多くの人が実感しているだろうが、日本にある書店の数は、この20年ほどで半数以下に減った。かつては駅前や商店街に必ずといってよいど存在していた「本屋さん」が、人々の生活空間から消えつつあるのだ。なぜ、これほど書店がなくなっているのか。今後、書店という業態はわれわれの前から姿を消してしまうのだろうか。

或许很多人已经感受到近20年来,日本书店的数量已经减少了一半多。以前车站前和商业街上必定会有一家书店,如今却渐渐消失在人们的生活空间中。为什么那么多的书店会倒闭?日后,书店这种经营模式会在我们眼前彻底消失吧。

まず、書店が大幅に減少している背景には、単に本が売れなくなっているという要因だけではなく、日本独特の出版産業の構造がある。

首先,造成书店大幅减少,除了书卖不出去这一主要原因外,日本出版业特有的组织构架也有其影响。

雑誌が支えてきた出版流通

杂志支撑着出版流通

欧米先進国と日本の書店の最大の違いは、日本の書店は雑誌を多く販売してきたという点である。一般的に日本以外の国の書店は「書籍店(BookStore)」であり、雑誌はニューススタンドやドラッグストアなどで販売されてきた。書店店頭に毎日新しい雑誌が次々に並ぶという風景は、日本にしかないのだ。

欧美发达国家的书店与日本的书店最大的差异在于,日本书店会销售大量杂志。一般情况下其他国家的书店即‘图书店(BookStore)’,杂志是在报刊亭和药妆店售卖的。只有日本的书店才会在店面里每日不断更新出版的杂志。

書籍の販売で得る利益で経営を支えている欧米の書店と違い、日本の書店、特に中小規模の書店は、雑誌の販売で利益を上げてきた。

与靠着销售图书得到的利润维持经营的欧美书店不同,日本的书店特别是中小型书店是靠贩卖杂志获利的。

この構造は、出版の流通を担う「取次」によって実現されてきた。日本には日本出版販売、トーハン、大阪屋栗田といった取次会社が存在し、これら総合取次と呼ばれる各社は、書籍と雑誌を両方流通させている。

出版物的发行流通是靠代理公司,在日本有着日本出版贩卖、TOHAN、大阪屋栗田这些代理公司。这些被称为综合代理的公司负责书籍和杂志两边的发行流通

年間7万タイトルの新商品(新刊)が発売され、代替性に乏しく、基本的に繰り返し購入のない書籍に比べて、大量生産が可能で、計画性のある雑誌のほうが効率がよいことは言うまでもない。

比起缺乏代替性基本上不会被重复购买的书籍,不用说,每年有着7万新刊发售量能够大量生产且有计划性发行的杂志利润更高。

取次とは、その効率がよい雑誌で日本全国の書店やコンビニエンスストアなどへの配送網を作り、そこに書籍を載せることで成り立ってきた仕組みなのである。欧米で出版取次と呼ばれる業態(ホールセラー、ディストリビューター)は書籍専業の流通業者であり、雑誌と書籍の流通を組み合わせた取次システムは、日本にしか存在しないと思われる。

所谓代理就是利用利润高的杂志将全日本的书店和便利店编织成配送网,进而凭借此配送网销售书籍。在欧美,被称为“出版代理”的人是专门发售书籍的,这种杂志和书籍捆绑发行的模式是日本独有。

このように、雑誌流通が書籍流通を支える内部補助の構造によって、日本では書店に毎日、1冊から書籍を届ける流通体制が維持され、さらに書籍の流通費用を低く抑えることで、書籍の価格が諸外国に比べて極めて安く設定されてきた。ちなみに、書籍だけで成立させている先に挙げたアメリカやドイツでは、書籍の価格は日本に比べると1.5倍から2倍以上する感覚だ。

在日本凭借这种靠着杂志的发行流通支持书籍的发行流通的内部补助结构,书店每天维持一本书的发行流通就可以进一步降低书籍的流通费用,因此图书价格也会比其他国家便宜许多。顺便一提,前文提到的只代理发行书籍的美国和德国,这两国图书价格是日本的1.5到2倍以上。

雑誌市場縮小が書店と取次に打撃

杂志市场的缩小使书店和代理公司受到重创

かつて、日本の出版市場は「雑高書低」と呼ばれていた。雑誌の販売額が書籍を大きく上回っていたためだ。

过去日本的出版市场是“杂高书低”,杂志的销售额远远高于书籍。

出版業界の売り上げがピークを迎えた1996年には書籍の販売金額1兆931億円に対して、雑誌の販売金額は1兆5633億円と1.5倍ほどの規模だった。雑誌の売り上げが大きかった当時、出版業界の収益性は高く、それが書店の旺盛な出店の原動力にもなっていた。

