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 昔々、ある国に王子さまがおりました。
 王子さまも年頃で、そろそろ、お妃を迎えたいと思いました。
 けれど王子さまにふさわしいお妃は、本物の完全なお姫さまでなくてはなりません。
 そこで王子さまは、世界中を旅して回り、どこから見ても完全なお姫さまを探しました。
 ところがどのお姫さまも、美人でなかったり、品がなかったりして、どうしても王子さまのお眼鏡にかないません。
 王子さまはがっかりして国へ戻ると、すっかり気持ちが沈んでしまいました。
 そんなある夜の事、ひどい嵐の中を誰かが訪ねてきました。
 の門を開けると、雨にぐっしょり濡れた一人の娘が立っていました。
 「私は王子さまがお探しになっている、本物の姫です」
 娘がそう言うので、その夜は城に泊めてやることにしました。
 「本当のお姫さまかどうかは、すぐに分かる事ですよ」
 王子さまのお母さんはそう言うと、娘のベッドにちょっとした工夫をしました。
 まず一粒のエンドウ豆を置き、その上に布団を二十枚も重ねて、さらに二十枚の羽根布団をかけた上に娘を寝かせたのです。
 次の朝、お母さんは娘に、ベッドの寝心地はどうだったかと尋ねました。
 すると娘は、眠そうな目をこすりながら、
 「せっかくのおもてなしですが、寝心地が悪くて少しも眠れませんでしたわ」と、答えたのです。
 お母さんは、更に聞きました。
 「寝心地は悪いと言いましたが、どのように悪かったのですか?」
 「はい。ベッドの下に、何かが入っていたのではありませんか?背中にあざがついてしまいました」
 お母さんは、娘が、本当のお姫さまだと思いました。
 だって、たった一粒のエンドウ豆であざができてしまうなんて、ふっくらしたベッドでしか寝た事のない人に決まっています。
 こうして王子さまは、やっと本物の完全なお姫さまを、お妃に迎えることができたのです。

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