雨のにおい、というものがある。木々の葉が洗われ、青い香気が降り注ぐ。地面のちりが、たたかれて舞う。やがて、湿った土の香りが立ち上る。そんな気の利いたものではなく、実は慌てて開いた傘のにおいだったりする。

雨是有气味的。雨水冲刷着树叶,传来植物的清香。地上的灰尘被雨水打的蹦蹦跳跳上下飞舞。于是,湿润泥土的气息渐渐升起来了。实际上我们所感受到的并非这些令人愉悦的气息,而是慌慌张张打开伞的气味。

★降り注ぐ:1.倾盆而降。▲一日絶えなく雨が~。2.照射、射入。▲日光が~。▲陽光がさんさんと~。/阳光灿烂。3.纷纷而来。▲非難の声が~。

これでも平年より8日遅いという。南から少しずつ、天気予報の傘マークが増えていくのだろう。同じ日、梅雨のない北海道の釧路や根室では桜が開花した。日本列島の「季差」を思う五月である。

冲绳地区从昨天开始进入了梅雨季节。与常年同期相比晚了八天。此后的日子里,从南至北天气预报中伞的标志将会渐渐增多的吧。就在同一天,远未进入雨季的北海道的驯路和根室的樱花盛开了。这就是让人深深感到日本列岛“季节差异”的五月。

ずいぶん前のことだが、作家の山口洋子さんが、雑誌の随筆か何かで「折り畳み傘を持ち歩く男はイヤ」という趣旨のことを書いていた。目先のちっぽけなリスクを意識し、いつも準備万端、計算ずくで動く男。なるほど、ロマンや男気にこだわる山口さんが嫌いそうなタイプだ。

很早以前的事了,作家山口洋子曾在杂志上发表了一篇以“讨厌拿着折叠伞到处跑的男人”为主要内容的随笔。发现眼前极小地危险,总是做好完全地准备,算计一切的男人。当然,喜欢浪漫、缺乏男子汉气概这就是山口女士讨厌的类型。

★折り畳む:折叠。▲新聞を~。
★ちっぽけ:极小的。▲~な工場。

厳しいが鋭い男性論を読んで、しばらく傘を持ち歩くのをやめた記憶がある。でも、にわか雨に何度かやられるうちに、私の傘は遠慮がちにかばんに戻り、前と同じ底のあたりに寝転んだ。

读了她那严厉而尖锐的男性论,有好长时间没有打伞出过门了。但是,几次被瓢泼大雨淋成落汤鸡时,我的伞还是放回了包里,跟以前一样在房跟前那打瞌睡。

必需品とは言わないが、取材でも営業でも、外回りの仕事には折り畳み傘が重宝する。夕立に遭い、ぬれねずみで約束の相手に会うわけにはいかない。こんな言い訳からしてすでに、小さな仕事人間の癖(へき)だろうか。

虽说不是必需品,但对于做新闻和销售的这样常在外面跑的工作来说可是很重要的东西。遇到骤雨,淋成落汤鸡怎么能去见约的人呢。这样的辩解应该是小小上班族的一点儿毛病吧。

★ぬれねずみ:落汤鸡。

確かに、都会なら雨宿りの場所などいくらでもある。軒に飛び込み、しばし休んだ後の、雨上がりのにおいも悪くない。街路樹も歩道も清々と生き返る。時には、雨の気まぐれを五感で楽しめるような、時間と心の遊びを持ちたい。

的确,城市里躲雨的地方有很多。钻进屋檐下稍事休息,闻闻雨的气息并不是件坏事。林荫树、街道又恢复了往日的清洁。希望有空的时候能用五官来感受雨的气息,让身心得以放松一下。

★雨宿り(あまやどり):避雨。▲のきしたで~する。

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