日本では戦後、1945~1975年までの約30年間、とにかく子どもたちの知識量を増やすために「詰め込み教育」が行われていたといいます。それは、たびたび「ゆとり教育」と比較されることがありますが、一体どのような教育だったのでしょうか?

日本在战后,1945~1975年约30年的时间里,为了一味地增加孩子们的知识储备量进行了“填鸭式教育”。它常常用来与“宽松教育”比较,那么“填鸭式教育”到底指的是哪种教育呢?

今回、「詰め込み教育」について伺ったのは東京大学大学院教育学研究科の市川伸一教授。

这次,我们就“填鸭式教育”这一话题请教了东京大学研究生院教育学研究科的市川伸一教授。

市川教授:「詰め込み教育」とは、試験のために知識の詰め込みを要求していた“知識偏重型”の教育です。当時、学生は偏差値で評価されたため、「偏差値教育」とも呼ばれていました。

市川教授:所谓“填鸭式教育”是指为了应对考试要求对知识进行死记硬背的“知识偏重型”教育。当时,用偏差值来评价学生,所以“填鸭式教育”也被称为“偏差值教育”。

———具体的にはどのようなものだったのでしょうか?

———具体来讲是怎样的情况呢?

市川教授:これは私より少し上の世代の話ですが、当時は英単語を覚える時は、英和辞書を一言一句漏らさずに覚えていたようです。まさに、辞書を“食べて覚える”くらいの気持ちで臨むものでした。そういった努力が必要だったのは、「四当五落」(4時間の睡眠は合格、5時間を超えた睡眠は不合格)という言葉があり、睡眠時間を削ってまで勉強に励むことが、受験には欠かせない心がけだったのです。

市川教授:这是比我处的世代还要再向前追溯的故事,当时背英语单词的时候,需要将英日字典一字不漏背下来。古话说词典“需要吃下去才能记住”,当时正是用这样的心情来面对的,付出与此相当的努力十分必要,当时有话叫“四当五落”(4个小时的睡眠才是及格,超过5个小时睡眠就不及格),削减睡眠时间来刻苦学习,是应试不可或缺的品德。

“辞書は食べて覚えるもの”、“5時間を超えた睡眠は不合格”、そういった当時の勉強に対するストイックさに驚きますが、実際それほどまでに追い込まなければ、打ち勝つことができないほどの受験競争が繰り広げられていたといいます。

“词典需要吃下去才能记住”、“超过5小时睡眠便不合格”,我们对当时人们学习时的克己感到震惊,实际上如果不把自己逼到这种程度,根本办法脱颖而出。当时的应试竞争的激烈程度被不断的扩散开来。

ただし、そうした受験競争に参加する人口比率は、当初はそれほど高いものではありませんでした。それがしだいに高くなっていくことで、「詰め込み教育」と言われるようになっていくのです。

不过,最初像这样参加考试竞争的人口比率并没有非常高。当竞争随着教育发展逐渐拔高,也就是所谓“填鸭式教育”实行的时候。

「詰め込み教育」はなぜ必要だったのか?

为什么有必要进行“填鸭式教育”?

市川教授:戦後は、肉体労働である農林水産業や鉱工業に代わって、事務職、専門職、開発職などの頭脳労働である「ホワイトカラー」と呼ばれる職業が、戦前の1.5倍、2倍と徐々に増えてきたのです。資料を作成したり、読み込んだりという頭を使う仕事は、受験勉強によって得られる知識や能力を必要としました。そのため、頭がよい=学歴が高いと見なされ、学歴の高さが重視されたのです。

市川教授:战后,取代了需要体力劳动的农林水产业、矿业,事务所、专业职务、开发职务等脑力劳动,这些被称为“白领”的职业,慢慢增加至战前的1.5、甚至2倍。做资料、分析资料等使用头脑的工作,便需要通过应试考试来获得必要的知识和能力。因此,脑子聪明即被视为学历高,所以大家开始重视学历的高低。

こうした“学歴至上主義”の考えが、目指すは難関校・難関大学突破!とそそのかしたため、生徒は人よりも知識を詰め込もうと努力せざるを得なかったのです。学校も進学率を上げることが大きな役割になっていきます。

这种“学历至上主义”的思考方式,让大家将目标定为突破难关学校、难关大学!由于受此唆教,学生们只能更加努力地去死记硬背知识。学校提高升学率也起到了很大作用。

「詰め込み教育」の方が覚える英単語は“約400~500語”も多かった。

“填鸭式教育”的学生需要记住的英语单词约比现在多“400~500个”。

その理由について、「そもそも、当時の学習指導要領が定める教育内容が多かったため、受験勉強だけでなく義務教育においても“知識の詰め込み”が引き起こっていたのではないか」と市川教授は述べています。

关于其中理由,市川教授说道:“原本,由于当时的学习指导要领中特定的教育内容比较多,不仅仅是应试学习,就连义务教育中需要‘死记硬背的知识’也有所增多。”

また、受験競争は、特に難関校・難関大学が集中している大都市圏で激化していたため、その影響を受けにくい地方では、部活動と両立しながらのびのびと勉強していた生徒もいた。

