1 先行研究

1.1『紅楼夢』の花についての研究

現在、国内外でも『紅楼夢』と『源氏物語』に関しての著書と論文が多い。そして、「美人を花に譬え」という現象においての論文と著作も少なくない。国内では、北京語言大学漢語学院の周思源は「論紅楼夢の芸術魅力」という論文で、『紅楼夢』での象徴性が人物の運命や環境などに託して表現しただけではなく、建物や器物や草花や詩の籤などの細かいところまでによって表現してきた。また、『紅楼夢の創作方法論』という著書で、象徴性を表すためによく物象符号系統を用いた。花もその中で大切な物象であるという。『紅楼夢』を研究する専門家の周汝昌は『紅楼夢の芸術魅力』と『紅楼小講』でそう述べた。曹雪芹が花を託して『紅楼夢』の女性イメージを作り、女性の結末もそれによって暗示された。さらに、『紅楼夢』は新しくて独特な『群花譜』と見なされる。
国外では、日本学者の伊藤漱平の《『紅楼夢』に於ける象徴としての芙蓉と蓮と-林黛玉、晴ブン並びに香菱の場合》と森中美樹の《『紅楼夢』の中の海棠-夢の世界に現実を見つめて咲いた花-》二つの論文で、『紅楼夢』はよく花を用いて女性イメージを象徴したことを提出して、具体的に林黛玉や晴ブンという人物イメージを分析した。

1.2『源氏物語』の花についての研究

『源氏物語』に関して、国内では上げればきれないほど多い。1936年、周作人は『談日本文化書』という文章の中で「源氏物語はまさに日本の紅楼夢だ』と書いていて、始めて『源氏物語』を『日本の紅楼夢』と呼んだ。二十世紀八十年代、豊子愷の『源氏物語』の中国語訳本が世に問いた後、中国の『源氏物語』についての研究が始まった。四川外国語学院の教授姚继中は著作の『「源氏物語」と中国文化』でそういう論点を提出した。『源氏物語』が日本伝統文化と文学に生じたものだが、それと同時に中国伝統文化の精華も入れて込んだという。そして東方文化を研究している専門家叶渭渠は『日本文学史』と『日本文明』で、『源氏物語』が体現してきた仏教観や自然観や審美観などと中国文化と文学との関係を述べた。そして、『源氏物語』と『紅楼夢』を対比して、相違点と共通点を指摘した。また、国内で『源氏物語』の登場人物、たとえば源氏光や紫の上、玉鬘、末摘花、朝顔などについての論文と著作も多い。
日本では、芳賀矢一は彼の著書『国民性十論』と『日本人』でそう述べている。『源氏物語』であっても、その中から出た和歌であっても、花に好んで、よく花のことを描写して、人を花にたとえる。それは、稲作文化によって形成してきた日本人の新植物性という影響が文学に及んで、そういう文学伝統が定まったからである。そして、日本の学者青木登は『源氏物語の花』という作品で述べたように、「季節を彩る花、その移ろいの中に「源氏物語」の世界は展開された。全五十四帖に登場する花を各帖ごとに取り出し、その花を通して「源氏物語」の世界を旅する。」

1.3 研究の目的と意義

上述のように、国内外でも、たくさんの学者や研究者は『源氏物語』と『紅楼夢』二つの作品において、多くの著書や論文を作り上げて、その二つの作品から表現してきた「美人を花に譬え」という描写についても研究した。しかし、その文学現象を二つの作品において比べて研究することはまだない。そして、大部分の研究者はただその現象の共通点を探し出して、共通点の裏に隠していた相違点が見つからなっかた。私の論文の目的は例の比較をして、共通点と相違点を探し出し、それぞれの原因を見つかり、「美人を花に譬え」という描写を通して、中日文化と文学のそれぞれの特性を探求したい。それによって、中日の「花を美とする」という共同の審美観があるので、日本と中国の文化や文学の相互理解と交流を深める。