最近になって日本銀行が発表した統計によると、2017年の日本の電子マネーによる決済金額が5兆1994億円だったそうだ。問題なのは、世界では、電子マネーによる決済が爆発的に増えているにもかかわらず、日本の伸び率は前年と比較してわずか1.1%しかなかったことだ。

根据日本银行最新公布的统计数据显示,2017年日本的电子支付金额达到5兆1994亿日元。然而在全球电子支付呈井喷式增长的趋势下,日本的增长率较上年只增加了1.1%。

集計開始以来9年連続の伸びだが、実は2016年、2017年とほぼ横ばい。ほとんど拡大していない。Suica(スイカ)など交通系5社とEdy(エディ)、WAON(ワオン)、nanaco(ナナコ)の8社の合計額で、電車などの利用分は差し引いてあるという条件付きだが、それにしても世界の趨勢とは大きくかけ離れている。

虽然总金额已实现连续9年增长,但实际与2016年、2017年基本持平。并没有大幅增长。Suica等5个交通部门公司和Edy、WAON、nanaco加起来,8个公司的合计金额扣除电车等部分,与世界的发展趋势还相差甚远。

たとえば、モバイル決済の世界市場予測は2020年の段階で3.8兆ドル(約400兆円)というデータが、経済産業省のレポートから出ている。2017年が1.2兆ドル程度であることを考えると、今後の3年で3倍に増えると予想されている。

例如,经济产业省的报告显示,预计2020年移动支付的世界市场额是3.8兆美元(约400兆日元)。考虑到2017年已经达到了1.2兆美元,所以预估今后3年还会增加3倍。

一方、日本の現金の流通量が、ここに来て世界に突出して増えていることをご存じだろうか。日本銀行が1年前の2月に発表したデータによると、紙幣や小銭を合計した現金流通高に対する名目GDP(国内総生産)比率では19.4%に達する。日本の名目GDPは550兆円ぐらいだから、110兆円ぐらいの現金が流通していることになる。実際に、2017年末時点で流通しているお札の額は106兆7000億円(日本銀行調べ)になる。

另一方面,大家应该知道日本现金流通量的增长在世界范围内都是非常突出的。据日本银行在1年前的2月份公布的数据显示,纸币和硬币合计的现金流通量达到了名义GDP(国内生产总值)的19.4 %。日本的名义GDP大约为550兆日元左右,也就是说有110兆日元左右的流通现金。实际上,2017年末流通的纸币金额是106兆7000亿日元(数据由日本银行调查提供)。

これを他の先進国と比較してみると、ユーロ圏では10.6%、米国は7.9%、英国に至っては3.7%しかない。日本は突出して、現金が流通している国と言っていいわけだ。言い換えれば、クレジットカードや小切手、プリペイドカード、電子マネーといった「キャッシュレス決済」が浸透していないことを意味している。

与其他发达国家相比,欧元区是10.6%,美国是7.9%,而英国甚至只有3.7 %。日本可以说是一个非常突出的现金流通国家。换句话说,信用卡、支票、预付卡、电子支付等“无现金结算”并没有渗透日本。

実際、世界の潮流は「キャッシュレス化」だ。電子マネーやクレジットカード、仮想通貨などの普及によって、キャッシュレス化がすさまじい勢いで進んでいる。とりわけ、中国やインドなどの人口の多い地域で爆発的にキャッシュレス化が進んでいる。

实际上,目前世界的潮流是“无现金化”。随着电子支付、信用卡、虚拟货币等的普及,无现金化正在迅猛发展。特别是在中国和印度等人口众多的地区,无现金化的发展进程呈爆发性增长。

IT技術と金融が融合した「フィンテック」が進行する中で、世界はいまや現金なしでの生活が当たり前になりつつある国や地域が増えているのだ。

在由IT技术和金融相结合的“fintech”发展的过程中,世界上越来越多的国家和地区理所当然地生活在无现金的环境下。

フィンテックというのは、Finance(金融)とTechnology(技術)を組み合わせた新しい造語だが、いま世界はフィンテックに加えてAI(人工知能)技術、ロボテック技術などを組み合わせて、画期的な決済システムが導入されて現金なしでの生活が実現しようとしている。

所谓的fintech是由Finance(金融)和Technology(技术)组合而成的新词,现在世界各国将fintech与AI(人工智能)技术,机器人技术等相结合,试图引入具有划时代意义的结算系统,实现无现金的生活。

