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むかしむかし、彦一(ひこいち)と言う、とてもかしこい子どもがいました。
 

在很久很久以前,有一个非常聪明的孩子,他的名字叫做彦一。

小さい頃から頭が良くて、ずいぶんととんちがきくのですが、大が付くほどの酒好きです。

他从小就很聪明,也相当机灵,就是嗜酒如命。

何しろ彦一の夢は、毎日たらふく酒を飲むことです。

总之一句话彦一的梦想就是每天喝酒喝到饱。

「酒が飲みてえな。何か、うまい知恵はないだろうか?」

“好想喝酒。有什么好办法不?”

考えているうちに、ふと、それをかぶると姿が消えるという、テングの隠れみのの事を思い出しました。

想着想着,他突然想起了一穿上就能隐形的天狗隐身蓑衣。

テングは村はずれの丘に、時々やって来るといいます。

听说天狗会时不时地到村子旁边的山丘去。

「よし、テングの隠れみのを手に入れて、酒をたらふく飲んでやろう」

“嗯,只要拿到天狗的隐身蓑衣,就能喝酒喝个饱了。” 

  彦一はさっそく、ごはんを炊くときに使う火吹き竹を持って、丘に来ました。
 

 彦一立马拿上煮饭时用的吹火竹棒到山丘那去了。
 

「やあ、こいつはええながめだ。大阪や京都が、手に取るように見える。見えるぞ」
 

 “呀,这风景真心不错。大阪和京都看上去触手可及。”
 

そう言いながら、火吹き竹を望遠鏡のようにのぞいていると、松の木のそばから声がしました。
 

正当彦一边这么说着,边拿吹火竹棒当望远镜那样眺望着,从松树那有说话声传来。
 

「彦一、彦一。のぞいているのは、かまどの下の火を吹きおこす、ただの火吹き竹じゃろうが」
 

“彦一,彦一。你看的那不就是一根灶台下面用来生火的吹火竹棒嘛”
 

声はしますが、目には見えません。
 

只闻其声,不见其人。
 

テングが、近くにいるのです。
 

那天狗就在附近。
 

「いいや、これは火吹き竹に似た、干里鏡じゃ。遠くの物が近くに見える、宝じゃ。???おお、京の都の美しい姫がやってきなさったぞ。牛に引かせた車に、乗っておるわ」
 

“你错了,虽然这看起来像吹火棒,其实这是千里镜,是一个能看到远处的宝贝。......哇,有京都的漂亮妹子正坐着牛车过来呢。”
 

「京の都の姫だと?彦一、ちょっとで良いから、わしにものぞかせてくれんか?」テングは、彦一のそばに来たようすです。
 

“你说京都的妹子??彦一,一下下就好,让我也看一下呗?”感觉天狗来到了彦一身边,这样说道。
 

「だめだめ。この千里鏡は、家の宝物。持って逃げられては、大変じゃ」
 

 “不行不行。这个千里镜是我家里的宝贝。你拿着跑了那就糟糕了。”
 

そのとたん、目の前に大きなテングが姿を現しました。
 

彦一话音刚落,身材高大的天狗就出现在了眼前。
 

「大丈夫、逃げたりはせん。だけどそんなに心配なら、そのあいだ、わしの隠れみのをあずけておこう」
 

 “没事,我不会逃的。如果你还是担心,那我看的时候把隐身蓑衣放你这好了。”
 

「うーん、それじゃ、ちょっとだけだぞ」
 

“嗯,好吧,只能看一下下哦。”
 

彦一はすばやく隠れみのを身につけると、さっと姿を消しました。
 

彦一一拿到隐身蓑衣就迅速穿上,隐去了身形。
 

テングは火吹き竹を目にあててみましたが、中はまっ暗で何もうつりません。
 

而另一边天狗拿起吹火棒看了看,却只看到一片黑暗。
 

「彦一め、だましたな!」と、気がついたときには、彦一の姿は影も形もありませんでした。 
  

“彦一这家伙,骗我!”天狗反应过来的时候,彦一已消失得无影无踪。
 

隠れみのに身を包んだ彦一は、さっそく居酒屋にやって来ると、お客の横に腰をかけて徳利のままグビグビとお酒を飲み始めました。
 

穿上隐身蓑衣的彦一立马就去了居酒屋,坐到客人旁边,拿起酒壶就咕噜咕噜开喝了。
 

それを見たお客は、ビックリして目を白黒させます。
 

看到的客人都是吓得目瞪口呆。
 

「とっ、徳利が、ひとりでに浮き上がったぞ!」 
 

“酒...酒壶自己飘起来了!!”
 

