著名人のツイッターが炎上したり、失言がバッシングされたりする出来事が毎日のように起こる昨今。なぜ、人は自分とは無関係の人間の失敗を目ざとく見つけ、たたこうとするのか?脳科学者・中野信子氏が、バッシングに「快楽」を覚える人間の脳の仕組みを、徹底的に解剖する。

如今,名人推特不断被抨击,或因失言遭多方谴责的事件接连不绝。为什么人们总会迅速发现与自己无关的人的过错并想要落井下石呢?脑科学家中野信子彻底剖析了从攻击他人这一行为中获得“快感”的人脑机制。

他人を引きずり下ろしたときに生まれる快感

将他人拖下水时产生的快感

「他人の不幸で今日も飯がうまい」の略で「メシウマ」というネットスラングがあります。

有个网络用语“饭真香”,即“看到他人倒霉后觉得今天的饭真香”的缩略。

成功者のちょっとした失敗をネット上で糾弾して喜びに浸る、この感情のことを、脳科学・心理学の世界では「シャーデンフロイデ」と呼ばれています。この単語はドイツ語で、Schadenfreudeと綴ります。Freudeは喜び、Schadenは損害、毒、という意味です。

通过在网上弹劾成功人士的小失败而感到喜悦,这种感情在脑科学界及心理学界被称作“幸灾乐祸”。这个词在德语中拼写为“Schadenfreude”,Freude指喜悦,Schaden指损害、毒。

これらは、ある種の週刊誌の売り上げを下支えする感情、といってもいいかもしれません。

也许这种感情就是某类杂志销售量的支柱吧。

「最近目立っているあの人」に対し、「あの点をこうすればいいのに」「どこがいいの」「上から目線で気に入らないんだよね」などという形で"検出"が行われ、「ちょっと痛い目に遭えばいいのに」「コメント欄で炎上させてやれ」「ツイッターで攻撃してやれ」「どうもへこんでいるらしい」「いい気味だ」というように、"排除"が実行されていきます。

针对“最近挺惹眼的那个人”,以“这一点这么做就好了”、“这人好在哪儿啊”、“那种高高在上的眼神让人很不爽是吧”这样的方式将他们“鉴别”出来,“要是让这家伙吃点苦头就好了”、“评论栏上黑这货一把”、“推上给这人点颜色看看”、“好像认栽了哦”、“感觉真好”,进行“排除”。

いわゆるバッシングですが、この犠牲になった人の例はいくらでも挙げられるでしょう。

这就是所谓的落井下石,其受害者我们可以举出不少。

実はこのバッシングにつながる一連の行動原理は「オキシトシン」という脳内物質と、深い関わりを持っています。

其实,与落井下石相关的一系列行动,其原理都和“催产素”这种脑内物质有很大的关系。

オキシトシンは、愛情ホルモン、幸せホルモンなどと俗に呼ばれて、基本的には人間に良い影響を与える物質と考えられています。

催产素,俗称爱情荷尔蒙,幸福激素,基本上来说是对人类有正面影响的物质。

オキシトシンは、1906年に、ヘンリー・デールという人が発見しました。ちょっと変わった名前ですが、その由来は「迅速な出産」という意味のギリシア語からきています。脳下垂体をすりつぶした汁が、陣痛を引き起こすことを発見したデールは、この汁の中に、出産を速める物質が含まれているに違いないと考えて、その名前をオキシトシンと名付けたのです。

1906年,Henry Dale发现了催产素。这个名称有点奇怪,源自含有“快速生产”这一含义的希腊语。Dale发现脑下垂体的研磨液能够引起阵痛,认为其中一定含有能加速生产的物质,于是将其命名为催产素。

オキシトシンは、出産や授乳に関わるホルモンではありますが、メスまたは女性の体内でだけ分泌されるわけではありません。オスまたは男性の脳内にもオキシトシンは存在し、神経伝達物質として、さまざまな働きをします。