現実に、スウェーデンのキャッシュ比率はわずか2%しかない。現金による買い物なども日常的に存在しないレベルになりつつある。スウェーデンが、ほぼ完璧に近いキャッシュレス化を実現している背景には、銀行が連合を組んで構築したモバイル決済サービス「スウィッシュ」がある。銀行口座と携帯電話の番号だけで個人認証をする技術が使われている。

现实中,瑞典的现金比率只有2%。现金购物等也慢慢消失于日常生活中。在瑞典实现近乎完美的无现金化背景中,有与银行合作展开的移动支付服务“swish”。使用了将银行账户和手机号码进行个人认证的技术。

キャッシュレス化が急速に進行する最大の理由は、「ビジネスの効率化」と言っていいだろう。現金の受け渡しといった煩雑な作業から解放される。

无现金化急速发展的最大原因应该是“商业的效率化”。它将人们从现金管理等繁杂的工作中解放出来。

たとえば、2015年の「BIS(国際決済銀行)」のデータによれば、日本の1人当たりの年間カード決済額は4000ドルにも満たない。トップの米国(1万7000ドル超)の3分の1程度に過ぎない。日本の産業界全体の非効率化が叫ばれている中で、政府も本気を出してキャッシュレス化を推進しないと、日本はこの分野でも後れを取るのかもしれない。

例如,根据2015年“BIS(国际清算银行)”的数据显示,日本每人每年的信用卡结算额还不到4000美元。不过是位于首位的美国(1万7000美元)的三分之一左右。在高呼日本产业界整体非效率化的情况下,政府如果也不认真推进无现金化的发展,日本日后可能在这个领域也会落后。

実際、日本のキャッシュレス決済率の低さを示すデータを見ると大きなインパクトがある。

实际上,从日本如此低的无现金结算率数据中可以看到其中会产生巨大的冲击。

ちなみに、キャッシュレス決済比率の2016年の最新値では23.6%と増えているものの、2017年6月に閣議決定された「未来投資戦略2017――Society5.0の実現に向けた改革――」では、今後2027年6月までの10年間でキャッシュレス決済比率を4割程度に目指すことを決めている。

虽然2016年的无现金结算比率的最新值增加到23.6%,但在2017年6月被内阁会议决定的“未来投资战略2017――面向Society5.0的改革――”中指出到2027年6月为止,10年的无现金结算比率目标为4成左右。

政府も重い腰を上げて現金流通からキャッシュレス化の推進に舵を切った、と言っていいのかもしれないが、10年で4割ということは10年を経過しても中国や韓国、米国に追いつけないことを意味している。

政府也已经行动起来推进从现金流通向无现金化的转变。但是,10年4成的比例意味着即使再经过10年也无法赶超中国、韩国、美国。

日本はなぜ現金流通にこだわるのか。日本には偽札も少ないし、現金を持ち歩く際も海外ほどのリスクはない。長年にわたって、現金流通が便利で、楽だったわけだ。とはいえ、現在は昭和ではなく、平成であり、その平成も間もなく終わろうとしている。

为什么日本如此执着于现金流通呢?因为日本的假钞很少,携带现金时不像在海外一样有那么多的风险。 多年来,现金流通既方便又容易。 然而,现在已经不是昭和年代了,而是平成年代,就连平成年代也即将结束。

近年、急速に電子マネーが普及しつつある中国やインドでは、スマホの大流行によって電子マネーなどが急速に発展したことはよく知られている。飲食店やスーパー、レンタルサイクルにある「QRコード」に、自分のスマホをかざすだけで、瞬時に本人の銀行口座からダイレクトにマネーが引き落とされる仕組みが定着しつつある。

大家都知道近年来,由于智能手机的普及,电子支付在中国和印度急速发展。 只需用智能手机扫一扫餐厅、超市、共享单车上的“QR码”就可以马上从本人的银行账户中扣除资金。

現在、中国にはアリババの「Alipay(アリペイ)」、テンセントの「WeChat Pay(ウィチャットペイ)」が「QRコード」を使った決済システムを展開しており、急速にそのユーザー数を増やしている。中国のスマホ人口は7億人とも言われているが、都市部での普及率は100%に近いとさえ言われる。誰もが保有しているスマホだからこそ、キャッシュレス化があっという間に定着したともいえる。

