2010年には国内総生産(GDP)で日本を追い越し、世界2位の経済大国となった中国。現在では、「中国のシリコンバレー」と言われる深センの発展をはじめ、ものづくりの分野でも注目を集めている。かつての中国人留学生たちは技術を学びに日本に来たが、現在は何を目的に日本に来ているのだろうか。

中国国内生产总值(GDP)于2010年超越日本,成为世界第二的经济大国。目前,以被称为“中国硅谷”的深圳的快速发展为首,制造业方面也受到了广泛关注。过去的中国留学生为了学习技术而来到日本,那么现在的留学生又是抱着什么目的来到日本呢?

有名国立大学を出ても月収6万 中国の厳しい就職事情

即使是从国立名校毕业月收入也只有6万日元 中国严峻的就业形势

2年前に来日した陽さん(仮名・28歳)は、「日本に来たのは、仕事で活躍できる場を見つけるため」と話す。

2年前来日的阳桑(化名・28岁)说“来日本是为了找到能够发挥自己才能的工作”。

陽さんは現在、都内大学の修士過程で社会学を専攻している。中国の地方都市にある国立大を出ており、専攻は日本語だった。中学生時代から日本のアニメ・マンガに親しみ、大学生のころは中国国内のコスプレイベントにも頻繁に参加していたという。

阳桑现在在东京一所大学学习社会学的硕士课程。本科毕业于中国非一线城市的一所公立大学,专业是日语。中学时代开始就接触日本的动画漫画,大学期间还经常参加国内的cosplay活动。

普段から日本のコンテンツに触れていた影響もあってか、大学3年の時に受けた日本語能力試験では、最難関の1級を満点で突破した秀才である。英語も不自由なく話し、中国ではそこそこ有名な国立大学を出た彼女なら、中国国内の就活でも引く手あまただったのではないか。

或许是平常就接触到很多与日本相关内容的原因,大学3年级时她就以满分通过了日语能力考试中难度最高的1级。还能用英语交流,又是从中国较为有名的公办大学毕业,在国内就业不是应该也很抢手吗?

しかしながら陽さんは「仕事はあることはあったけど、自分の理想とはかけ離れていた」と嘆く。

然而阳桑却感叹“虽然能找到工作,却与自己的理想相差甚远”。

「大学を卒業してから数年は大連にある国営企業で働いていました。中国に出張に来る日本人コンサルタントの通訳が主な業務だったのですが、とにかく待遇がクソ。土日も日本人の買い物やサポートに付き合って、毎日残業も当たり前。だけど、給料は手取り4000元(日本円で6.7万円ほど)程度しかありませんでした」

“大学毕业后在大连的某家国营企业工作了几年。主要工作是为来中国的日方专家人员担任翻译 ,待遇很不好。周末要陪日本人购物,加班更是家常便饭。但是到手的工资才4000块(6.7万日元左右)”

エリート中国人留学生が見た 日本の就活の異様さ

中国精英留学生眼中 在日本找工作的怪异之处

中国の基準で言えば、都市部であっても新卒で4000元は比較的高い方である。しかし、有名大学の理系出身者などは、日本円にして1000万円以上の年収を手にする人もそれなりにいるという。しかも、中国では物価や不動産の上昇率が高いため、成長産業に従事する一部の人たち以外は、たとえ優秀であっても稼げる額には限界があると陽さん考えている。

以中国的收入标准来说,即使是在城市的毕业生能拿到4000元的工资就属于较高的了。不过,据说也有名校毕业的理科生年收入达到1000万日元以上。而因为中国的物价和房价不断上涨,除了从事朝阳产业的一部分人外,即使再优秀能赚到的钱也是有限的。

加えて、国営企業特有の体質が陽さんには合わなかった。

另外,国有企业特有的体制也不适合阳桑。

「国営企業はコネがものを言う世界です。私が勤めていた時も、直属の上司が社長の親戚だったので、大した能力もないくせに、かなりいいポジションに就いていて、それがとにかく気に食わなかった。他の従業員にしても、ダラダラお茶を飲みながら時間を潰しても給料は保証されている。一方で、どんなに頑張って成果を残しても、それが報われることはありませんでした」

