今年6月、文芸誌『新潮』に掲載された長編小説『火山のふもとで』が、各紙の文芸時評で大きな話題となった。著者は本作がデビュー作となる松家仁之さん(53)。一昨年まで編集者として活躍していた松家さんが、作家に転身した理由は何だったのか。

今年6月,文艺杂志《新潮》上刊登的长篇小说《火山脚下》,成为了各大文艺时评报刊的热门话题。作者松家仁之(53岁)以此作品出道。直到前年还是编辑的松家先生为何转身成为作家了呢?

建築家を主人公とした小説を書きたいというのは10年くらいまえからぼんやりと思っていました。実際に会社という組織を離れて個人でやってみようと思ったのは、数年前から大学で教えるようになったことも大きいかもしれません。まだ何者でもなく、たくさんの可能性を持っている学生たちを見ているうち、背中を押されたような気がします」

“依稀记得10多年前就想要以建筑师为主人公写一部小说。实际上,离开公司组织靠个人打拼,很大程度上可能是受几年前开始的大学教书的影响。看着那些还未成气候,潜力大的学生们,觉得自己也被他们推了一把。”

主人公は若き建築家・坂西徹。それにしても、どうして建築家を書こうと思ったのだろう。

小说的主人公是年轻的建筑师坂西彻,说起来,为什么会想到写一位建筑师呢?

「僕が小学校高学年から中学生の頃は、高度経済成長の真っただ中。街中に新しい建物がどんどんできてゆくのを見たり、大阪の万博を見たりするうち、建築って面白そうだな、と興味を持った。ただ理数系が苦手だったので、建築家になることは早々に諦めました(笑)。でも建築はずっと好きで、設計図集を見たり、いろいろな本を読みつづけてきました。ですからこの小説を書くにあたって、特別な取材はなにもしていないんです。長い時間をかけて自分の中にたまっていたものを出していったという感じです」

“我读小学高年级到中学的那一段时间,正是经济高速增长的时期。街上到处都是新建的建筑,参观大阪万博会,萌发了对建筑的兴趣。但是我很不擅长理科,早早就放弃了当建筑师的梦想(笑)。可一直热爱建筑,喜欢看设计图、阅读各种各样相关的书籍。因此在撰写这篇小说的时候,并没有特地进行取材。仿佛是将长时间积累在自己内心的东西,一下子倾泻出来。”

豊富な知識と経験に裏打ちされた美しい文章で物語は紡がれ、時代に左右されない質実でうつくしい建物を構想する村井俊輔と、現代的で華やかな作品を目指す船山圭一という、対照的な2人の建築家が登場する。

丰富的知识、扎实的经验编织出优美的文章,村井俊辅构想出不被时代所左右的质朴而美丽的建筑,与目标是现代化的、华美作品的船山圭一形成对照,两位迥然不同的建筑师粉墨登场。

「主人公が働くのは村井設計事務所で、僕も個人的には村井が作るような建築が好きですが、物語では船山のポストモダン的な建築が世に残っていく。でも実現はしなくとも、同じくらい鮮やかに、誰かの中に刻まれてゆくものがあると思うんです。小説というのは、形に残らなかったもの、消えてゆくものを鎮魂することができるのではないでしょうか」

“主人公在村井设计事务所工作,我个人来说也喜欢的是村井设计的建筑,但故事里流传下来的却是船山的后现代建筑。即使无法实现,却同样能绚烂地烙印于心。所谓小说,就是那些消失了的事物的安魂曲吧。”

28年間の編集者時代には、数々の作家を担当した。

作者在担任编辑的28年间负责出版了很多作家的作品。

「お世話になった作家の方々から手紙やメールをいただいて、本当に励まされました。それぞれ丁寧に読んで言葉を尽くしてくださって、ありがたいことですね」

“从受关照的各位作家那里收到了信件、邮件,真的非常受鼓舞。全部认真仔细地阅读了,十分感激。”

次作は短編か中編になりそうという松家さん。満を持して登場した超大型新人の行方に、目が離せない。

据松家先生说下一次的作品可能是短篇或中篇,满腹经纶的超龄新人将去向何方,敬请期待。

 

 

作者简介:

松家仁之:1958年出生于东京都。作家。毕业于早稻田大学第一文学部,后进入新潮社。曾经创刊《新潮クレスト・ブックス》、担任《思考者》、《艺术新潮》的主编,2010年退社。今年6月,于《新潮》发表这篇作品。现在还担任庆应大学综合政策学部的特聘教授。

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