中国文化を出来るだけ多く深く理解したい。私は師匠に従い、日本舞踊を稽古しているから、将来自分もその道を歩むつもりだ。日本の伝統芸術をいかに守るか、発展させるか、より多くの外国文化の要素を日本舞踊に入れたい。古き良き芸に新しい近代文明の芳しさを加味して、日本舞踊をより粋の集まった芸術に発展させていきたい」と話してくれた。彼女が話しているとき、私は彼女の目から堅実な信念の光を見た。彼女の言葉を深く心に刻み、自分もなんか心から力が湧いてきた。「将来、日本舞踊家になって舞台に立ったら、ぜひそのとき、私の演出を見に来てください」と真摯に私を誘ってくれた。私は「はい。その日のために、稽古を頑張りなさい」と約束を交わした。きっと、立派な舞踊家になると私は信じている。

中日両国は「金蘭の交」「竹馬の友」みたいな関係で、決して「遠交近攻」「犬猿の仲」のような関係ではないのだ。せめて、この世代の若者たちにこの点を理解してほしいと思う。両国のよりよい明日を構築するために、われわれ青年たちは何をすべきか、何が出来るか、中日友好のために身を投じている諸先輩方の足跡を追い、先人の事業を守り、後に来るものにより広い天地を与えることができたらいいのではないであろうか。「願わくは、草の根の力、発揮しろ!」


【創作のインスピレーションと】
このたび、笹川杯作文コンクール2015の三等賞を受賞しており、まことに光栄に存じます。日本語学習者としての私にとって、自分の作文が『人民中国』に掲載できることは、夢にも思わなかったのです。

去年の夏休みに、北京で中国を訪れていた日本人の女の子6人と知り合い、親友になりました。そのうち、日本舞踊を稽古している女の子が中国で半年間留学していました。彼女は中国文化をよく深く勉強し、日本舞踊に中国の要素を取り入れ、日本の伝統文化に新たな花を咲かせたい考えでした。

当初私は日本語を専攻として選んだ理由も同じです。一中国人として、より多くの日本人に中華民族の伝統文化を理解してもらい、中国人の優しさと真心溢れる親切さを感じてもらうことを願います。草の根の力はまさに「物を潤して細かにして声無し」のような力でしょう。この場をお借りしまして、中日両国の民間交流が引き続き活力を発揮し、両国の友好が世代を超え永遠に続くようお祈りしております。ありがとうございます。