DEARS 花言葉物語 青の季節
ナビゲーターは冬の妖精プリムラ(樱草、报春(属))です。 ここからは、僕が冬の誕生花12月の「スイセン」(水仙)/ 1月の「スノードロップ」(雪花莲)/ 2月の「ヒヤシンス」(风信子、洋水仙)について、お話をしていきますね。  まずは12月の誕生花、スイセンから、伊豆半島や越前岬(えちぜんみさき)、淡路島などに群生しているスイセンのことを日本スイセンと呼んでいますと。そんな風に呼ぶと、なんだか日本に自生しているお花みたいですよね。でもこれは室町時代以前に中国経由で伝えられたものが、野生化したんだって考えられているんですよ。スイセンの学名ナルキッソス( Narcissus)は、ギリシア語で麻痺させる、もしくは、眠らせるという意味のナルケ(narse)に由来しています。スイセンの匂いには麻痺の効果があるとされていたらしいんです。また、スイセンの球根には毒があり、腹痛や嘔吐を引き起こすんだそうですよ。ちょっと怖いですね。スイセンの花言葉は、「自己愛(じこ‐あい)」や「自惚れ」です。そんな水仙の花言葉にぴったりの物語があるので、これからそれをご紹介していきますね。  昔々、ある所に、ナルシスというそれは美しい青年がいました。ナルシスは美青年でしたので、たくさんの女性が彼に恋をしたのです。大好きと囁いたり、花の冠を贈ったり、珍しい宝石を送ったり、女性たちはなんとかナルシスに振り向いてもらおうと頑張りましたが、ナルシスは誰の気持ちにも答えようとしません。そこで、ナルシスに相手にされなかった女性たちは、女神ヘラにこう頼みました。「どうかナルシスに誰かを愛するということを教えてやってください。どんなに愛しても、答えてもらえない苦しみを味わわせたいんです。」すると、ヘラはその願いを叶えてくれました。そうとは知らないナルシスは暢気に泉の辺(ほとり)を歩いています。その時、泉の水は冷たく透き通っていました。喉が渇いたナルシスは、屈み込んで、水を掬おうとしたのです。すると、水の中に驚くほど美しい若者がいました。「あ、なんて美しい人なんだ。」泉を覗き込み、ナルシスが微笑をかけると、泉の中の若者も笑顔になります。ナルシスが手を差し伸べると泉の中の若者も手を伸ばしてきます。けれど、ナルシスが水面(みなも)に触れる途端、若者の姿は掻き消えたのです。「頼む、もう一度姿を見せて(おくれ?)。」ナルシスがそういうと、また若者が水面に現れたのです。ナルシスはその若者を見つめ続けました。そう、ナルシスは水に映った自分の姿に恋をしてしまったのです。その姿はあまりにも美しかったため、ナルシスは食べることも、飲むことも忘れ、水面に映る自分自身を見続け、微笑み続け、囁きかけ続けました。そうしてとうとう、ナルシスは衰弱して、死んでしまったのです。ナルシスの死後、岸辺に一輪の花がひっそりと咲いていました。その花は水に映る自分の姿を覗き込んでいたのです。そこで皆は、その花がナルシスの生まれ変わりなんだと思いました。その花こそ、スイセンなのです。ナルシスとスイセンのお話、どうでしたか。