关键词:大江山(おおえやま) 酒呑童子(しゅてんどうじ) 源頼光(みなもとのよりみつ)
酒呑童子 むかしむかし、大江山に酒呑童子と言う、鬼の盗賊がいました。 酒呑童子はお酒に酔うと、いつも上機嫌になって、ポンポンと頭を叩いてニヤニヤと笑うのが癖でした。 ところが、源頼光たちに退治されてからは、酒呑童子は首だけになってしまいました。 お酒好きの酒呑童子は、首だけになっても酒を飲むのを止められません。 昼も夜も、まっ黒な雲に乗って空を飛んで歩き、酒屋を見つけると下りて来て、 グワグワグワーァ~と、気味の悪い声で脅かして、酒をただ飲みするのです。 こんなふうにして酒屋を荒らし回ったものですから、京都や大阪では黒雲を見ただけで、どこの酒屋も大戸を下ろしてしまいます。 仕方なく酒呑童子は黒雲に乗って、江戸ヘやって来ました。 「ありゃ。あそこに酒屋があるぞ」 酒屋の前で、ヒラリと雲から飛び降りると、 「グワグワグワーァ~。上等の酒を五升ばかり、かんをつけて持ってこーい!」 酒屋の者たちは、まっ青になりました。 持って行かなければ、何をされるか分かりません。 急いでかんをつけると、杯代わりにどんぶりをそえて、ブルブル震えながら差し出しました。 「ど、どうぞ。手じゃくでお飲みなすって」 置いて逃げ様とすると、首が怒鳴りました。 「おい、おい。おれは、この通り首だけだ。手じゃくではやれん。飲ませてくれ」 と、大きな口をバックリと開けました。 酒屋の主人は仕方なく、どんぶりについでは飲ませ、ついでは飲ませして、五升の酒をみんな飲ませてやりました。 童子の首はすっかり酔っぱらって、上機嫌です。 「ああ、久しぶりで、何ともいえん良い気持ちだ。ついでに、わしの頭をポンポンと叩いてくれ」 と、言います。  酒屋の主人が怖々ポンポンと叩いてやると、首はいかにもうれしそうにニヤッと笑ったそうです。