賞味期限、放射線量、電車内での携帯電話……私たちはさまざまな基準値に囲まれて、超えた/超えないと一喜一憂して暮らしています。しかし、それらの数字の根拠を探ってみると、じつに不思議な決まり方をしているものが多いようです。

保质期、辐射量、电车里的手机……我们生活在各种各样的标准值的包围中,一旦超过/未超过标准值就会忽喜忽忧。但是,如果对这些数据一探究竟,就会发现其中有很多不可思议的规定。

今回は誰もが知っているおもしろい“基準値”として食品に関する「3秒」ルールを科学的に考えてみます。

这次我们来科学地思考一下众所周知的有趣的“标准值”——与食物相关的“3秒”定律。

(この記事は2014年6月に刊行された『基準値のからくり』の一部を抜粋したものです)

(本文摘录了2014年6月出版的《标准值的原理》一书中的部分内容)

「3秒ルール」は外国にもあるのか

外国也有“3秒定律”吗

それはバスケットボールのルールではない。「床に落ちた食べ物は3秒以内に拾えば食べられる」という“伝承”である。筆者はそれを子どもの頃に知ったが、本書の共同執筆者村上も同じだという。たしかに日本にはこの伝説が存在しているようだ。

不同于篮球的规则,“掉在地上的食物只要在3秒内捡起来就能吃”(的说法)是代代相承的。笔者在儿时就知道这一点,本书的共同执笔者村上也一样。日本确实有这个传说。

では、これは日本独特のものなのだろうか? この点に興味を持った私たちは、外国人の友人たちに、このようなルールを知っているか、実際に尋ねてみた。

那么,这是日本独有的东西吗?对这一点颇感兴趣的我们,实际询问了外国友人是否知情。

なんと北米とオセアニアでは、ほとんどの人が知っていた。ただし “five-second rule” と呼ばれる「5秒ルール」だった。だが、それ以外の国やアフリカでは、その半数程度だった。

在北美和大洋洲,几乎所有人都知道。但在那里是被叫做“five-second rule”的“5秒定律”。然而,在其他国家和非洲,知道的只有半数左右。

一方で、「知っている」という回答のなかには、3秒、5秒のほかに「うちの国では10秒」というコメントもあったことから、時間はともかく落ちた食べ物を“すぐに拾う”ルールとして知られているのだろう。

另一方面,回答“知道”的人中,除了3秒、5秒之外,还有“在我们国家是10秒”的回复,时间暂且不论,“马上捡起掉在地上的食物”这一规则想必是广为人知的吧。

また、「聞いたことがない」と答えたタイ人やネパール人からは「ゴミや菌で汚れているに決まってるじゃないか! それは本当にルールなのか?」と、真面目な反応が返ってきたのも新鮮な驚きだった。このルールがいわばジョークの一種であることが認識されなかったのだろう。

另外,回答“没听说过”的泰国人和尼泊尔人也会说“肯定会被垃圾和细菌弄脏的!这真的是规定吗?”得到如此严肃的回应,让人感觉很是新鲜。 我猜他们没有意识到这个定律是一种玩笑。

3秒ルールのルーツ?

3秒定律的根源?

3秒ルール(と総称させていただく)が伝播している文化圏と、そうでない文化圏の境界線がどこにあるのかは判然としないが、そのルーツは13世紀のモンゴル皇帝チンギス・ハーンにあり、「ハーン・ルール」と称されていた(! )という説がある。

传播3秒定律(总称)的文化圈和非文化圈的分界线在哪还不清楚,不过其根源在13世纪的蒙古皇帝成吉思汗,有一种说法叫做“哈恩(汗)规则”。

ハーンは戦いに勝つと祝宴を設け、将軍たちに料理と酒をふんだんに振る舞った。だがその際、「床に落ちた食べ物は12時間以内ならば、食べても安全である。信じたまえ!」と宣言して、みなをそれに従わせたというのだ。ハーンの宴席の食べ物ならそれほど長く落ちていたものでも食べる価値があった、というあたりがこの逸話の真意だろうが、3秒ルールが歴史に痕跡をとどめた例として貴重である。

成吉思汗在战争胜利后设宴庆祝,款待将军们美酒佳肴。但在这个时候,他宣称“掉在地上的食物在12小时之内是安全的,相信我!”,让大家遵从。如果是他宴席上的食物,即使是已经掉了很长时间的东西也有吃的价值,这也许是这则逸闻的真正含义,但这也是三秒规则在历史上留下痕迹的一个珍贵例子。

