日语文学作品赏析《注文の多い料理店》
「ぜんたい、ここらの山は
「
それはだいぶの山奥でした。案内してきた専門の鉄砲打ちも、ちょっとまごついて、どこかへ行ってしまったくらいの山奥でした。
それに、あんまり山が
「じつにぼくは、二千四百円の損害だ」と一人の紳士が、その犬の
「ぼくは二千八百円の損害だ。」と、もひとりが、くやしそうに、あたまをまげて言いました。
はじめの紳士は、すこし顔いろを悪くして、じっと、もひとりの紳士の、顔つきを見ながら云いました。
「ぼくはもう
「さあ、ぼくもちょうど寒くはなったし腹は
「そいじゃ、これで切りあげよう。なあに戻りに、
「
ところがどうも困ったことは、どっちへ行けば戻れるのか、いっこうに見当がつかなくなっていました。
風がどうと
「どうも腹が空いた。さっきから横っ腹が痛くてたまらないんだ。」
「ぼくもそうだ。もうあんまりあるきたくないな。」
「あるきたくないよ。ああ困ったなあ、何かたべたいなあ。」
「
二人の紳士は、ざわざわ鳴るすすきの中で、こんなことを云いました。
その時ふとうしろを見ますと、立派な
そして
西洋料理店
WILDCAT HOUSE
山猫軒
「君、ちょうどいい。ここはこれでなかなか開けてるんだ。入ろうじゃないか」
「おや、こんなとこにおかしいね。しかしとにかく何か食事ができるんだろう」
「もちろんできるさ。看板にそう書いてあるじゃないか」
「はいろうじゃないか。ぼくはもう何か喰べたくて倒れそうなんだ。」
二人は玄関に立ちました。玄関は白い
そして
「こいつはどうだ、やっぱり世の中はうまくできてるねえ、きょう一日なんぎしたけれど、こんどはこんないいこともある。このうちは料理店だけれどもただでご
「どうもそうらしい。決してご遠慮はありませんというのはその意味だ。」
二人は戸を
「君、ぼくらは大歓迎にあたっているのだ。」
「ぼくらは両方兼ねてるから」
ずんずん廊下を進んで行きますと、こんどは水いろのペンキ
「どうも変な
「これはロシア式だ。寒いとこや山の中はみんなこうさ。」
そして二人はその扉をあけようとしますと、上に黄いろな字でこう書いてありました。
「それあそうだ。見たまえ、東京の大きな料理屋だって大通りにはすくないだろう」
二人は云いながら、その扉をあけました。するとその裏側に、
「うん、これはきっと注文があまり多くて
「そうだろう。早くどこか
「そしてテーブルに
ところがどうもうるさいことは、また扉が一つありました。そしてそのわきに鏡がかかって、その下には長い
扉には赤い字で、
の
「これはどうも
「作法の厳しい家だ。きっとよほど
そこで二人は、きれいに髪をけずって、
そしたら、どうです。ブラシを板の上に置くや
二人はびっくりして、
扉の内側に、また変なことが書いてありました。
「なるほど、鉄砲を持ってものを食うという法はない。」
「いや、よほど偉いひとが始終来ているんだ。」
二人は鉄砲をはずし、帯皮を解いて、それを台の上に置きました。
また黒い扉がありました。
「仕方ない、とろう。たしかによっぽどえらいひとなんだ。奥に来ているのは」
二人は帽子とオーバーコートを
扉の裏側には、
ことに
「ははあ、何かの料理に電気をつかうと見えるね。
「そうだろう。して見ると
「どうもそうらしい。」
「そうだ。きっと。」
二人はめがねをはずしたり、カフスボタンをとったり、みんな金庫のなかに入れて、ぱちんと
すこし行きますとまた
「クリームをぬれというのはどういうんだ。」
「これはね、外がひじょうに寒いだろう。
二人は壺のクリームを、顔に塗って手に塗ってそれから靴下をぬいで足に塗りました。それでもまだ残っていましたから、それは二人ともめいめいこっそり顔へ塗るふりをしながら喰べました。
それから大急ぎで扉をあけますと、その裏側には、
「そうそう、ぼくは耳には塗らなかった。あぶなく耳にひびを切らすとこだった。ここの主人はじつに用意
「ああ、細かいとこまでよく気がつくよ。ところでぼくは早く何か喰べたいんだが、どうも斯うどこまでも廊下じゃ仕方ないね。」
するとすぐその前に次の戸がありました。
十五分とお待たせはいたしません。
すぐたべられます。
早くあなたの頭に
二人はその香水を、頭へぱちゃぱちゃ振りかけました。
ところがその香水は、どうも
「この香水はへんに酢くさい。どうしたんだろう。」
「まちがえたんだ。下女が
二人は扉をあけて中にはいりました。
扉の裏側には、大きな字で斯う書いてありました。
もうこれだけです。どうかからだ中に、壺の中の塩をたくさん
よくもみ込んでください。」
「どうもおかしいぜ。」
「ぼくもおかしいとおもう。」
「
「だからさ、西洋料理店というのは、ぼくの考えるところでは、西洋料理を、来た人にたべさせるのではなくて、来た人を西洋料理にして、食べてやる
「その、ぼ、ぼくらが、……うわあ。」がたがたがたがたふるえだして、もうものが言えませんでした。
「
奥の方にはまだ一枚扉があって、大きなかぎ穴が二つつき、銀いろのホークとナイフの形が切りだしてあって、
大へん結構にできました。
さあさあおなかにおはいりください。」
「うわあ。」がたがたがたがた。
「うわあ。」がたがたがたがた。
ふたりは泣き出しました。
すると戸の中では、こそこそこんなことを云っています。
「だめだよ。もう気がついたよ。塩をもみこまないようだよ。」
「あたりまえさ。親分の書きようがまずいんだ。あすこへ、いろいろ注文が多くてうるさかったでしょう、お気の毒でしたなんて、
「どっちでもいいよ。どうせぼくらには、骨も分けて
「それはそうだ。けれどももしここへあいつらがはいって来なかったら、それはぼくらの責任だぜ。」
「呼ぼうか、呼ぼう。おい、お客さん方、早くいらっしゃい。いらっしゃい。いらっしゃい。お
「へい、いらっしゃい、いらっしゃい。それともサラドはお
二人はあんまり心を痛めたために、顔がまるでくしゃくしゃの
中ではふっふっとわらってまた
「いらっしゃい、いらっしゃい。そんなに泣いては
「早くいらっしゃい。親方がもうナフキンをかけて、ナイフをもって、舌なめずりして、お客さま方を待っていられます。」
二人は泣いて泣いて泣いて泣いて泣きました。
そのときうしろからいきなり、
「わん、わん、ぐゎあ。」という声がして、あの
「わん。」と高く
その扉の向うのまっくらやみのなかで、
「にゃあお、くゎあ、ごろごろ。」という声がして、それからがさがさ鳴りました。
室はけむりのように消え、二人は寒さにぶるぶるふるえて、草の中に立っていました。
見ると、上着や
犬がふうとうなって
そしてうしろからは、
「
二人は
「おおい、おおい、ここだぞ、早く来い。」と叫びました。
そこで二人はやっと安心しました。
そして猟師のもってきた
しかし、さっき一ぺん紙くずのようになった二人の顔だけは、東京に帰っても、お湯にはいっても、もうもとのとおりになおりませんでした。
声明:本文内容均来自青空文库,仅供学习使用。"沪江网"高度重视知识产权保护。当如发现本网站发布的信息包含有侵犯其著作权的内容时,请联系我们,我们将依法采取措施移除相关内容或屏蔽相关链接。