「何もない田舎」を自転車でめぐる――そんな「何でもない」ツアーで多くの外国人観光客を集める。しかもツアー参加者の99%が満足のコメントを残している。外国人観光客は、いったい何に熱狂するのか。私たち日本人にとって「当たり前」のものに感動する理由は何なのか。 書籍『外国人が熱狂するクールな田舎の作り方』を上梓した「美ら地球」の社長・山田拓氏に解説してもらった。

骑着自行车在“什么都没有的乡下”环游,这种“极简”的旅游方式吸引了很多外国观光客。并且99%的参与者都对这种方式给予了满意的评价。外国观光客到底痴迷于什么?对于日本人而言“理所当然”的事情为什么会使他们感动?在一本名为《外国人が熱狂するクールな田舎の作り方》的书中,“美丽地球”的社长.山田拓对此进行了解答。

*美丽地球是日本一家致力于打造适合现代人的时髦的乡间旅行方式的公司。

観光立国が叫ばれ始めて少し経った2009年より、私たちの会社「美ら地球(ちゅらぼし)」は、「暮らしを旅する」というキー・コンセプトを掲げたSATOYAMA EXPERIENCEのフラッグシップ・ツアー、「飛騨里山サイクリング」を開始した。2016年に公開された映画『君の名は。』で多くの方々に知られるようになった飛騨古川の古い町並みを起点に、周辺の農村部をユックリと自転車で巡るというツアーである。

在观光立国口号开始被提倡不久的2009年开始,我们的公司“美丽地球”就提出了以“旅行生活”为主要概念的SATOYAMA EXPERIENCE的旗舰旅行,并开始了“飞騨里山自行车旅行”。以2016年上映的电影《你的名字。》而被众人所熟知的飞騨古川的古老街道为起点,在附近的农村展开了舒适悠闲的自行车环游旅行。

開始当時、周辺の飛騨高山や白川村には多くの外国人が訪れ始めていたが、飛騨古川を訪れる外国人はそれほどでもなかった。それが、私たちのツアーが認知されたこともあってか、近年は飛騨古川でも外国人の姿を普通に見かける。SATOYAMA EXPERIENCEのツアー参加者は年間で約3500人程度だが、その参加者の80%以上は外国人旅行者であり、その外国人の80%は欧米豪からの個人旅行者だ。ここに、中国人の団体客を当て込んだインバウンドツアーと違う、私たちの際だった特徴がある。

刚开始的时候,附近的飞騨高山和白川村有很多外国人到访,但前往飞騨古川的外国人却并没有那么多。也可能是我们的旅行方式被认可了吧,近年来在飞騨古川也能看到外国人的身影了。SATOYAMA EXPERIENCE的旅游参与者每年约有3500余人,其中80%以上是外国游客,而这其中又有80%是来自欧美、澳大利亚的个人游客。我们这里与那些以中国团体游客为目标的入境游不同,拥有自己的特色。

世界最大の旅の口コミサイト「トリップアドバイザー」では、ツアー参加者の99%が満足のコメントを残してくれている。地元に住む飛騨びとたちが「なんもない」という飛騨の日常は、外国人旅行者の目には魅力の宝庫なのだ。ここでは、日本の地方部のどのようなポイントが外国人旅行者にウケているのかをご紹介したいと思う。

在世界最大的旅行口碑网站“tripadvisor”上,99%的旅行参与者的评价都表示满意。住在飞騨当地的人们“无聊”的日常,对于外国旅行者的视觉感受上来说却是充满魅力的宝库。在这里,我想介绍一下那些主要的被外国游客喜爱的日本地方特色。

その①「やっと、見られた!」日本全国に広がる田園風景

①“终于见到啦!”日本全国随处可见的田园风景

飛騨里山サイクリングは、飛騨古川の町並みをスタートし、周辺の農村部に漕ぎ出すプログラム構成になっている。スタートして最初は街中を走り、それから川沿いの道を走るが、間もなくすると田んぼが広がる田園風景にたどり着く。その光景を見た外国人は「ようやく出会えた、この風景!」と驚嘆する。

飞騨里山骑行是从飞騨古川的街道为起点,深入到附近农村的一个项目。刚开始是在街上骑行,然后沿着河边的道路骑,不久后就能看到拥有广阔稻田的田园风景。看到那种景象的外国人都会惊叹不已地说到:“终于看到了这样的风景!”

