「日本人は、困っている人を助けるやさしい国民だ」——こういった主張はときどき聞こえてくるが、はたして本当なのだろうか? 新刊『やさしくない国ニッポンの政治経済学』から、様々なアンケート結果から見えた「日本人のやさしさ」について、一部編集のうえで紹介しよう。

“日本人是乐于助人的国民”——我们经常听到这种说法,这种看法真实吗?新书《冷漠国家日本的政治经济学》中做了问卷调查,从中我们来选取一些结果向大家说明一下“日本人的温柔之处”。

日本人は他人を助けない?

日本人不会帮助他人?

海外に住んでもう10年以上経つので、外国人の知り合いから日本旅行のエピソードを聞かせてもらった経験がそれなりにある。概して日本はキレイで、現代と伝統のバランスがとれているなどと言われるから、こちらとしても誇らしい気分になる。

笔者曾经在国外生活了十年多,也从很多外国人口中听过他们到日本旅行的故事。大概就是说日本非常干净,是一个现代和传统的平衡感很棒的国家,这一点的确值得骄傲。

中でもよく耳にするのが、日本では落とした財布が返ってくる、というものだ。本当に財布を落としたのか、都市伝説的な噂話をこちらの気分をよくするために言っているのかは定かでないが、かなり多くの友人から聞いたことがある。

此外,还经常听到的故事就是如果在日本丢了钱包是可以找回来的。究竟是他们真的丢过钱包?还是像都市传说一样只是让我们感到开心的道听途说?这些尚未有定论,但的确有很多外国朋友曾经这么说过。

他にも日本について美談を聞くことは多く、「アメリカと違って、震災や災害のあとに暴動や略奪が起きない」、「ボランティアが多く、人助けの精神が残っている」などは典型的なものだ。こうした話は、日本人の多くも耳にしたことがあるのではないだろうか。

此外还有很多赞赏日本的说法,比较典型的就是“地震灾害后不会引发暴动和掠夺,这一点和美国不同”“有很多志愿者,十分乐于助人”。这些话想必很多日本人也听到过。

だが、日本人の意識調査や行動動態の変遷を研究している私からすれば、こうした美談には違和感を覚えてしまう。本当に日本人は困っている人を助けるやさしい国民なのか?——残念ながら、答えは否だ。

然而,这些称赞在研究日本人意识调查和行为方式变迁的笔者听来,多少有些违和。日本人真的是乐于助人的温柔国民吗?非常遗憾,答案是否定的。

例えば、先述した2019年の「世界人助け指数」によれば、「人助け」の項目で126ヵ国中、日本は最下位。「寄付」の項目では64位、「ボランティア」の項目では46位となっている。こうした調査によれば、日本はどうやら「他人にやさしくない国」らしい。

举个例子,在书中曾提到的2019年世界“助人为乐指数”中,“帮助他人”项目中,日本在126个国家中排名最末。“捐赠”项目中日本排名64,“志愿者”项目中排名46。从这些调查结果中我们感到,日本似乎更像是一个“冷漠的国家”。

こうした自分の信念とは違う話や事実を突きつけられると反論したくなるのが人の常で、私もいろいろ反論を考えてみたくなる。例えば、考えられる一つの反論は、この調査団体の標本が一般的な日本人ではなく、たまたま「極端に他人にやさしくない日本人」を対象にした可能性があるのではないか、というものだろう。

一旦提出和自己观念不同的言论或事实,就经常会有人站出来反驳,笔者也思考过几个反驳的论点,例如,有没有可能该调查团体取样时没有邀请普通的日本人,而是偶然让“极端冷漠的日本人”成为了调查样本。

しかし、残念ながら、こうした「他人にやさしくない日本」像は、他の多くの調査(異なる標本抽出法、異なる年次)でも一貫して見られるのだ。少し古いが、2007年のアメリカのピュー・リサーチ・センター(Pew Research Center)の調査では、「政府は貧しい人々の面倒を見るべき」という項目に「同意する」と答えた日本人は、調査対象の47ヵ国中、最低の59%だった。

遗憾的是,在很多其它的调查中(不同的取样方法和年份)也得出了“冷漠的日本”这一结论。来看一个较早的数据,在2007年美国皮尤研究中心的调查中,只有59%的日本人选择了“同意政府应该扶持贫困人群”,这在47个调查国家中排名最末。

スペインが最高の96%で、ヨーロッパで日本とよく比較されるドイツでも、92%の人が「政府は貧しい人々の面倒を見るべき」だと答えている。日本人の4割は、自分自身が助けないだけでなく、政府も「他の困っている日本人を助けるべきではない」と考えているのだ。

该调查中,西班牙排名最高,96%的人选择同意。日本人最爱比较的欧洲国家德国中也有92%的人认为“政府应该扶持贫困人群”。而四成的日本人不仅自己不会帮助他人,也认为政府“不应该扶持困难人群”。

「見知らぬ人」にやさしくない

对“陌生人”很冷漠

これでも納得しない人がいるかもしれない。例えば、日本人は「他の国と違う人助けをしている」可能性が考えられるだろう。

即便如此,恐怕也有人不同意。再比如日本人可能在用“与其他国家不同的方式帮助别人”这一想法。

確かに、「世界人助け指数」が元にしている質問の一つに「チャリティーに寄付したことがあるか」というものがあるが、チャリティーが盛んなアメリカなどと違って、多くの日本人はあまりチャリティーになじみがないかもしれない。