现在在中国,阿里巴巴的“支付宝(Alipay)”和腾讯的“微信支付(WeChat Pay)”都使用“QR码”设立了支付系统,用户数量迅猛增加。 虽说中国使用智能手机的人口只有7亿,但据说城市的普及率已接近100%。 因为每个人都拥有智能手机,所以非现金化可以迅速成为现实。

周知のように、技術的には通販大手の「アマゾン」がはじめたレジのないコンビニ「アマゾンゴー(Amazon GO)」が、米国で実験店舗を展開しており、その技術力の高さが評価されている。日本に進出してくるのも時間の問題だろう。

众所周知,大型公司“亚马逊”开设的无收银便利店“亚马逊GO”已经在美国开设了实验店铺,其技术能力得到了很高的评价。 进入日本也只是时间问题。

現金流通が主流の経済と電子マネーやクレジットカードが主流の経済とでは、何が異なるのだろうか。

以现金流通为主流经济和与电子支付、信用卡为主流经济有什么不同呢?

まずは、銀行のATMは不要になり、コンビニのATMも不要になる。銀行も、店舗の中に巨大な金庫をつくる必要がなくなり、セキュリティーの度合いも格段に高くなる。米国の経済学者「ケネス・S・ロゴフ」は、著書『現金の呪い――紙幣をいつ廃止するか』の中で、現金は地下経済の決済手段として機能しており、地下経済増殖の元凶になっている。さらに、世界的に現金の流通が増えたことで貧困が増えており、格差社会の進行に拍車をかけている存在として、高額紙幣の廃止を訴えている。

首先,银行的ATM变得不再必要了,便利店的ATM也变得不再必要了。不管是银行还是店铺里都不需要再设立一个巨大的金库,安全程度会变的更高。 美国经济学家Kenneth S. Rogoff在他的著书“现金的诅咒 - 纸币什么时候退出”中表示,现金作为地下经济的结算方式,成为增加地下经济的元凶。 此外,随着全球范围内现金流通的增加,贫困现象也会增加,作为推动社会分化的存在,他呼吁废除高额纸币。

インドは、同氏の提案をそのまま実行して当初は混乱したものの結果的に地下経済を封じ込め、電子決済を飛躍的に増やすことに成功しつつある。

印度通过实行他的提案封锁了当初混乱的地下经济,成功增加了电子结算。

さらに、注目したいのは中央銀行が現金を印刷する必要がなくなることだ。1万円札1枚を印刷するのにかかるコストは22円程度かかるそうだが、その額も馬鹿にできないし、500円硬貨などコインの鋳造コストはもっと高い。

另外,值得注意的是中央银行认为印刷现金变得不再重要。 印1张1万日元纸币的费用约为22日元,这个数额也不容小觑,500日元等硬币的铸造成本更高。

そもそも現金決済には無駄が多すぎる。現在、日本企業の製造現場はミリ単位の合理化を延々と続けているが、その一方で経理などのバックヤードは、相変わらず昭和時代の非効率なビジネススタイルを守っている。給与の支払いや取引先への支払い、海外送金をはじめとして、仕事のスタイルそのものを変えていこうとしない。

这样说起来现金结算实在是很浪费。目前,日本企业的制造现场强调以毫秒为单位的合理化,而经营管理等后勤工作却依旧像昭和时代一样保持着一种低效的商业模式。 大家并没有想改变这种工作方式,包括支付工资,支付客户货款,海外汇款等。

送金手数料なども、コストの高い全銀ネットに代わるものが次々に出てきているが普及に時間がかかっている。仮想通貨を使った国際間の送金システムなどは、まだ法律も整備されていない。三菱UFJフィナンシャル・グループが進める「MUFGコイン」や、みずほフィナンシャルグループが推進する「Jコイン」などが、今後稼働を始めれば日本経済にも大きなインパクトを与えるかもしれない。

代替汇款手续费和高额的全国银行资金结算网络的新新事物已经在不断出现,但还需要一定时间的传播。使用虚拟货币在国际间进行汇款的系统,目前在法律方面还并未完善。 三菱UFJ推出的“MUFG COIN”和瑞穗推出的“J coin”等可能会在不久的将来开始使用,而此举或许也会对日本经济产生重大影响。

ブロックチェーンによる個人情報管理などの推進が進めば、日本の非効率的な行政サービスも、飛躍的に改善されるはずだ。こうした個人情報の新管理システムの構築化は、現金流通の進捗具合と大きく関係している。