在出版业销售额达到高峰的1996年,杂志的销售额为1兆5633亿日元是书籍销售额1兆931亿日元的1.5倍。杂志大卖的同时,出版业的受益也水涨船高,这也是书店频繁开新店的原因。

しかし、その後、出版物の販売量は減少の一途をたどる。特に、雑誌はその頃拡大し始めていたインターネットや、携帯の普及に伴って急激に市場が縮小。2017年の雑誌の販売額は書籍の7152億円を下回り、6548億円と最盛期の3分の1ほどに縮小してしまった。

但在那之后出版物的销售量不断下滑。尤其是随着网络和手机的发展、普及,杂志市场急剧缩小。2017年杂志的销售额比书籍7152亿日元的销售额还要低,仅6548亿日元减少到了鼎盛时期的三分之一左右。

このことが、雑誌の収益に頼っていた中小書店の経営と、雑誌で巨大流通網を回してきた総合取次の経営を直撃した。

靠着杂志得以盈利的中小型书店和借着杂志来运转巨大流通网的综合代理公司都受到了重创。

書店、とりわけ駅周辺や商店街にあった雑誌販売を中心とした従来型の「街の書店」が急速に姿を消した。2018年2月、個性的な品ぞろえなどで多くのメディアから注目されつつ閉店した幸福書房(東京・渋谷区)も、雑誌と書籍の売上比率が逆転したことが、経営に大きな打撃を与えたという。

书店特别是开在车站附近和商业街以销售杂志为支撑的传统的“街上的书店”迅速消失。2018年2月,有许多个性商品并深受媒体关注的幸福书房(东京·涉谷区)也关门大吉,据说杂志和书籍的销售额比例逆转,对经营造成了很大的冲击。

大手総合取次も日本出版販売とトーハンという上位2社や一部専門取次を除き、業界3位だった大阪屋、4位の栗田出版販売、5位の太洋社が次々と経営破綻するに至った。

除了日本出版贩卖和TOHAN这两家业界巨头和一部分专业代理外,业界排行第3的大阪屋、第4位的栗田出版贩卖、第5的太洋社都相继破产。

雑誌の収益によって成立してきた取次システムと書店経営は、どだい書籍の収益で支えることはできない構造になっている。

依据杂志收益而形成的代理系统和书店经营模式,换成以书籍的受益为支撑根本无法成立。

総合取次各社は、書籍の販売比率が雑誌を超えると、ほぼ一様に出版流通事業が赤字に転落している。

综合代理公司的书籍销售比率超过了杂志,出版流通业务就大体上陷入了赤字。

再生のヒントはアメリカの独立系書店

美国的独立型书店是重获新生的启示

書店も書籍だけで経営を維持することは不可能だ。大手取次各社が発表している取引先書店の経営指標に基づき、1坪あたりの在庫金額(雑誌を含む)や商品回転率、そして書店マージンを業界で一般的な22%として試算してみると、1坪あたりの年間粗利益額は23万7600円。仮に100坪の書店を営業すると、粗利益額は2376万円になる。

书店只靠书籍来维持经营是不可能的。以各大代理公司发表的与之交易的书店的经营指标为基准,1坪左右的库存总额(含杂志)、商品周转率和书店的利润按照业界基准的22%来估算的话,那么1坪的年毛利为23万7600日元。假设经营一家100坪的书店一年所获得毛利润为2376万日元。

支出をみると、家賃を安く見積もって月坪1万円と設定すると1万円×100坪×12カ月で1200万円。アルバイトを5人、時給1000円で雇い毎日8時間働いてもらうとすると1年間の人件費は8時間×1000円×5人×365日=1460万円。つまり家賃と人件費で2600万円以上かかり、先の粗利益2376万円から経費2660万円を引くと、経営者の人件費や光熱費を引かない段階でマイナス284万円で赤字になる計算だ。

从支出来看,假设以每月1坪为1万日元这样低廉的租金来估算的话,1万日元×100坪×12个月为1200万日元。如果雇佣了5位员工,每人每天工作8小时,时薪为1000日元,那么一年下来所要开付的工资为8小时×1000日元×5人×365天=1460万日元。也就是说店铺的租金和人事费用需花费2600万日元以上,从前文提到的2376万日元的毛利润中减去2660万日元的经费,在不扣除经营者自身的工资、电费、燃气费的前提下收支已经为负284万日元,财务赤字。

