三等奖

「中日友好若者の視点から

張典(大連外国語大学)

私の携帯電話にはちょっと変わった折り鶴の写真が入っている。その鶴の右側の翼には中国の国旗、左側の翼には日本の国旗が描かれている。この写真は去年の11月に日本の徳島県の阿波踊り会館で撮ったものだ。中日友好の願いを表して、本当に素晴らしいものだと思う。

私は去年の11月、スピーチコンテストで入賞して、徳島県で短期研修する機会をいただいた。研修の最後の日、阿波踊り会館で送別会が開かれ、「千羽鶴を折る」という活動が行われた。一人で十羽の鶴を折れば、百人だったら、千羽鶴になる。中国人の留学生、日本人の大学生や先生方などたくさんの人が参加した。ホールの一角に、中国で縁起がよい色とされる赤のリボンを張り、みんなが一つひとつ、自ら折った鶴を吊していった。

日本の「千羽鶴」は、元々は長寿や病気回復のために作って、入院者への贈り物などで用いられた。今は大きな願い事を叶えるための願掛けの一種となっている。中国にも「千纸鹤」という贈り物がある。心を込めて折鶴を折って、願いを伝える点は全く同じである。

中国でも日本でも、相手に対する同じ思いを同じものに込める。今も、私の心には折り鶴に込めた「中国と日本の友好」への思いがある。そして両国の人々が折鶴に込めた思いが通じ合ってより大きな鶴となって羽ばたいてほしいと思う。

「心は誰にも見えないけれど、心遣いは見える。思いは見えないけれど、思いやりは誰にでも見える」

この詩は、私が二年生の時、先生が授業で紹介してくれた宮澤章二さんという人の書いたものだ。この詩を読んで私は感銘を受けると同時にちょっと心配になった事がある。それは、中日両国で、思いやりの心は共通していても思いやりの表し方に違いがあり、その違いのせいで「思いやりの心」が見えなくなってしまい、誤解が生まれているのではないだろうかということだ。 

その誤解を解き、中日両国の思いが伝わるようにすることが私たち若者の役割なのだと私は思う。もしそれができれば、両国の絆は深まり、中日友好の道に繋がるはずだ。 

以前、日本人の友人と映画を見る約束をしていたのに、突然、前日に電話で急に用事ができたと言われたことがある。その時、私は深く考えずに「何の用事?」と聞いてしまった。彼女はちょっと困ったような声で「ちょっと用事があって…」とだけ言い、その日の会話は終った。数日後、彼女によく聞いてみると日本人は、誘いを断る時などに「ちょっと用事があって…」と言い、それを聞いたら「そうですか、残念ですね。また今度」と答えるのが普通だということが分かった。私たち中国人は、何かを断る時、どんな事情があるのか説明しないと、誠意がない、私のことを大事に思っていない、という意味にとってしまうことが多い。相手のことを大事に思っているからこそ、中国人は「何の用事」かと聞くのだ。だが、本気でその「用事」の、詳しい説明を求めているわけではない。「もし、相手が困っているなら力になりたい」という思いやりが、この「何の用事」という言葉に含まれている。しかし、日本人がどんな用事かと聞かないのは、相手のプライバシーを守り、相手を困らせないための心遣いによるものだそうだ。つまり、理由を聞かないことが、日本人なりの思いやりの形なのだ。

結局、「何の用事」と聞くのも、聞かないのも、どちらも相手のことを思っての行動なのだ。実は中日両国の間でこんな例は少なくないと思う。たとえ行動に表した時に違いがあっても、その背景に同じ思いやりの気持ちがあることを知れば、お互いの交流も、より円滑に進むはずだ。そのためには、違う行動を取る背景を、両国の人々に理解してもらうことが必要だ。

今も、私はあの折鶴を折った日の思い出を大切にしている。多くの人々の折り鶴を折った思いが日本から中国へ、中国から日本へ誤解を乗り越えて伝わって欲しいと思う。私自身も徳島県でお世話になった方々の「心遣い」や「思いやり」を中国の人たちに伝えて行きたいと思っている。 

今の私は、大学院の一年生として、日本語言語学を専攻している。将来日本語教師になるつもりだ。自分の学んだ日本語、体験した日本文化、出会った日本人のことを中国人に伝え、中国の伝統や文化などを日本人に伝える、本当の日本、そして本当の中国を伝える「伝道師」のような教師になりたいと考えている。私にできることはわずかだが、長い年月を経て中日両国の間に形成されてしまった誤解や偏見を、少しでも解き両国の人々の思い伝える仕事をして行くつもりである。

一人で十羽の鶴を折れば、百人だったら、千羽鶴になる。これからの中日友好の未来を背負う私たち若者一人一人の役割は、「心遣いが見える」「思いやりが見える」、お互いの姿を正しく理解し合える、そんな中日友好というゴールに向かって、努力していくことではないだろうか。

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