如果利用区块链促进个人信息管理等的进展,日本低效率的行政服务应该可以得到显著改善。 建立这样一个新的个人信息管理系统,与现金流通的进展息息相关。

現金の計算や管理に惑わされなくなれば、官民ともに膨大な計算事務からも自然に解放されるはずだ。

如果你没有被现金的计算和管理所诱惑,那么你自然而然就会从政府和民间巨大的计算事务中解放出来。

問題は、これだけキャッシュレス決済が進行している海外と比較して、なぜ日本ではキャッシュレス化が遅れるのか。その理由は、銀行の経営基盤にかかわる事情があるからだ。周知のように、日本にはATMが街のあちこちにあって、気軽に現金を引き出すことが可能だ。昭和の時代には超便利になったと思ったものの、考えてみれば預金者は、1日の大半の時間は1回あたり108円~216円のATM手数料を払いながら、自分のおカネを引き出している。

问题是,与无现金化发展迅猛的海外相比为什么日本会推迟? 原因与银行经营基础的情况相关。 众所周知,日本的ATM遍布大街小巷,可以轻松提取现金。 虽然比昭和时代便利许多,但仔细想想会发现储户每天都需支付108~216日元的手续费才能取出自己的钱。

言い換えれば、日本の銀行の経営基盤には、このATM手数料が重くのしかかっている。日銀もそれを理解していて、韓国や中国のような急速なキャッシュレス社会のインフラ整備には手を付けられない。

换句话说,日本银行的经营基础中这种ATM的费用占了很大比例。 日本银行也明白这一点,所以不能像韩国和中国这样快速实现无现金社会的基础设施发展。

実際に、地方銀行の平均的な純利益の額は約147億円(2016年3月期)だが、その約13%はATM手数料で稼ぎ出している。ちなみに、ATM手数料だけで利益を稼いでいるセブン銀行では、純利益261億円のうちの99%をATM手数料で稼いでいる。

实际上,地方银行的平均净收入约为147亿日元(截至2016年3月),其中约13%来自ATM的手续费。 Seven Bank 的净利润261亿日元中仅凭借ATM赚取的就占净利润的99%。

最近になって、メガバンクや地方銀行が相次いでATM手数料や両替手数料の値上げに踏み切っているが、アベノミクスによる大規模緩和やマイナス金利政策の影響で、収益構造の見直しが迫られている。ATMなどの手数料収入ぐらいしか収益拡大の手段がないのかもしれない。

最近,大型银行和区域性银行正在逐步提高ATM佣金和汇兑价格,但由于安倍经济学而产生的大规模缓和和负利率政策的影响,使我们必须重新考虑收入结构。 可能只有利用增加ATM等手续费这一手段了。

安易にキャッシュレス化を進めてしまうと、銀行経営の悪化に直結する可能性が高い。マイナス金利や大規模緩和で経営基盤が揺らいでいるところに、キャッシュレス社会への移行を急ぐわけにはいかないわけだ。フィンテックの進展によって、2025年までに銀行の収益が最高で4%喪失するという予測も経産省のレポートで発表されている。

如果使无现金化得到过于轻松的推广,很可能会直接导致银行管理恶化。 利用负利率和大规模缓和防止经营基础的动摇,会减速无现金社会的发展。 根据fintech的进展,经产省预测到2025年银行的利润将最高丧失4%。

とはいえ、2020年の東京五輪にはキャッシュレスに慣れた外国人観光客がどっと押し寄せる。その時点で、日本がいまだに現金流通主体の社会であることが知られてしまうわけだ。いずれにしてもキャッシュ率2%といったスウェーデンのようになるには、まだ何十年とかかりそうだ。

尽管如此,习惯于无现金的外国游客将会在2020年东京奥运会纷至沓来。 到那时,日本仍然会是一个以现金流通为主体的社会。 无论怎样,日本还需要几十年时间才能像瑞典那样实现现金率2%。

そんな認識すら、企業経営のトップにさえ浸透していないのかもしれない。とは言え、いまこの時期に仮想通貨市場に進出しようという企業は、少なくともキャッシュレス社会の未来が見えていることは間違いないだろう。

甚至连这样的认识也可能不会渗透到企业经营的顶层。 尽管如此,在现在这个时期即将进入虚拟货币市场的公司,毫无疑问至少可以看到无现金社会的未来。

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