世界中の主要空港でさえ寿司を食することができ、日本酒も世界を駆け巡る昨今、それらの原料であるコメは、興味の対象でありながら、あまりその実態についての説明はされていないようだ。小麦が主食の文化圏から来た人にとっては、そもそも田園風景はなじみがなく、初めて目にする人も多い。

现今,人们对在世界各地的主要机场都能吃到的寿司和风靡世界的日本酒的原料大米虽然非常感兴趣,但似乎都并没有见过其实物。对于以小麦为主食的文化圈的人来说,他们对田园风景并不熟悉,有很多人都是第一次见到。

その②「もうエエさ!」雪国飛騨の人々を苦しめる雪

②“已经够了!”让雪国飞騨的人们苦恼的雪

飛騨は12月中旬から雪に覆われる雪国である。今シーズンは例年に比べ早めに降り始め、スキー場関係者は喜ぶものの、町に住む住民には屋根の雪下ろし、出勤前のクルマや路上の雪かきなどの余分な仕事が増える。終わりのないその作業に、「もう要らんぞ!」と天を見上げてつぶやく飛騨びとの姿は冬の飛騨では珍しくない光景であるが、外国人の中には、この雪そのものが魅力と映ることもあるようである。

飞騨是一个从12月中旬开始就会被雪覆盖的雪国。今年降雪比往年有所提前,滑雪场的工作人员虽然很高兴,但是居住在城镇的居民们则会因为要铲除屋顶的雪、上班前对车进行打扫和清除路上的积雪等而增加多余的工作量。在没有尽头的除雪工作中,仰望天空自言自语说着“已经够了!”的飞騨人的身影在大冬天并不罕见,但在外国人眼中,却映衬出了雪的魅力。

昨シーズンから開始したスノーシューツアーには冬に日本を訪れる香港などの旅行者を中心に多くの予約が入るようになってきている。宿泊施設の前を笑顔で雪かきをしながら、インスタグラムに投稿する写真を撮る姿は、飛騨高山の朝の定番のシーンとなった。北米や欧州では一般的なスノーシューというアクティビティはオーストラリアにはないらしく、また雪が降らない生活圏から来た外国人にとっては、雪の存在だけで滞在の理由となるようである。

以香港等地为中心的旅行者都预约了从上个季度开始的snow show旅行。在住宿地前开心地边铲雪边拍照片发送到instargram,成为了飞騨高山早上可以看到的固定景象。澳大利亚好像没有北美和欧洲的snow show活动,而且对于生活在不下雪的地区的外国人来说,只是雪的存在就能成为他们停留在这里的理由。

また、「飛騨里山サイクリング」に参加したオーストラリア人からは、「この川は年中これだけ多くの水量で流れているのか?」と羨ましそうに問いかけられたこともある。真意を聞くと、「わが町の川は雨期にしか流れない」とのこと。雪や川の流れなどの「当たり前の田舎の自然」は、外国人を魅了する要素になりうるようである。

另外,参加“飞騨里山骑行”的澳大利亚人羡慕地问到:“这条河全年都有这么大的水量?”。原来他所在城市的河川只有雨期才有水流。雪和河川的水流等“理所当然的乡村自然”成为了吸引外国人的要素之一。

その③「キュート!!」どこにでもいるあの生きモノ

③“可爱!!”到处都有的生物

マネジメントを本業とする私は、ガイドとして現場に出ることはそれほど多くはないが、現場ガイドから日々のツアーの状況は聞かせてもらっている。「ゲストが何に興味を持つのか?」との問いかけに、どこにでもいる、ありふれた生きモノの名があがったときは本当に驚いたが、今なお変わりない人気を博している。

