日语文学作品赏析《『紙風船』について》
望外の好評であつた。前二作がいづれも西洋を舞台としたせいか、これをみて「彼も亦日本人に非ずや」と叫んだ批評家もあるくらゐ、これでどうやら、わが文壇との血縁のやうなものが生じたらしい。この種のフアンテジイに何となく反感をもつ人もゐなくはなかつた――その点、実のところ私は、先駆者のつもりでゐた。新劇壇は表現派ばやりの時代とて、一部では軽薄呼ばはりをする声も聞えたが、似而非深刻の厭味に比してまだしも恕すべきであると自ら慰め、爾来その、「傾向」をやゝ固執する「傾向」にさへ陥らうとした。今なら、こんなものは誰でも書けさうな気がする。いや、誰も書かないにきまつてゐる。思ひ出の作品とは云へるが、これを以て代表作とされるなら、私は恥死するであらう。但し、この集には、これを入れるより外はないと考へた。足跡は足跡なのである。
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