虽说催产素是与生产及哺乳相关的激素,但却并非仅存在于雌性或女性的体内。雄性,以及男性脑中也有催产素,作为一种神经递质起多种作用。

たしかに、オキシトシンは、女性ホルモンであるエストロゲンによって増幅され、一般的に女性的なものとされる包容力であるとか、協調性、人と仲良くなることを好む傾向、養育者としての適性といった性質が、強く現れるようになります。

确实,催产素的作用会因雌激素而增幅,通常情况下,在我们所认为的女性特征,即包容力、协调性、希望与人和睦相处的倾向、以及作为养育者的适应能力等方面表现强烈。

しかし、男性にもこうした性質を強く持つ人は増えてきています。そう感じる人はたくさんいるでしょう。何なら、こうした傾向を持つ男性を"オキシトシン男子"と名付けてもよいくらいかもしれません。

然而,这种性质相当高的男性也在增加。想必不少人都有这种感受。必要的话,将拥有类似倾向的男性称作“催产素男子”也不是不可以。

戦う力や性欲、恋愛に対する強い情熱、そして稼ぐ力はそう高くはないけれど、人の話をよく聞き、なごやかで、やさしい。あまり他の女性に目移りすることもなく、貞操をまもる。一緒にいるとほのぼのとして、落ち着く。

虽说战斗力、性欲、对恋爱的强烈热情,以及赚钱能力并不是非常高,但善于倾听、平和、温柔。很少会对其他女性移情别恋,忠贞。和这样的男性在一起有种温暖、安心的感觉。

オキシトシンの分泌量の多さは、肌のきめ、髪のツヤ、見た目のかわいらしさにも反映されます。むしろ、近年のトレンドとしては、こういう男性のほうが女性から人気があり、モテる、という現象が顕著になってきているのではないでしょうか。

催产素分泌量大会也会表现在皮肤纹理、发质光泽度,以及外表的可爱感上。倒不如说近几年,这类男性在女性中更有人气,更受欢迎的倾向也变得明显了。

シャーデンフロイデは「妬み」感情と不可分なもの

幸灾乐祸与“嫉妒”这一感情密不可分

さて、それではなぜ「愛と絆のホルモン」「幸せホルモン」という好ましい俗称で呼ばれるこの脳内物質が、シャーデンフロイデなどといういやらしい、持っているだけで恥ずかしくなるような感情を、同時に強めてしまうのか 。

那么,为什么这种拥有“爱与牵绊的荷尔蒙”、“幸福激素”这样讨人喜爱的通称的脑内物质,同时也会加强“幸灾乐祸”这种令人不快,即便心中一闪也会让人心生羞耻的感情呢?

実は「人と人とのつながりを強めるのが、オキシトシンの本質的な働きである」と考えると説明がつくのです。

实际上,“催产素本质是加强人与人之间的关系”——若这么想的话就能解释了。

専門的な表現を使うと「愛着を形成する」という言い方をしますが、誰かとの間に情緒的な特別な絆ができるとき、脳ではオキシトシンがその回路を形作るのに一役買っています。

用专业语言描述就是“形成依恋关系”。在我们与他人产生情感上的特别纽带时,催产素在脑中起到构建这一回路的作用。

裏を返せば、人と人とのつながりが切れてしまいそうになると、オキシトシンが「私から離れないで」「私たちの共同体を壊さないで」「私たちの絆を断ち切ろうとすることは、許さない」という感情を促進させ、関係性が切れるのを阻止しようとするのです。

反过来说,当人与人之间的联系即将切断时,催产素就会促进“别离开我”、“别破坏我们的共同体关系”、“决不允许外物妄图切断我们之间的联系”这类感情,阻止关系破裂。

当然、男女の恋愛にも大きく影響します。友人や会社の仲間、地域共同体など、グループの関係も同様です。

当然,催产素也会强烈影响男女恋爱关系。朋友或同事、地域共同体等团体关系也是如此。

シャーデンフロイデが、「妬み」感情と不可分であることを前提とすれば、オキシトシンは、「妬み」から「シャーデンフロイデ」に至る一連の感情の流れを強めてしまう物質であると考えることができるでしょう。

若是将“幸灾乐祸”与“嫉妒”密不可分视为前提,我们就能想到,催产素是种加强从“嫉妒”到“幸灾乐祸”这一连串的感情走向的物质。

なぜ人間の長い歴史の中で、持っているだけで苦々しくなるようなこの「シャーデンフロイデ」という感情がなくならなかったのでしょうか。

在人类漫长的历史中,为什么“幸灾乐祸”这种即便在心中一闪而过也会让人不快的感情没有消失呢?