从事管理工作的我,虽然很少作为导游出现在旅游现场,但从导游那里经常可以听到每天的旅游状况。在询问“旅客对什么感兴趣?”时,得到的答案是一种到处都有、很普通的生物的名字时我真的很吃惊,不过现在这种生物依然很有人气。

そのありふれた生きモノとは、なんとカエル。中米のコスタリカを訪れたとき、そこここを飛び跳ねている青や赤、オレンジなど色とりどりのカエルを見て、わが子と興奮しながらカメラのシャッターを切り続けた記憶がある。たしかに日本人にとってはどこにでもいて珍しくもないカエルではあるが、「JAPANのカエルはこういう姿カタチなのか!」と思う気持ちはわからなくはない。また、ご自身の生活圏にカエルが存在しない外国人も少なからずいるようで、そういった方々の目から見れば、初めて見る不思議な生きモノとして目に映るわけである。

这个普通的生物就是青蛙。到访中美的哥斯达黎加的时候,我看到了到处跳跃的蓝、红、橙等五颜六色的青蛙,我和孩子兴奋地不停按下照相机的快门。的确,对于日本人来说这些随处可见的青蛙并不稀奇,我能理解他们对于“日本的青蛙是这样的吗!”的疑问的心情。另外,我的生活圈里很多外国人似乎都没见过青蛙,从这些人的角度来看,青蛙可以说是他们第一次看到的不可思议的生物。

その④「なぜ、誰も盗まないのか!?」野菜の無人販売

④“为什么没有小偷!?”无人贩卖的蔬菜

日本の農村部では、野菜の無人販売スポットが道端にあるのは普通の風景である。トマトやキュウリなどが並び、現金を入れる箱が備え付けられている、あの場所である。

在日本的农村地区,经常可以看到路边有无人贩卖的蔬菜。番茄和黄瓜等蔬菜排列在一起,旁边放着装有现金的盒子。

日本人にとっては、欲しい野菜を手に取り、代金を箱にチャリンと入れるのは当たり前の仕組みではあるが、外国人は「ありえない……」と口をそろえる。

对于日本人来说,拿想要的菜,把钱放到箱子里是理所当然的事,不过,外国人却异口同声地说到“这是不可能的……”。

無人販売所を見たアメリカ人は「こんなのが自分の国にあったとしたら、誰もおカネを入れずに野菜を持って帰る」「あの箱だっておカネが入っているワケでしょ!? 絶対に持っていかれるわよ!」と、両手をあげて叫んでいたその言葉を聞き、先日オーストラリアのメルボルンに出張した際、フレームに鍵をかけてあるのにサドル、車輪、ハンドルが外されて無残に放置された自転車が脳裏をよぎった。

看到无人贩卖处的美国人举起双手不可置信地表示“如果是在自己的国家,大家不出钱就会把菜拿走。”“那个箱子里有钱吧!?绝对会被拿走!”听到这些,我脑海里闪现出前不久去澳大利亚墨尔本出差时,明明上了锁的自行车,车座、车轮、车把却都被拆卸下来只剩车架凄惨地矗立在那里的场景。

その⑤「なぜ、ここまでキレイなのか…」ゴミのない町

⑤“为什么这里如此干净...”没有垃圾的小镇

家の前をほうきで掃き、千本格子にかけられたクモの巣を取る主婦の姿は、飛騨古川の朝の日常風景である。それもあって、町はいつも清潔に保たれている。日本人にとっては特に珍しい慣行ではないだろうが、これが外国人旅行者の気を引くらしい。世界中のゲストと相対している私たちのガイドは、「なぜ、あなたの町にはゴミが落ちていないのか!?」と問いかけられることが多いと言う。

