日语文学作品赏析《浦島太郎》
むかし、むかし、
浦島太郎は、毎日つりざおをかついでは海へ出かけて、たいや、かつおなどのおさかなをつって、おとうさんおかあさんをやしなっていました。
ある日、浦島はいつものとおり海へ出て、一日おさかなをつって、帰ってきました。
「まあ、そんなかわいそうなことをするものではない。いい子だから」
と、とめましたが、子どもたちはきき入れようともしないで、
「なんだい。なんだい、かまうもんかい」
といいながら、またかめの子を、あおむけにひっくりかえして、足でけったり、
「じゃあ、おじさんがおあしをあげるから、そのかめの子を売っておくれ」
といいますと、こどもたちは、
「うんうん、おあしをくれるならやってもいい」
といって、手を出しました。そこで浦島はおあしをやってかめの子をもらいうけました。
子どもたちは、
「おじさん、ありがとう。また買っておくれよ」
と、わいわいいいながら、行ってしまいました。
そのあとで浦島は、こうらからそっと出したかめの
「やれやれ、あぶないところだった。さあもうお帰りお帰り」
といって、わざわざ、かめを海ばたまで持って行ってはなしてやりました。かめはさもうれしそうに、首や手足をうごかして、やがて、ぶくぶくあわをたてながら、水のなかにふかくしずんで行ってしまいました。
それから二、三日たって、浦島はまた舟にのって海へつりに出かけました。遠い
「浦島さん、浦島さん」
とよぶ声がしました。おやとおもってふりかえってみますと、だれも人のかげは見えません。その
浦島がふしぎそうな顔をしていると、
「わたくしは、先日
かめがこういったので、浦島はびっくりしました。
「まあ、そうかい。わざわざ礼なんぞいいにくるにはおよばないのに」
「でも、ほんとうにありがとうございました。ときに、浦島さん、あなたはりゅう
「いや、話にはきいているが、まだ見たことはないよ」
「ではほんのお礼のしるしに、わたくしがりゅう宮を見せて上げたいとおもいますがいかがでしょう」
「へえ、それはおもしろいね。ぜひ行ってみたいが、それはなんでも海の底にあるということではないか。どうして行くつもりだね。わたしにはとてもそこまでおよいでは行けないよ」
「なに、わけはございません。わたくしの
かめはこういって、背中を出しました。浦島は半分きみわるくおもいながら、いわれるままに、かめの背中にのりました。
かめはすぐに白い
「さあ、りゅう
かめはこういって、浦島を
「しばらくお待ちください」
といったまま、門のなかへはいって行きました。
二
まもなく、かめはまた出てきて、
「さあ、こちらへ」
と、浦島を
やがて、
「浦島さん、ようこそおいでくださいました。先日はかめのいのちをお
と、乙姫さまはいって、ていねいにおじぎしました。やがて、たいをかしらに、かつおだの、ふぐだの、えびだの、たこだの、大小いろいろのおさかなが、めずらしいごちそうを山とはこんできて、にぎやかなお
ごちそうがすむと、浦島はまた乙姫さまの
「こんどは四季のけしきをお目にかけましょう」
といって、まず、東の戸をおあけになりました。そこは春のけしきで、いちめん、ぼうっとかすんだなかに、さくらの花が、うつくしい絵のように咲き
次に、南の戸をおあけになりました。そこは夏のけしきで、
次に西の戸をおあけになりました。そこは秋のけしきで
いちばんおしまいに、北の戸をおあけになりました。そこは冬のけしきで、野には
浦島は何を見ても、おどろきあきれて、目ばかり見はっていました。そのうちだんだんぼうっとしてきて、お酒に
三
毎日おもしろい、めずらしいことが、それからそれとつづいて、あまりりゅう宮がたのしいので、なんということもおもわずに、うかうかあそんでくらすうち、三年の月日がたちました。
三年めの春になったとき、浦島はときどき、ひさしくわすれていたふるさとの
「おとうさんや、おかあさんは、いまごろどうしておいでになるだろう」
と、こうおもい出すと、もう、いても立ってもいられなくなるような気がしました。なんでも早くうちへ帰りたいとばかりおもうようになりました。ですから、もうこのごろでは、歌をきいても、
その
「浦島さん、ご気分でもおわるいのですか」
とおききになりました。浦島はもじもじしながら、
「いいえ、そうではありません。じつはうちへ帰りたくなったものですから」
といいますと、乙姫さまはきゅうに、たいそうがっかりした様子をなさいました。
「まあ、それはざんねんでございますこと。でもあなたのお顔をはいけんいたしますと、この上おひきとめ申しても、むだのようにおもわれます。ではいたし
こうかなしそうにいって、乙姫さまは、
「これは
と、くれぐれもねんをおして、
「ええ、ええ、けっしてあけません」
といって、玉手箱をこわきにかかえたまま、りゅう
もうそこには、れいのかめがきて待っていました。
浦島はうれしいのとかなしいのとで、
「では浦島さん、ごきげんよろしゅう」
と、かめはいって、また水のなかにもぐって行きました。浦島はしばらく、かめの
四
浦島は海ばたに立ったまま、しばらくそこらを見まわしました。春の日がぽかぽかあたって、いちめんにかすんだ海の上に、どこからともなく、にぎやかな舟うたがきこえました。それは
「おかしなこともあるものだ。たった三年のあいだに、みんなどこかへ行ってしまうはずはない。まあ、なんでも早くうちへ行ってみよう」
こうひとりごとをいいながら、浦島はじぶんの家の
「ふしぎだ。ふしぎだ」
とくり返しながら、きつねにつままれたような、きょとんとした顔をしていました。
するとそこへ、よぼよぼのおばあさんがひとり、つえにすがってやってきました。浦島はさっそく、
「もしもし、おばあさん、浦島太郎のうちはどこでしょう」
と、声をかけますと、おばあさんはけげんそうに、しょぼしょぼした目で、浦島の顔をながめながら、
「へえ、浦島太郎。そんな人はきいたことがありませんよ」
といいました。浦島はやっきとなって、
「そんなはずはありません。たしかにこのへんに住んでいたのです」
といいました。
そういわれて、おばあさんは、
「はてね」と、
「ああ、そうそう、浦島太郎さんというと、あれはもう三百年も前の人ですよ。なんでも、わたしが子どものじぶんきいた話に、むかし、むかし、この
こういって、また
浦島はびっくりしてしまいました。
「はて、三百年、おかしなこともあるものだ。たった三年りゅう宮にいたつもりなのに、それが三百年とは。するとりゅう
こうおもうと、浦島はきゅうにかなしくなって、さびしくなって、目の前がくらくなりました。いまさらりゅう宮がこいしくてたまらなくなりました。
しおしおとまた浜べへ出てみましたが、海の水はまんまんとたたえていて、どこがはてともしれません。もうかめも出てきませんから、どうしてりゅう宮へわたろう手だてもありませんでした。
そのとき、浦島はふと、かかえていた
「そうだ。この
こうおもうとうれしくなって、浦島は、うっかり
浦島はからになった
「なるほど、
と、ざんねんそうにつぶやきました。
春の海はどこまでも
浦島は、ぼんやりとむかしのことをおもい出していました。
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