的确,在世界“助人为乐指数”中有一个问题是“是否参与过公益捐赠活动”,这一点上,与公益盛行的美国不同,很多日本人可能并不熟悉公益捐赠。

もう一つの質問に「困っている見知らぬ人、あるいはまったく知らない他人を助けたことがあるか」というものもあるが、もしかすると日本人は、見知らぬ人ではなく、家族や友人、地域の住民など、知り合いしか助けない「内輪にやさしい国民」なのかもしれない。

还有一个问题是“是否帮助过身处困难的陌生人”,这一点上,日本人可能是个“对自己人温柔”的国民,他们不会帮助陌生人,只会向家人、朋友、当地人和熟人伸出援手。

だが、これも孤独死の増加や自己責任論の高まりなどから推測するに、そうとは言いきれない。

然而,若从孤独死数量增加和个人责任论高涨这两点来推测的话,上述观点又无法断言。

実際、地域の住民とのつながりに関して言えば、内閣府が2020年に行った「社会意識に関する世論調査」によると、10年前に比べて、地域の住民の間で「困った時に助け合うのが望ましい」と回答した人は8ポイント減少しており、逆に「世間話をする程度の付き合いが望ましい」と答えた人は14ポイント、「挨拶をする程度の付き合いが望ましい」も8ポイント増加している。

要说日本人和当地人之间的关系,在2020年日本内阁府开展的“社会意识世间调查”中,回答希望与邻居“困难时互相帮助”的人与十年前相比减少了8%,相反,“希望彼此停留在聊家常的程度”的人增加了14%,“希望停留在打招呼程度”的人增加了8%。

また、仮に日本が「内輪にやさしい国」だったとしても、日本人はなぜ他の国の人と比べて見知らぬ人にやさしくないのか、という疑問は残る。

那么,假如日本的确是一个“对自己人很温柔的国家”,为什么和其他国家相比,日本人对陌生人更冷漠呢?

「善きサマリア人の実験」から見えたもの

从“好撒马利亚人实验”得出的结论

もちろん、他人を助けたがらないからといって、日本人が悪い人というわけではない。よい人でも人を助けないことはあるからだ。

当然,不能说日本人不乐于助人就是坏人,毕竟好人也有可能不帮助别人。

社会心理学に有名な「善きサマリア人の実験」というものがある。プリンストン大学の心理学者ジョン・ダーリーとその学生のダニエル・バトソンが行った実験で、彼らは神学を学ぶ学生たちに新約聖書の一節(人助けのお話)についての説教を近くのビルに行って披露してくる、というミッションを与えた。

社会心理学中有一个著名的“好撒马利亚人实验”。这是普林斯顿大学心理学家约翰·达利和他的学生丹尼尔·巴特森共同完成的一个实验,他们给一批神学学生下了一个任务,让他们到另一个学院里布道《新约 圣经》的第一节(助人为乐的故事)内容。

ただし、この2人の研究者は途中で人が倒れている、という設定も用意しておいたが、学生はそのことを事前に知らされていない。さあ、弱者救済を夢見て勉学に励んでいる神学生たちは、はたして困っている人を助けるのか? それとも、本末転倒にもミッションを優先してしまうのか?

然后,两位研究者在学生们不知情的情况下,在布道的路上设置了倒在路边的人。那么,这些学习着帮助弱者的神学生们会帮助这些倒下的人,还是本末倒置选择先完成任务呢?

この実験で分かったのは、急いでいる人は、どんなに徳が高い善人でも他人を助けないことがある、ということだ。実は、ダーリーとバトソンは一部の神学生に「あなたは遅刻している。会場で人が待っているから急いだほうがよい」と伝え、他の学生グループには「まだ時間はあるけれど、すぐ向かったほうがよい」と伝えていた。

从这个实验中我们可以知道,着急的人,无论再怎么高尚善良都不会帮助他人。事实是,约翰·达利和丹尼尔·巴特森跟一部分神学生说“你快要迟到了,大家已经在会场等着了快点”,然后对另一群学生说“还有时间,但快点过去比较好”。

結果、まだ数分の余裕があったグループで立ち止まって人助けをしたのは63%だったが、急がないといけなかったグループで立ち止まったのは10%ほどでしかなかった。現代の日本人も、忙しすぎて、本当は助けたいのに助けないだけなのかもしれない。

结果,还有时间的学生中63%的学生选择停下来帮助倒下的人,着急的学生们只有10%的人帮助他人。这么看来,如今的日本人是不是因为太忙了,所以想帮也帮不过来呢?

しかし、残念ながら、そうではない。善人の日本人が他人を助けないことには、他の構造的な要因もある、というのが『やさしくない国ニッポンの政治経済学』の一つの主張である。

遗憾的是,并非如此。《冷漠国家日本的政治经济学》中的一大观点称,善良的日本人之所以不帮助他人是有其它构造性原因的。

無条件で「やさしい国民だ」とは言い難い日本人。

很难说日本人是个“无条件温柔”的国民。

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