在家门前用扫帚扫地,清扫千棂格子上的蜘蛛网的家庭主妇,是飞騨古川早晨最日常的风景。也正因如此,城市总是保持着整洁。对于日本人来说,这是一种习以为常的行为,但似乎却吸引了外国游客的注意。面对世界各地的旅客我们的导游经常会被提出疑问“为什么你们的城市都没有垃圾!?”。

数年前に訪れたパリの町は、中世から残された町並みや景観には圧倒されたが、足元を見ると犬のフンがそこここに落ちており、目線を時々下に落とさないと踏んづけかねない。かつて、犬のオシッコで街灯が腐食して倒れたこともあるとかないとか。わが町では、散歩中の犬がしゃがみ込もうと構えた瞬間、落とされるブツを袋に入れるのはもちろんのこと、アンモニアを薄めるためか、用を足した場所に持参したペットボトルで水をかける風景も珍しくはない。

几年前我到访巴黎的一个城镇,虽然那里遗留下的中世纪街道和景观震撼了我,但每次一瞥脚下就会发现有狗屎,弄得我不得不时刻低头以防自己踩到地雷。以前,狗的尿液腐蚀路灯导致倒塌的事情也曾发生过。在我们的城镇,散步中的狗在蹲下的瞬间主人会把掉下的粪便装进袋子里,或许是为了淡化氨气,还能经常看见主人在小狗大小便后的地方用自己带的塑料瓶撒一些水。

その⑥「何故、この町の子どもたちはこれほどフレンドリーなのか!?」 あいさつをする小学生たち

⑥“为什么这个城镇的孩子们都这么友好!?”打招呼的小学生们

朝の飛騨古川の風景は、古い町並みに暮らす飛騨びとの営みを感じられるすてきなひとときである。これは、私たちのような移住者にはもちろん、外国人にとってはなおさらのようだ

早晨的飞騨古川是一个能让人感受到生活在古老街道上的飞騨居民的美好时光。不仅对于我们这些移居者而言,对于外国人来说更是如此。

「オハヨウゴザイマス」「ハ、ハロー……」とはにかみながらあいさつするランドセル姿の子ども、昼休み時に教室からツアーグループに手を振ってくれる中学生や担任教師など、フレンドリーな住民への驚きと喜びは尽きない。

不管是背着双肩书包害羞地说着“早上好”、“哈啰”的小朋友还是午休时从教室向外给游客招手打招呼的中学生和任课老师,大家对这些亲切的居民都充满了惊奇和喜爱。

その⑦「この町のクルマはすべて電気自動車!?」静かすぎる町の様子

⑦“这个地方的汽车都是电气自动车吗!?”过于安静的街道

この問いかけは、飛騨古川に宿泊したイタリア人から発せられたものである。真意を問うと「昨夜から何一つ音がしない。クルマの往来の音すら聞こえない」とのこと。

这个问题是由住在飞騨古川的意大利人提出的。他这个问题更深层的含义是:“从昨天晚上开始就一点声音都没有了。连来往的车声都听不见”。

人口が減り続ける地方部においては、確かに夜になると静けさが町を覆う。その静けさが外国人にとっても魅力となるという話だ。冷静に考えると、各国より日本旅行を実現するにはそれなりの費用が必要で、そうした費用を稼ぎ出せる所得の持ち主の多くは自国の都市部に住んでいるだろうから、静けさそのものが価値になるわけである。静けさに加え、明かりの少ない静かな街の、星の広がる夜空も立派な価値となることは言うまでもない。

在人口持续减少的地方,一到夜晚整个城市就会被静谧所笼罩。也就是说,这种静谧对外国人来说也是一种魅力。仔细思考会发现,从各国来日旅游都需要支出相应的费用,而能赚到这些费用的大多数人在自己国家都居住于大都市,因此,静谧就变得很有价值了。除了静谧,灯光较少的寂静街道、布满繁星的广阔夜空也都有不必言说的崇高价值。

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