3秒ルールの科学的合理性

3秒定律的科学合理性

3秒ルールは完全なナンセンスなのか、多少なりとも科学的な合理性があるのか。じつは米国や英国では、真面目に調査している人がいる。

3秒定律完全是无稽之谈,还是多少具有科学合理性?其实在美国和英国,已经有人认真地进行了调查。

2003年に高校生のジリアン・クラークさんはイリノイ大学で、大腸菌が塗られた床材に、グミや砂糖のかかったクッキーを5秒間置いたのち、菌数を数えた。その結果、ザラザラした床でも滑らかな床でも、大腸菌がクッキーにつくことを報告している。クラークさんはこの功績により、2004年度のイグ・ノーベル賞を受賞した。

2003年,高中生吉莉安·克拉克在伊利诺伊大学,将撒有软糖和砂糖的曲奇饼放在涂有大肠杆菌的地板上5秒钟,然后统计细菌数量。结果表明,无论是粗糙的地板还是光滑的地板,大肠杆菌都会附着在饼干上。克拉克因此获得了2004年度搞笑诺贝尔奖。

2006年にはクレムゾン大学のポール・ドーソン博士が、さまざまな材質の床(タイル、フローリング材、カーペット)にチフス菌がどれだけいるか、また、床に置いたハムやパンに付着する菌数と、床との接触時間にはどのような関係があるかを調べた。

2006年,克莱姆森大学的保罗·道森博士对各种材质的地板(瓷砖、地板材料、地毯)上有多少伤寒菌,以及放在地板上的火腿和面包上附着的菌数与地板的接触时间之间的关系进行了调查。

その結果、タイルでは接触時間5秒で、ハムに約70%、パンに約50%、菌が付着した。また、床に落ちた食べ物に息を吹きかけゴミを払っても除菌の効果はなかった。博士はこれらを総合して “five-second rule” はただの神話にすぎず、食中毒を防ぐには衛生管理が大事である、と至極まっとうな主張をしている。

结果,与瓷砖接触5秒后的细菌附着率,火腿约占70%,面包约50%。另外,对掉在地上的食物吹气,即便能去除垃圾也没有除菌的效果。综合上述,博士认为“five second rule”只是传说,卫生才是防止食物中毒的关键。

同じことを考える人はいるもので、英国アストン大学のアンソニー・ヒルトン氏は2014年に、床の大腸菌などがトーストやパスタに移るかという同様の実験を行っている。ドーソン氏と違うところは、接触させる時間を3秒から30秒までさまざまに変えているところである。

英国阿斯顿大学的安东尼·希尔顿先生在2014年,就地板上的大肠杆菌是否会转移到吐司或意大利面上进行了同样的实验。与道森不同的是,他(设定)的接触时间从3秒到30秒不等。

その結果、接触時間と床材によって菌の移り方は異なり、カーペットの場合は5秒後もほとんど菌が移っていなかったという。3秒ルールは場合によってはありなのかもしれない、とも思わされる結論である。

结果显示,细菌的转移取决于接触时间和地板材料,即使在地毯上过了五秒,(细菌)也几乎没有转移,这表明3秒定律在某些情况下可能是存在的。

3秒ルールが科学的か否か、ここで判断することは控えたい。だが面白いのは、落ちたものを拾って食べることは衛生上、問題がありそうとは誰でも思うにもかかわらず、このルールが世界で少なからず知られ、ときに実行されていることだ。

3秒定律是否科学,希望大家不要在此定下结论。但有趣的是,尽管谁都认为捡掉在地上的东西吃具备卫生问题,而这个定律依旧在世界上广为人知,有时还会被实行。

これを「はるか昔からヒトは“安全”と“もったいなさ”を、本能で天秤にかけ、判断してきた。その名残が3秒ルールなのだ」と解釈するのはいいすぎだろうか。ゴミや細菌がついたものはどの程度までなら、食べても危害が及ばずにすむか、ヒトは直観的に知っているとしたら、なかなか興味深いことである。

将此解释为“从很久以前开始,人类就凭借本能,将“安全”与“可惜”放在天平上进行判断,而3秒定律就是其残留”,是不是有些过分了呢?如果人类能直观地了解带有垃圾和细菌的东西在多大程度上吃了也不会造成危害,那就很有意思了。

本内容为沪江日语原创翻译,严禁转载。

相关阅读推荐:

边泡澡边嗦粉?!香川县独特的地域风俗

在日本借用便利店卫生间需要在店内消费吗?