关键字: 近江国(おうみのくに) 余呉湖(よごのうみ) 伊香刀美(いかとみ)
むかし近江国の余呉湖という湖水に近い寂しい村に、伊香刀美という漁師が住んでおりました。 ある晴れた春の朝でした。 伊香刀美はいつものように漁の支度をして、湖水の方へ下りて行こうとしました。 その途中、山の上に差し掛かりますと、今までからりと晴れ上がって明るかった青空が、ふと曇って、そこらが薄ぼんやりしてきました。 「おや、雲が出たのか。」と思って、仰向いて見ますと、ちょうど伊香刀美の頭の上の空に、白い雲のようなものがぽっつり見えて、それがだんだんと広がって、大きくなって、今にも頭の上におちかかるほどになりました。 伊香刀美は不思議に思って、「何だろう、雲にしてはおかしいなあ。」と独り言をいいながら、じっと白いものを見つめていますと、それは伊香刀美の頭の上をすうっと流れるように通りすぎて、だんだん下へ下へと、余呉湖の方へと下って行きます。
过去在近江国叫余吴湖的湖附近有一个寂静的村庄,住着一个叫伊香刀美的渔夫。 某个晴朗的春天的早上。 伊香刀美像平常一样捕鱼,往湖的下划去。 途中,临近山时,一直晴着的蓝天一下子被云彩笼罩,模糊了起来。 “啊,云彩出来了啊。”这样想,向上仰望,正好在伊香刀美的头上的天空,看起来白白的云彩样的东西渐渐变大,变得像要落下来一样。 伊香刀美觉得很不可思议,自言自语着:“这是什么,好怪的云彩啊。”直盯着看,忽的一下从头上流过,一点点向下,往余吴湖的方向过去了。