このままの取引構造では、日本では書籍をベースにした取次や書店は存在しえないのである。

依据这种交易模式,以书籍为基础业务的代理公司和书店在日本是无法经营下去的。

では、書店という業態が、世の中から必要とされなくなっているのだろうか。実はアメリカでは、2009年以来、独立系と呼ばれる小規模書店の数が毎年増加している。そうした書店は書店員たちが独自の品ぞろえをし、カフェを備え、地域向けイベントに力を入れるなど、ネットでは味わえないような人々とのつながりを大切にしている。

这么来看,难道这个世界上书店已经没有存在的必要了?事实上在美国自2009年开始被称作独立书店的小规模书店的数量每年都在增加。这类书店的店员开发属于自家书店独一无二的商品,并设有咖啡厅,还会致力开展具有地域特色的活动,使在网络上无法体会到这些乐趣的人们聚集在一起。

ただ、日本と違ってアメリカでいまも独立系書店が開業し、成長するのを可能にしている最大の要因は、書籍の価格と粗利益率の高さにある。

但是与日本不同,美国如今出现的独立型书店能够发展的最大因素是图书的价格和高毛利率。

一例を挙げると、ニューヨーク市のブルックリン地区で2010年に50坪で開店した書店「グリーンライト・ブックストア」は、カフェや雑貨などはなく、ほぼ書籍の販売だけで営業しているが、開業以来成長を続け、2016年に同じブルックリンに2店舗目を開店した。

举个例子,2010年在纽约市布鲁克林区开了一家50坪名叫‘Greenlight Bookstore’的书店,店内没有咖啡厅和杂货几乎只销售书籍,但开业以来发展势头良好,2016年在布鲁克林区开了第二家书店。

同店では客単価が28ドルと日本の2~3倍、粗利益率は40~50%とこちらもほぼ2倍で、経営者の話から計算すると年間の売上高は約2億円、粗利益額は約1億円に達する。

该店的客人平均一次花费28美元是日本书店的2-3倍,毛利率为40%-50%同样近乎是日本的2倍。据经营者所提供的信息来计算的话,那么年销售额达到约2亿日元,毛利金额约为1亿日元。

日本の書店の粗利益率は20~25%程度なので、1億円の粗利を稼ぐとしたら年商5億円必要だが、書籍の平均価格1200円程度、商品回転率が年間2回転以下という日本で50坪の書店がこの売上金額をあげることは考えられない。

因为日本书店的毛利率为20%-25%左右,所以如果要赚取1亿日元毛利,年销售额就必须要达到5亿日元。但是在书籍的均价为1200日元左右,商品周转率一年不超过两次的日本开一家销售额达到5亿的50坪书店这是不可能的。

このように、アメリカの書店はもともと雑誌を扱っていなかったため、書籍だけで経営が成り立つ収益構造がある。このおかげで、アマゾンとの競争で大手書店が店舗を減らす中で、小規模な書店が新たに開業し、成長できるのである。

因为美国的书店原先就不售卖杂志,所以能够形成单靠卖书获得盈利的结构。因此小规模的书店在与亚马逊的竞争及大型书店减少的过程中能够不断开新店、稳步发展。

日本で、直ちにアメリカと同じ価格と利益の水準にすることは難しい。しかし、いくつか現実に粗利改善を果たしているケースはある。

日本很难达到与美国一样的价格和利润标准。但实际上多多少少有些提高毛利的方法。

ひとつはアマゾンジャパンだ。2017年に取次へのバックオーダー(取次非在庫品の発注)を取りやめるなど、同社は出版社との直接取引を拡大しているが、公表されている直接取引(e託販売)の条件は出版社の卸値率60%で、アマゾンの取り分は40%だ。

其中之一是日本亚马逊的做法。2017年日本亚马逊不再接受代理公司的延期交货(向代理公司订购其没有库存的商品),日本亚马逊同出版社直接交易的机会变多,其公布的直接交易(委托买卖)的条件是,出版社的批发价比率占60%同时亚马逊所得的份额为40%。

日本の書店が書籍の取引条件を改善し、これからの時代に対応した新業態に生まれ変われば、書店という業態自体はまだ十分に人々から求められる商売だといえるだろう。

如果日本书店能够完善书籍买卖条件,并与时俱进不断完善,还是会有很多顾客光顾的吧。

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