盲腸にさえ、存在する意味があるということが近年、明らかになってきたといいます。まして脳は、人体の中で最も燃費の悪い臓器であり、そこまで余裕のある器官ではありません。不要な機能は、どんどん切り捨てられていきます。

近几年,人们发现即便盲肠也有其存在意义。大脑更不用提,这是人体中最耗能量的器官,和那些无需过多能量的器官不一样。没必要的功能一个个都舍弃了。

生物種としてのヒトに仕組まれた特性

人这一物种的特性

「シャーデンフロイデ」や「妬み」といったネガティブ感情は、一見ないほうが良いように思えても、何らかの重要な機能を担っているはずなのです。

即便是“幸灾乐祸”、“嫉妒”等这些乍看还是没有比较好的负面情感,也一定担负着某种重要作用。

「シャーデンフロイデ」や「妬み」は、個人の間でも生じますが、集団内で生起したときに、集団にとって都合の悪い個体を標的として「発見」し、「排除」するために使われます。

“幸灾乐祸”、“嫉妒”会产生在个体之间,但当出现在种群内部时,对于种群来说就起到发现不良个体,并将其排除的作用。

ヒトは、集団を構成することで生存確率を高め、生き延びてきた種であると考えられています。すると、最も生存確率を下げるネガティブ要因が、集団の崩壊になります。

人是一种通过集体生活提高生存率,从而延续至今的物种。于是,最能导致生存率下降的消极因素就是集体解体。

集団というのは構成員が少しずつ犠牲を供出することによって成立しています。たとえば、時間、労力、金銭的な負担、心理的負荷などのリソースがそれにあたります。これらを集め運用して、そのメリットをみんなで享受するのが集団の構成要件です。

所谓集体,就建立在构成成员的不断的小小牺牲上。比如说,时间、劳动力、金钱负担、心理负荷等。将这些资源集中运用,大家共同享受福利就是集体的构成要因。

たとえば、そこに一人だけ、リソースを供出しない人が存在したと考えてください。供出しないにもかかわらず、メリットを享受している。

我们来想象一下,如果其中只有一个人不贡献资源会怎样。尽管这个个体不贡献资源,但是却享受着福利。

つまり、その人一人だけが得をしているという状態です。リソースを供出せずともメリットを受けられるなら自分たちも供出をやめようと他の構成員が考え始め、リソースを供出し続ける真面目な構成員の負担が大きくなります。すると、あっけなく集団は崩壊します。

也就是说,只有那一个人处于得利的状态。于是其他的构成成员开始考虑,若是有人可以不贡献资源而享受福利的话,那么自己也不再贡献资源了,如此下来,继续贡献资源的实诚构成成员的负担就加重了。这样发展下去,集体很快就会解体。

このような事態を避けるため、リソースを供出しない一人を排除するか、その行動を改めさせる必要が生じます。これが社会的排除の原理です。

为避免这种事态发生,就产生了排除不贡献资源的人,或改变其行为的必要。这就是社会性排除的原理。

最近目立っているあの人、として人々の目に映るのは、既存の社会を壊そう、変えようとする人のことです。こうした人の台頭を許さないというのは、生物種としてのヒトに仕組まれた特性なのです。

在众人眼中看来,近来惹眼的那个家伙,就是打算破坏或改变既存社会的人。不允许这类人扩大势力,就是人这一物种的特性。

本内容为沪江日语原创翻译,严禁转载。

精华阅读推荐:

日本人觉得有古韵且好听的女生名字是?

东京大雪:日本人堆雪人的脑洞一个大过一个