“国营企业就是一个关系社会。我在那里工作时,直属上司是大老板的亲戚,明明没什么大本事,却能得到这么好的位置,总觉得咽不下这口气。其他的同事,也是喝着茶消遣着时间就能得到一定数额的工资。而我无论怎么努力,做出怎样的成绩都没有回报。”

陽さんは、誰よりも日本語を流暢に話し、仕事もできるという自負がある。実際、取引先からは仕事ぶりが評価され、指名されてアテンドを依頼されることも多かったという。しかし、そうした努力も会社では評価されることなく、給与が上がる見込みもない――。そんな閉塞感が、陽さんを日本への留学へと駆り立てた。

阳桑有着一口比任何人都流利的日语,对工作能力也有自信。实际上,很多客户对她工作评价很高,指名把工作交给她。但公司没有把这样的努力看在眼里,也没能给她涨工资。这样的封闭感使阳桑萌发了赴日留学的想法。

大学院の2回生となった彼女は今、日本で就職活動を続けている。しかし、ここにきて自信をなくしているのだと話す。

已经是研究生2年级的她如今在日本找工作。但是,她说自己来到这里后就失去了自信。

「日本の就活は実力を見るというよりも、就活のテクニックを評価されている気がします。大手企業のインターンに行きましたが、完全に男子の社会で、女性はその横で『なにこれすごーい』って媚びてばっかりのように見える。正直、この人たちと一緒に働きたくないというか…」

“在日本找工作,比起实力找工作时的技巧更有用。去大公司实习的时候,感觉完全是体育会系男性的世界,女性只会在旁边谄媚‘这是什么好厉害啊’。说实话,我真不想跟这些人一起工作…”

体育会系:狭义的解释是学生时代所属于某个体育社团。泛指上下关系明确,对上司绝对服从,对工作和组织怀有热情,对待工作努力而有韧性的人。体育会系人才的精神品质与日本企业以往的年功序列制度极为契合,而受到青睐。如今这一倾向也有所变化。

カネ持ちは欧米に進学 日本に来るのは中間所得層

有钱人都去欧美留学了 来日本的是小康家庭

陽さんと同じく都内の大学院に通う孫さん(仮名・25歳)も、中国での就職に一旦見切りをつけ、卒業後は日本で働く予定だ。

和阳桑一样在东京攻读硕士的孙桑(化名・25岁)也是不准备回中国找工作,毕业后想在日本工作。

「日本の大学の学部を卒業した時、中国に戻って就職をしようかとも思ったのですが、中国の就活がかなりエグい状況になっていることを知って、いろいろ考え直しました。中国は学生の数が多いから競争は激しい。しかも、コネの力が強いので、自分の実力でいい企業に行く人は一握り。相当な努力が必要です」

“从日本的大学本科毕业的时候,我也想过回国找工作,但是知道中国的求职情况相当严峻,所以还是考虑了很久。因为中国的学生很多,所以竞争很激烈。而且,国内很注重关系,凭借自己的实力找到一个好工作的人很少。需要付出相当大的努力。”

孫さんいわく、中国でいい企業に就職するには、国内の有名大学を出るか、アメリカやイギリスの大学などで修士以上の学歴を収めることがベストだという。欧米に留学するのは、それなりの財力を有するアッパークラスの家に生まれた子どもが多い。コネもなく、親の経済力も高くない学生は、国内でできるだけいい大学に進もうと考える。ただし、その受験戦争は過酷を極めるという。

孙桑说,在中国想到好的企业就职,最好是国内名牌大学毕业,或者有美国、英国等国家的硕士以上学历。很多在欧美留学的孩子家庭经济条件都很好。所以家里没有关系,父母经济实力也不怎样的学生会绞尽脑汁考取国内的好大学。而高考又是非常残酷的。

「高校時代は朝7時から授業があって、夕方以降も23時まで自主学習をしていました。テストが近づくと、数日間お風呂にすら入らないで、ギトギトの頭で一心不乱に勉強する人も何人かいた」

“高中时从早上7点开始上课,晚上自习到23点。临近考试,很多人几天内连澡都不洗,一门心思专心学习”

