关键词:小判【こばん】
「やいやい。このごちそうはどうした! ごちそうを買う金があるくせに、おらのところに金を借りに来たのか!」 「まあまあ、気をしずめてください。これには、深いわけが」  さすけは、あのゲタの話をしました。 「なに、小判の出るゲタだと。  こいつはいい。  これは貧乏人のお前たちより、金持ちのおらが持つべきだ。  もらっていくぞ」  ごんぞうおじさんは、ゲタを持って帰りました。  家に帰ったごんぞうおじさんは、さっそく大きなふろしきを広げました。  そしてゲタをはいて、ふろしきの上に乗ると、 「へっヘっへ、まずは、ひと転び」 と、言って、スッテンと転びました。  すると小判が チャリーン。 「おおっ! 本物の小判じゃ!」  さあ、それからというもの、 転んで転んで、小判がほしい。 チャリンコ、チャリンコ、小判がほしい。  ごんぞうおじさんは、夢中になって転びました。 「おおっ! 小判がだんだんでっかくなるぞ! おらよりでっかくなっていくぞ! おら、日本一の大金持ちじゃあー!」  ごんぞうおじさんは、転ぶたびに自分が小さくなっていく事にぜんぜん気づいていません。  その頃、さすけはゲタをはいて転ぶと背が低くなる事を言い忘れたのを思い出して、あわててごんぞうおじさんに会いに行きました。   家に行ってみますと、閉めきった家の中でチャリーン、チャリーンと音がします。 「おじさーん、おじさーん!」 と、呼んでみましたが、返事がありません。  さすけは、とびらを力まかせに開けました。  すると中から、小判がジャラジャラと流れ出てきます。 「うああっ! ごんぞうおじさん。どこだあー!」  小判を押しのけて家の中へ入ると、ごんぞうおじさんは山のようにつまれた小判のすみで、バッタのように小さくなっていました。  それでも転んでは起き、転んでは起きして、小判をどんどん出しています。  そのうちにとうとう小さな虫になって、どこかへ飛んでいってしまいました。  その後、さすけはごんぞうおじさんの家をひきとって長者になり、お母さんと幸せに暮らしました。  欲張りすぎると、ろくな事がありませんね。