另外,特别是受到应试竞争集中的难关学校、难关大学大都市圈的激化,受到其影响的地方,也有学生一边兼顾着部团活动一边欣欣向荣地刻苦学习。

したがって、「詰め込み教育」の時代でも、全ての生徒が追い詰められていたわけではないようです。

因此,即便是在“填鸭式教育”时代,也不是所有学生都被逼迫着学习。

「詰め込み教育」の終焉

“填鸭式教育”的终老

1975年になると、勉強についていけない“落ちこぼれ”といわれる生徒が目立つようになったといいます。しかし皮肉にも、学校は生徒を成績の良し悪しで評価する時代。ついに、教師に対する過激な反発が引き起こったとか。

到了1975年,那些完全跟不上学习、被称为“吊车尾”的学生逐渐引人注目起来。不过讽刺的是,这依然是一个学校依据学生成绩的好坏而对学生进行评价的时代。渐渐地,他们引发了对老师过激的反抗行为。

———どんな反発が引き起こったのでしょうか?

———他们都进行了怎样的反抗呢?

市川教授:校内暴力が、生徒間だけでなく、学校や教師に対しても頻発しました。全国で200件以上も引き起こった事件で、社会問題にもなりました。

市川教授:校园暴力不仅仅发生在学生之间,还频频发生在学校及教师的身上,全国一共发生了超过200起事件,已然成为了社会问题。

さらに、いじめや不登校などの学校病理現象も多発したことで、「子どもたちへプレッシャーをかけすぎているのではないか?」という不安の声が目立つようになったといいます。

更甚的是,校园欺凌、逃学等学校问题常见病多发,导致“学校给学生施加的压力是否过大?”这一不安的声音渐渐显露出来。

そこで、生徒にもっと心身的な余裕を持たせようと、1980年から、徐々に「ゆとり教育」という概念は広まりました。これまでになかった“一人ひとりの個性を大事にして、自発的な意欲を身につけさせること”を尊重したのです。

于是,为了让学生维持身心上的游刃有余,从1980开始,“宽松教育”的概念渐渐扩散开来。至今为止从未出现的观念“重视每个人的个性,鼓励自发性的积极主动的学习”获得了大家的尊重。

1998年には、心と時間のゆとりを確保するために、「ゆとり教育」の象徴的改革である、小・中学校では教科書内容の“3割削減”という学習指導要領が告示されました。完全週五日制や「総合的な学習の時間」が導入されたのもこのときです。

1998年,为了确保学生心灵与时间上的游刃有余,作为“宽松教育”象征性的改革,政府颁布了“中小学教科书内容减负3成”这一学习指导要领。也正是导入“完全周五日制”、“综合学习时间”改革的时期。

「詰め込み」と「ゆとり」。両者のいいとこ取り教育が必要

“填鸭式教育”与“宽松教育”。现代教育有必要汲取两者的优点

しかし、「ゆとりを与えたことで、かえって学生の学習意欲は低下し、学力低下に繋がってしまったという面もある」と市川教授は懸念しています。つまり、学習の目的や方法がわからず、“自力で何をどうすれば良いのか?”と途方に暮れてしまっている学生がいるといいます。

但是,“给予学生们宽松的教育,反而会使学生的学习欲望低下,也存在与学习能力低下相关的问题”,市川教授十分忧虑。也就是说,先不论学习的目的与方法,据说有很多学生因为“不知道凭借自己的力量干什么比较好”而穷途末路的学生。

そのサポートとして、市川教授曰く「習得と探究の両立が必要」とのこと。まず、習得とは、“基本的な知識や技能をしっかりと身につけさせること”。そして探究とは、“自分の興味をもった課題を追究すること”を意味しています。この両方を通じて、実際に生徒は「この知識は、こんなところで生かせるんだ」と気づき、学習することの意義が伝わると言うのです。

作为他们的支援,正如市川教授所说:“学习与探究需要兼顾”。首先,学习是指“身体力行地彻底获得基础的知识与技能”,接下来探究则意味着“对自己感兴趣的话题深入探究”。通过两个方面的培养,实际上学生技能感受到“这个知识能在这样的地方进行活用”,也能传递出学习的意义。

そもそも、私たちが勉強を通じて本来目指すべきことは、社会の役に立つこと、仕事を円滑にこなすこと、日常生活を豊かに過ごすことなど、生きていく上では欠かせない要素のためなのではないでしょうか?しかし、いずれにせよ、しっかりと蓄積された知識がなければ、物事を理解して新しいものを生み出したり、自分の考えや感情を表現したりすることは十分に発揮されないのです。

原本我们通过学习应该瞄准的目标是成为一个对社会有用的人,能圆滑地处理工作,能丰富精彩地过生活等,是一些保证生存之上不可缺少的要素不是吗?但是,不管怎样,如果不扎扎实实地积累知识的话,也就无法去理解事物甚至孕育出新的事物,就连表达自己的思想与感情都不能充分地发挥出来。

したがって、右往左往している「詰め込み」と「ゆとり」ですが、“両者のいいとこ取り教育”が、悩める生徒たちを救う羅針盤になるのではないでしょうか。

因此,东西乱窜的两种教育理念“填鸭式”与“宽松式”,只有汲取两者的优点,才能成为指导抱有烦恼的学生们的指南针不是吗?

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