学年で上の方の成績だった孫さんは、高校2年のときに特進クラスに進むが、その後精神的に落ち込むことが多く、徐々にフェードアウトしていった。

成绩曾排在年级前几位的孙桑在高中二年级时进入重点班,但之后精神经常萎靡不振,渐渐就落后了。

「結局、中国での大学受験は諦めることになりました。当時は未来を悲観してけっこう落ち込んでいましたね。その後、もともと興味があった日本語を学んで、日本の大学に入学することになるのですが、結果的にはこれで良かったと思っています」

“最后,我放弃了高考。当时对未来感到悲观,心情非常低落。在那之后,我学习了之前就很感兴趣的日语,然后考进了日本的大学,结果还是不错的。”

中国にも一度レールから外れてしまえば巻き返しが難しいという事情があるが、海外経験というひとつのイレギュラーな手段を使えば、ややアドバンテージが上がるのだと孫さんは言う。

孙桑说,在中国一旦脱离轨道就很难再回到原来的位置,但如果用上自己的国外留学经验,就会略显优势。

「私の知り合いの中国人留学生の中には、中国の4年制大学を卒業したものの、いい就職先が見つからず、日本の大学院に進学した子が多い。日本で数年働けば、それが経験として認められて帰国後にいい仕事に就きやすくなるので、それを狙っているんです。お金持ちのエリート層は欧米に行きがちなので、日本で留学する子は、やっぱり中間所得層の子がメインのイメージかな」

“我认识的中国留学生中,有很多都是在中国读完4年制大学后,因为找不到好的就业机会,而到日本读研。因为只要在日本工作几年之后有了经验,回国找工作就会容易些,所以很多人都这样做。印象中有钱的精英层喜欢去欧美,所以在日本留学的人大多还是来自小康家庭。”

日本に来ても国籍は変えたくない!「経済難が来たら中国に帰りたい」

即使来了日本也不想改变国籍!“如果发生经济危机,想要回中国”

中国の厳しい就職事情を生き抜くためのひとつの手段でもある日本への留学。ただ就職のためだけでなく、日本への興味など様々な理由が重なって、彼女たちは来日を決断した。

留学日本是一种回避中国严峻就业情况并生存下去的手段。当然,不仅仅是为了工作,加上对日本的兴趣等各种各样的理由,使她们最终决定来日本。

ちなみに、最初に紹介した陽さんは、中国で働いていたころから日本人の彼氏がいたため、それも留学への後押しとなった。

而文章最开始提到的阳桑,在中国工作的时候就交了一个日本男朋友,这也成为了她日后留学的原因之一。

「付き合っていた男性が東京にいたから、日本に行けば一緒にいる時間も増えるかなと思って、勢いで来ちゃった面もあります。タイプで言うと、優しくて決断力のある人が多いから、私は日本人男性のほうが好み」

“因为男友在东京,所以想着去日本的话,在一起的时间会多一些,当然也有顺势而为的冲动。日本男性大多温柔而有决断力,所以我更喜欢日本男性。”

日本人男性と付き合い、日本で就職する予定の陽さんだが、「国籍だけは絶対に中国人のままでいる」と話す。

虽然与日本人交往并打算留在日本工作,但阳桑却说“我绝对会保持中国国籍”。

「今は結婚する予定はないけど、もし日本人男性と籍を入れるとしても、国籍は変えるつもりはありません。そしたら、万が一日本の経済が危なくなっても、彼を連れて中国で養うことができるでしょ」

“现在没有结婚的打算,即使与日本男性结婚,我也不准备改变国籍。万一日本发生经济危机,就可以带着他回中国了”

孫さんにしても、既に日本に暮らして7年以上が経つが、日本に骨を埋めるつもりはないという。

即使是已经在日本生活了7年以上的孙桑,也没有打算一辈子待在日本。

凄まじい勢いで発展を遂げた中国だが、その一方で、コネや親の財力などの“フリーパス”を持たない多くの中間所得層出身の学生は、過酷な競争社会の中に身を置かざるを得ない。そうした中で、日本への就職や留学は、エリートコースからはやや外れた中国人がステップアップするための、ひとつの手段となっているようだ。

中国的经济发展速度惊人,但另一方面,很多没有关系和财力的小康家庭出身的学生,不得不在残酷的竞争社会中生存。在这样的状况下,到日本工作、留学,似乎就成为了和精英路径有所偏离的中国人提高自己的一种手段。

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