さて、たらふく飲んだ彦一は、ふらつく足で家に帰りました。
 

喝饱酒的彦一摇摇晃晃地回了家。
 

「うぃー。これは、便利な物を手に入れたわ。……ひっく」 

“哦,这真是得到了好东西呀。....”
 

隠れみのさえあれば、いつでもどこでも好きな酒を飲む事ができます。
 

只要有了隐身蓑衣,随时都能喝上喜欢的酒。
 

次の朝。

第二天早晨。
 

今日も、ただ酒を飲みに行こうと飛び起きた彦一は、大事にしまいこんだ隠れみのがどこにもない事に気がつきました。
 

 为了喝酒早早爬起来的彦一却发现怎么都找不到昨儿个好好收起来的隐身蓑衣了。
 

「おーい、おっかあ。つづら(→衣服を入れるカゴ)の中にしまい込んだ、みのを知らんか?」
 

 “喂,老妈,你有见过我收在箱子里的那件蓑衣吗?”
 

「ああ、あの汚いみのなら、かまどで燃やしたよ」
 

 “你说那件脏得一塌糊涂的蓑衣啊,我放灶台里当柴火烧了。”
 

「な、なんだと!」
 

“啊??什么!!” 
 

 のぞきこんでみると、みのはすっかり燃えつきています。
 

 跑去看的时候,蓑衣已经完全烧成灰了。
 

「あーぁ、なんて事だ。毎日、酒が飲めると思ったのに……」
 

“啊啊,怎么会这样。还想着每天都能喝到酒了...”
 

彦一はぶつくさいいながら灰をかき集めてみると、灰のついた手の指が見えなくなりました。
 

当彦一一边碎碎念着,一边把灰拢起来时,碰过灰的手指变不见了。
 

「ははーん。どうやら隠れみのの効き目は、灰になってもあるらしい」
 

 “哈哈哈,貌似这隐身蓑衣变成灰了也还有效。”
 

体にぬってみると、灰をぬったところが透明になります。

他又试着涂在身上,发现只要沾到灰的地方就会变透明。
 

「よし、これで大丈夫だ。さっそく酒を飲みに行こう」
 

 “嗯,这样就行了。现在就去喝酒。”
 

町へ出かけた彦一は、さっそくお客のそばにすわると徳利の酒を横取りしました。
 

上了街,彦一一坐到客人旁边,就伸手过去夺过酒壶。
 

それを見たお客は、「わっ!」と、悲鳴をあげました。
 

看到这一幕的客人“哇~”的一声大叫起来。
 

「み、みっ、見ろ。めっ、目玉が、わしの酒を飲んでいる!」
 

“看,看那。眼,眼珠在喝我的酒!”
 

隠れみのの灰を全身にぬったつもりでしたが、目玉にだけはぬっていなかったのです。
 

虽打算是全身都涂上隐身蓑衣的灰,就只剩眼珠没有涂。
 

「化け物め、これをくらえ!」
 

“怪物!看招!”
 

お客はそばにあった水を、彦一にかけました。
 

“那客人拿过旁边的水就泼到了彦一一身。”
 

バシャン!
 

哗啦啦!
 

すると、どうでしょう。
 

这可如何是好。
 

体にぬった灰がみるみる落ちて、裸の彦一が姿を現したのです。
 

眼看着涂在身上的灰全都掉了,彦一裸着身子出现在那里。
 

「あっ! てめえは、彦一だな! こいつめ、ぶんなぐってやる!」
 

 “啊,是彦一!你这家伙,非打死你不可!”
 

「わっ、悪かった、許してくれー!」
 

“啊,我错了。饶了我吧。”
 

彦一はそういって、素っ裸のまま逃げ帰ったという事です。
 

彦一扔下这句话就这么裸着逃走了。
 

おしまい

完 

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